ネタバレ感想 柴田ヨクサル 『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』2巻

東島丹三郎は仮面ライダーになりたい (2) (ヒーローズコミックス)
東島丹三郎は仮面ライダーになりたい 2(ヒーローズコミックス)

hanhans.hatenablog.com

 大体の内容「V3とライダーマンが! どっちもなりきりだけど!」。ということで、俺の魂がV3な人とカフェのマスター、ミツバさんがその正体、いやまあなりきりなんですが、を現わしたら、色々あって怪人も姿を現すことに。その激闘の記録が、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』2巻なのです。
 今回はライダーになりたい人達が、本当に現れたショッカーと一悶着というのが基本的な展開として扱われ始めている端緒な感じを受けました。きっちり戦闘員を倒していたら怪人が、というお定まりのパターンになっているというか。その辺は人間型特撮では基本だから、踏襲している、という事なのだろうと思うのですが、この漫画の場合、基本的に鍛えただけで改造人間とかではない只の人が、そのパターンに乗っているのが面白く、またちょっと怖いところです。戦闘員程度なら倒せるけど、怪人にそれがそこまで通用してないのと、怪人側は殺す気になったらサクッと殺せる、というのを雰囲気で出しているのとで、この巻後半の怪人戦はちょっとした緊張感を、読者側が感じてしまいました。ライダーなりきりやってる連中はそこまで考えてないというか、わりと薄氷なのにガンガン踏み込んでいるというか、とにかく馬鹿なので余計に怖い思いをすることに。この辺の温度差というのがこの漫画の持ち味である、ともいえるかと思います。
 さておき。
 今回はV3の人が出てきたのですが、こいつが東島さんと同じくらいトンチキなやつ、つまりくるくるぱーですが、そのガチ具合もまた東島さんと同じくらい、つまりくるくるぱーです。一番トンチキなのは、東島さんですらお面を被って仮面ライダーだ、と言うのに、全く素の状態のままで俺はV3だ。と言い切るところでしょう。変身ポーズは取ったからもうこっから先はV3だぞ。という精神性なのです。そして最強のライダーはV3だ、という信念が固すぎて、子供の遊びでV3代わって! といっても全く代わらず、中二になって代わって欲しい弟とガチ対局することになるという段でもうこいつバカすぎだろ、という感想がもろっと出ます。そこまで固執した弟さんもですが。でも、そこで兄に利き手と逆のを腕を折られ、これでお前はライダーマンだ。という謎の薫陶をうけ、ライダーマンになる弟のミツバさんもかなりのくるくるぱーです。しかも現在に至ってはライダーマンが一番熱い、という発言もしだして、やっぱりこいつもくるくるぱーなんだな。と感じさせます。ある意味では、怪人の方がましである、という突き詰めるとヤバい線すら浮かんできます。*1
 そんなV3の人と一戦してしまう東島さんですが、ぱっと見おっさんと兄ちゃんが喧嘩しているだけなのに、周りのライダーバカには一号対V3に見えて、と表現され始めてもう駄目。確かに魂は一号だしV3だしなんですが、でも結局一般人ですよね? というのを覆い隠してしまう表現であります。絶対に居ない、とは言えないにしても大っぴらにここまでの奴はいないからいいようなものの、もし居たらかなり問題が発生するぞ! とも。ある意味フィクションだからこそ許される架空人物っぷりと精神性っぷりに脱帽すらします。居なくてよかった、こんな人! 安心してみられるフィクション最高!
 さておき。
 ショッカーが実在する、それもかなりの数が、というのが今回しっかりと明るみにでましたが、本当にそこらの普通の人にショッカー戦闘員が擬装している、それもかなりの数が、というので、原作ショッカーもこれくらいひっそりとやっていればライダーに勝てたのでは? という気がしないでもないです。いっつも派手なことするからなあ……。
 しかし、ここまで密やかに、しかし確実に勢力を伸ばして、この漫画のショッカーは何がしたいのか? という部分っは全く未知数です。怪人の言動からすると、まだ密やかに進めないといけない、という制約があるみたいですが、そこまで隠匿して進める計画とは? あるいは、こっちのショッカーの方もショッカーがいないから作った、とか言い出してしまうのでは? と若干の怖気がふるっちゃいます。仮面ライダーになりたくて、怪人を後退させる普通の腕力を得た東島さんと、対極の存在がいるのでは? ショッカーになりたくて、怪人を作る科学力を手に入れたのがいるのでは? いや無いか。
 とかなんとかいきなり正気に戻って、この感想を終えたいと思います。

*1:実際怪人も、俺の方が良識があるぞ。という言い出したりしますし。

 ネタバレ感想 OYSTER 『超可動ガールズ』2巻

超可動ガールズ(2) (アクションコミックス)
超可動ガールズ : 2 (アクションコミックス)

 大体の内容「百合! そういうのもあるのか」。と井の頭五郎顔になる場面もありつつも、ベルノアさんの話中心なのが、『超可働ガールズ』2巻なのです。
 今回は前哨戦として百合! についてつらつらしますが、しかし格ゲー娘フィギュアほたるさんに対する同じゲーム出身フィギュアのリンドウさんのそれは、全くない貞操にすら接近せんばかりの勢いです。若干ツンデレだったリンドウさんですが、事ここに至ってヤンデレのそれすら発動し始めました。特別な友達でも満足できねえぜ! ライバル? それすら満足できねえぜ! となったリンドウさんのヤバさ加減は中々のものです。お前らそもそもついてないだろ! フィギュアなんだから! と、無抵抗にして紙面的に言えないことをする、と言い出す辺りでは思ったりもするんですが、それすら関係無さそうな勢いなので、なぜ彼女はここまで拗らせて? 前から拗らせてた感じはあったけど! 案件であります。今回は変身アイテムまで使って、でしたが、それでも結局同じ舞台に立たれて性能差を見せつけられているリンドウさんは不憫でした。その後、風呂でほたるさんの体触ってたぺれえので、一瞬感じた不憫を返せよ! 案件であります。
 さておき。
 今回の巻は先述の通り、半分ほどがベルノアさん話です。この展開は中々入れ子な構造で、ベルノアさんが夢を見て、という中に房伊田さんがいて、しかし夢の外にも房伊田さんがいて、その房伊田さんがベルノアさんの夢の中に、つまりベルノアさんの夢の中の房伊田さんと、ベルノアさんの夢の中に房伊田さんが、という房伊田さんが俺とお前でダブル房伊田だ、という状況になっているのです。この元凶については後述するとして、とりあえずベルノアさんが夢でどうなったかの話について記述したいと思います。
 その場面だけなら結構簡単です。過去のベルノアさんの禍根が、すっかり解けるのです。が、この禍根というのがベルノアさんが主人公のRPGゲーの導入として、幼い頃に居た修道院が魔物に襲われて、というのがあり、それを未だに悔いている、というものなのです。これの何が問題かというと、ベルノアさんのゲームの中でその話についてのフォローが為されていないのです。設定がゲーム内に無いのです。つまり、どうあってもどうにもできない話、としてあるのです。その禍根を狙って、話の辻褄合わせ及びハッピーエンドをしようとした、というのがこのベルノアさんの話の大枠なのです。何故そのような話に? というのもまた後述ですが、とりあえずゲーム内に設定が無いことをどうハッピーエンドにするのか。
 それについては、結構さくっと解決します。ゲーム内に設定が無くても、制作者が設定を持っているなら? ということで、マニアック知識として、ベルノアさんの修道院のお姉さま方が超強かったので生き残っていたのだ! という後だしじゃんけんされます。その手!? ですが、もとよりベルノアさんのゲームの導入については読者側には知識が無かった訳で、ぽっと出の設定をぽっと出の設定で処理する、というのはむしろ誠実なのでは? という気持ちになりましたよ。どっちもありそう、という雰囲気がしっかり出ていて、強引な入れ込みなのに納得出来るので、そういうのもあるのか。案件です。いや、やっぱり無理がある! でも、いいや! 泥縄だけどきっちり解決したし!
 さておき。
 先から後述すると書いた話、元凶についてですが、房伊田さん達のとこに居る生きているフィギュア以外に、生きているフィギュアがいるのは提示されていましたが、今回、それがベルノアさんの夢の話に関係しているのです。というか夢の中で、フィギュアといい感じになるように、としたのです。それで満足するしか、ないじゃないか。と妥協満足させようした、というのが夢の話の顛末なのです。夢を操作するというのはちょっと超常過ぎて、どっかのクサビさん以上ですし、それについてフォローもありますが、とにかくこれをしたのは房伊田さんとことは別口のフィギュアの手口なのです。
 で、その別口さんが今回正体を明らかにします。星空憧(ほしぞらこがれ)さんというその娘さんが、その別口。でも、なんで房伊田さんとこにちょっかいを? というのは、彼女が房伊田さんに好意を、ぶっちゃけラブっているというのでなんとなく、やはりそういうことか。となります。夢の操作をしたユメカさんやちょっと出てきて何したかったんだなジャンヌ=ダルクさんも、彼女のフィギュア。なので、ユメカさんがベルノアさんを夢の中で充足させようとしていた、というのも憧さんの為と理解出来ます。ユメカさんのキャラクター的にそれは半分って感じではありましたが。
 しかし、憧さん、一体どういう経緯で生きているフィギュアを? というのがこれからしばらく話をけん引しそうです。前シリーズの時にわりとあっさり謎が解明したので、ここも案外あっさり分かる可能性もありますが、まあしばらくはわちゃわちゃする話をしてほしいところです。

 今回のまんがタイムきららキャラット三作取り上げ(2019年6月号)

承前

 まんがタイムきららキャラットから三作を取り上げて、それぞれについて感想を書くという試みです。三作だとバランスがいいのです。たぶんきっと。きっとたぶん。
 選ぶのは好きな作品。とはいえ、号によって振れ幅がありますので、最大のゲインがあるやつ優先です。その方が楽だしね! 楽はしたい。
 それではいってみましょう。

カヅホ『キルミーベイベー

 体育祭があるから、鍛えよう! という話。それが真っ当に行く漫画ではないのは皆さんもご承知の通りですが、しかし体育祭のは徒競走だってのに障害物競走だ、と頑ななやすなさんと、それならとあぎりさんに提供された障害物競争があぎりさんの案件なので当然ヤバく、それでもこれで慣れれば普通の障害物競走など、という理由で続けるやすなさんのヤバさが際立っていました。まあ、オチはそりゃそうよね。というものでしたが。むしろ死なないのが不思議なレベルだったんだけど……。やっぱりやすなさん頑健……。

黒田bbAチャンネル

 濃密なナギ回。全体にナギ力が満ち満ちており、俺のようなナギストにはご褒美のような回でした。受験勉強しないと、なのに家では怠惰してしまうナギ、素敵やん……。相変わらず兄好きで父嫌気というのも、こうやって表現されると大変良いものです。お父さんのナギ好きっぷりも全開でしたし。年頃の娘さんがいると、娘スキーには大変なものなのだなあ。後、どうでもいいことですがスヤァする時にさり気なくながらちゃんと眼鏡を脇に置いているナギが良かったです。自然に、じゃなく寝る気満々じゃねえか!

みらくるる『メイドさんの下着は特別です。』

 メグさんに見合い話が! ということでこの手のお約束でそれを妨害する回でした。いいやん見合いくらい! と思うのですが、こういうのはお約束なのでしょうがない。しかし、その妨害の為に蘭さんが男装、というのはまだいいんですが、結局ご主人様がランジェリーの伝道師として登場したり、蘭さんにいつの間にかランジェリーが装備されていて男装ランジェリーという謎の地点に到達したりしていました。男装、特殊メイクもして完璧だったのに、結局ランジェリーなのかよ! という。まあ、男がランジェリー装備してたらそりゃ特殊過ぎて逃げるわな、とも思いますけれども。

 感想 あfろ 『ゆるキャン△』8巻

ゆるキャン△ (8) (まんがタイムKR フォワードコミックス)
ゆるキャン△ 8巻【Amazon.co.jp限定描き下ろし特典付】 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「伊豆キャン、開始!」。からのキャンプ地到着までで一つの巻終了という、実に勿体ぶった、しかしそれゆえに旅! という趣きにも満ち満ちた、長期連載ならできる、長期連載だからこそできる! そういう仕手となったのが、『ゆるキャン△』8巻なのです。
 先に申し上げた通り、今回はキャンプ前に巻の紙幅が尽きるという、キャン要素! な巻ではあります。しかし、キャンプしてなければキャン要素ではないと、いつから錯覚していた? という顔になってみたいと思います。この漫画はガチキャンではなく、ゆるキャンなんですよ! ゆるくキャンプする漫画! それゆえに、キャンプ前から楽しんで何が悪い! という提示は出来るかと思います。そして、ゆるくするとキャンプ前に紙幅が尽きるくらい、春先の伊豆イズグレイトなのだということでもあるのだと、提示したいと思いますハイパーン!(机打)
 といっても伊豆にはいずこへも行ったことがないので、伊豆ってグレイトなんだー。という感想しか出ないのですが、しかしこれだけグレイトとするには当然グレイトな訳であり、つまりグレイトなのをグレイトだというのに、今回の紙幅が必要だったのだ、と思うと、あfろ先生の伊豆へのリスペクト具合が理解されるのは私だけではないはずです。それが更に伊豆の素晴らしさを感じさせ、『ゆるキャン△』のファン周りに伊豆ブレイクを発動するかもしれない。まあ、とにかく伊豆って凄いってことです。
 さておき。
 今回紙幅が素早く尽きたのにはそれ以外にも訳があります。それはパーフェクトな旅ではない、というところです。道行が込んでいる、と思ったら河津桜か! とか、あそこでキャンプを出来ません、とかミスを連発するのです。その為に予定通りの道行とはならず、リカバリーをかけて時間を取ってしまうのです。確かにだが、しかし! まるで全然! 完璧な旅行には程遠いんだよねえ! ですが、それが悪いとは全く思えない点が、そのずれを楽しませてくれることによって、立ち上がってきます。むしろカンペキな旅など、何が楽しいのか! そういう面構えすら、今回の巻はしています。イグザクトリィ! 問題があった方が、大変だけど印象には残る。そういう旅として、今回の伊豆キャンはあるのです。
 とはいえ、概ね今回の伊豆キャンは楽しい感じで突き進みます。そこには、更にサプライズも仕込まれています。時期は三月。つまり、なでしこさんの誕生日のある月! ということで、誕生日祝いをしよう、というのが、今回のサブプランです。勘が鈍いような鋭いようななでしこさん相手に、しかしこのトンチキメンバーで乗り切れるのか? という疑問もありますが、一応バレのないように進んでいます。これで全然サプライズにならなかったらそれはそれで卿らはどうか。案件なので、上手くいっていただきたいです。今まで『ゆるキャン△』読んでて一番のハラハラ要素!
 さておき。
 今回はトンチキ場面が少ない代わりに、なんだか温まる感じの場面が多かったです。りんさんが原付で行く、というのを了承された場面、そこでいくそー! ってなっているりんさんを見るなでしこさんの笑顔とか、りんさんとお爺さんがバイクでちょっとだけツーリングしている場面とか。特にお爺さんはりんさんの原付に必要な装備の為にひとっ走りと、りんさんの為にほんのりカッコつけたりしていて、そこがまたいいんだ……。ってなるのです。こういう心の交流、というのは本当にこの漫画のいいところです。ほんのり、でもしっかり。ああ、いぃー……。
 そんな感じで伊豆キャンまでが長い! ですが、必要であり求める物でもあるのが『ゆるキャン△』8巻の立ち位置でありましょう。

 ネタバレ感想 険持ちよ 『RPG不動産』1巻

RPG不動産 (1) (まんがタイムKRコミックス)
RPG不動産 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「ファンタジーで不動産!」。学校を出てジョブが魔法使いになってはみたものの、冒険者って柄じゃないし、ということで街の不動産屋に就職した琴音さん。そこで待ち受ける、お仕事の数々! ということで、異世界ファンタジー不動産業話。それが『RPG不動産』なのです。
 この漫画の良さというのはきらら系漫画故に、当然女の子の可愛さです。が、それ以外もきっちりあるのがこの漫画の特異と言える点でしょう。いや、他のきらら系漫画でも、他の漫画とは違う光は当然あるんですが、この漫画は特に他の漫画よりも明確にロジックとしてそれがあるのですよ。それ、つまり<謎>が!
 謎! この視点は故人となられた小池一夫先生の必殺ファンクション。それは様々なレイヤーがありますが、しかしそれを追うことがキャラクターを立てる。という趣旨の内容を、小池先生は著作に残しています。その門弟である方たちは、使い方の違いはあるものの、大体の場合、謎を提示し、それに対してキャラクターが動く。そういう所作をしています。一番わかりやすいのは門弟であった暴獣板垣恵介先生の最凶死刑囚編でしょう。死刑囚が脱走してまで何を求める? という謎、こいつらが刃牙たちと戦ったらどうなるの? という謎。それだけを持って引っ張っていく暴獣板垣恵介ムーブが炸裂した怪作です。しかし、その謎が解かれた時、個人的には花山VSスペック戦がそれですが、出すゲインは最大を越え最強に。そう言う意味で小池メソッドの正しさを証明しているという、一つの例として挙げられるでしょう。
 ちょいと前置きが長くなりましたが、この『RPG不動産』も小池メソッド、詰まる所、謎! の継承者です。さっくっというとそれは険持ちよ先生も、小池一夫門弟だからなのです。その視点を持ってみると、『RPG不動産』の謎のレイヤーは大変細かくサシが入っていて、いい霜降りとなっておるのです。
 まず話の根幹はお客とお家を取り持つ不動産業。これからして、謎解きとして立ち上がっています。どういう家をお客に引き合わせるか。そのお客が持つ特性を、それに合致する家に繋ぎ合わせるという、謎解きなのです。これが綺麗に決まっているのが、ペガサスの飼い主のお客さんの第6回でしょう。小さい頃に露店で買った卵から生まれたペガサス、というもうこの時点でキャラが立ちすぎのペガサスと一緒に住める家を! というので色々探すのですが、ペガサスが広々した場所じゃないと上手く寝られないから、その主人が狭い厩所で寝るとか言い出して、そうなると街中では広い家となると高額なものしかない。となってどうも出来ないのか? となったところで、ペガサスなら飛べる、という地点に思い至り、なら飛べないと使いにくい場所にある家という点が立ち上がり、ご成約と相成ります。成程、謎解きと理解していただけたでしょうか。
 次に、キャラ関係の謎。先輩で戦士職持ちのラキラさんと、同じく先輩で僧侶職持ちのルフリアが大変百合百合しておられる。というのでこの二人の間に何があるのか? と謎が提示されるわけです。その解は第10話で解かれますが、これがまあいい話なんですよ。二人の絆というのがいかなるものか、というのが各々が成った職業に反映されているのが芸コマ案件です。お互いが目指す場所が一緒な二人って、素敵やん? 住む部屋も一緒ですけどね既に!
 さておき。
 最後に上げる謎は、一番大きく、しかし一番密やかに進むものです。それが、亜人の子であるファーちゃんさんの謎です。この漫画の舞台では、魔王が15年前に滅ぼされた、とされています。そして、現在では巨大なドラゴンが大ごとを起こしている、という情報が投げ込まれますが、そこでファーちゃんさんのしっぽがドラゴンのそれでは? という提起がされます。それから先にも、ファーちゃんさんが亜人の言葉を理解出来る、という部分が魔王が持っていたそれだと提示されたり、魔力が異常ともいえる量を持っていると見せられたり、ファーちゃんさんが寝相が悪い、というのが実は寝ている時に何かしているのでは? という示しもされます。こういう細かいネタの積み重ねからこの巻最後は、幼い感じで快活なファーちゃんさんではしないような艶のある笑みで締めくくられます。謎!
 さておき。
 こうやって謎を解いたり積み重なったりによって、キャラクターがぎゅんぎゅん立つのもまた、小池メソッド。先にも書いた部分と重複しますが、ラキラさんとルフリアさんのお互いの存在が当然あるものって感じの気安さが、その二人のお互いを想うところによって醸成されているのとか、ファーちゃんさんが基本的に無邪気であるのに、その後ろに何かある、でも可愛いだけの子に見える、というので謎によって印象ががらっと変わってくる感じとか、それでキャラクターががっつがっつん立っている訳ですよ。そう言う部分があまりない琴音さんがわりくっている感じですが、それでも色々と立ち回る彼女も魅力的です。謎も魅力的ですが、謎を解く人もまた魅力的なのは、探偵キャラが人気なのと軌を一にするところかと思います。
 四人娘もいいのですが、個人的な好みのキャラとなると、この巻7話目のお城の官吏セーラさんです。どういうお人かというとうっかり八兵衛です。7話目ではワープ装置の設置の為の魔力を貯めるという事業をするんですが、セーラさん、目標の魔力が当初の予定の二桁上という大うっかりを発動します。それどう考えても人集める前に気づきますよねえ!? 案件で、この人が曲がりなりにも責任者になれたという事実を含めてこの国大丈夫か案件です。でも、あまりに凄いうっかりなのでキャラクター性が一気に立ち上がってもいて、印象にこびりつくものが。これもナンデ!? が、うっかりで! という謎とき、そう考えることもまた可能かと思います。言い過ぎですけども!
 ということで謎という視点で見てきたわけですが、そんな部分を気にしなくても、大変カワイイヤッター! な女の子が頑張るお仕事話としてもきっちり立ち上がっているので、大変お薦めしやすい漫画でもあります。というか、皆買え!
 とかなんとか妄言を吐いてこの文を終えたいと思います。

 ネタバレ感想 山口貴由 『衛府の七忍』7巻

衛府の七忍(7) (チャンピオンREDコミックス)
衛府の七忍 7 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「壬生狼、大江戸を舞う!」。既に積み上げている沖田総司株を上げるのを忘れることなく、しかしちゃんと対戦相手の七忍の人物像もきっちり立ち上げて、これどっちが勝つのー!? をぶっこんでくる山口貴由先生の技が冴えわたり過ぎて、ずんばらりん、と切り捨てられるのが、『衛府の七忍』七巻なのです。
 この巻の内容は畢竟、沖田総司対霓鬼に集約されます。一応、柳生宗矩も俎上には上がりますし、宗矩も鬼と一戦交えますし、沖田総司の突きをいなしたというので十分な強さ認定も済んでいて、でもこれ勝てるのー!? というのもぶっこんできますが、でもやっぱり沖田総司対霓鬼が肝です。ここに、この漫画の集約点が引き絞られています。
 その為に山口貴由先生は、沖田総司のこの地に居る意味、この時代にいる意味をねつ造していきます。そもそも時間超越した理由がからして全くの理由無しですから、そこでこの江戸この時代に居る理由も作り上げなければなりません。そこで沖田総司が辿り着いたこの時代での存在証明は、これから三百年の平和を謳歌するこの時代の素晴らしさ、という地点です。自分のいた時代での過去を変えてはならない、という心情と、好いた女性を殺されたという二つの理由で、沖田総司は鬼に挑みます。
 でも、そこに対する反撃力である霓鬼の話が、沖田総司の話にちまちまとその素地を見せつつ、しかしほぼ一話で積み上がってきます。試し斬りの家系に生まれ、その道を進んでいた谷衛成が、遺物の銅剣で試し斬りをした時に今まで殺されてきた者たちの恨みが集まり、鬼として顕現します。これによって、どちらが勝つか全く見えない死合、というのが立ち上がってくるのです。
 前回の魔剣豪奇譚、つまり宮本武蔵編では宮本武蔵の人物像が立ち上がりに立ち上がり過ぎて、どういう戦いになるのか全く読めない、からの展開によってこの漫画の格を一段上げることになった訳ですが、それでもあの時はここで宮本武蔵は死なない、という歴史由来の安心がありました。この漫画がそう言う部分での歴史は覆さない、という所作に出ることも分かった記念すべき点なのですが、それを基本に考えると沖田総司は未来から来てねーから! なので大変困ることにもなるのです。つまり、人知れず過去で死んでも誰も分からない、ということです。これと、沖田総司の憧れた江戸時代、その裏の声によって立つ霓鬼、あるいは衛府の七忍の存在というのが、沖田総司には耐えられないのでは? という疑問点*1と合わせて、強い弱い抜きにした部分での沖田総司が勝てるの!? 感が醸成されているのです。
 それに対して谷衛成話は、沖田総司のそれに対してほぼ一話での立ち上げと展開です。ですが、その内容は濃いとしか言えないものです。試し斬りの家系に生まれと語られ、その剛腕と凄腕ぶりを見せつけつつ、その仕事に倦んでいるように、あくまでようにですが、見せ、そしてかなり無体な試し斬り要請と謎の古代銅剣で何故か霓鬼に、というのをがっつりと一話。この一話対壬生狼の八話の戦い、ともいえる状況です。というか、こんなに濃いのに一話! と驚愕しきりでしたよ。時間が濃密というか。堪らん。
 さておき。
 そんな互いの積み重ねによって相対する壬生狼と霓鬼。瞬速の突き対豪断の剣。初手はお互いを計るかのように動きますが、さて両者の本領が発揮されたら、一体どういう剣劇が巻き起こるのか。ついでに宗矩大丈夫か。そんな注目をしていたらこの巻が終わるというそしてこの諦念……。続き、はよ……。とつぶやきつつ、この感想を終えることとします。

*1:壬生狼としての経験によって、そういう裏があっても、という描写はありますが。

 ネタバレ感想 殆ど死んでいる 『異世界おじさん』2巻

異世界おじさん 2 (MFC)
異世界おじさん 2 (MFC)

hanhans.hatenablog.com

 大体の内容。「何故だ!(剣崎声で)」。おじさんの家系は鈍感力の巣窟なのか・・・? という相変わらずヒロインに対する扱いが酷いのが『異世界おじさん』なのです。
 1巻感想でアスカ通ってないのかよ! とか書いてましたが、読み直したら通ってあれだった、という事実が今回も重くのしかかってきます。エルフのお姉さんに対する扱いもそうですが、凍神剣のメイベルさんに対してもかなりアレなムーブを、この巻で見せつけてくれます。というか、やったことがまたレアな指輪を送るというもので、何故その意味が分からない!? 何故だ!? と言いたくもなろうものです。ここまで鈍感力が高いとむしろそれは我々の持つものとは何か違う、ある種高等ムーブの一環なのでは? という疑念すら抱いてしまうのですが、でもここはオッカムの剃刀導入で単に気づいてないでいい気もします。分かってないって残酷。そう言うことでしょうか。
 え? メイベルさんはそのアイテムプレゼントの後どうなったかって? あまりに短時間で色々起こったのでかいつまんで言いますが、押し倒されたところをエルフのお姉さんに発見され、その後おじさんが凍結地獄でした。ほ、本当なんだ! 俺は嘘はついちゃいねえ!
 さておき。
 おじさんの鈍感力の暴力は今に始まったことではない、にしてももうちょっとこうなんというか、手心をというか、とにかく今更それが酷いというのは読者側のコンセンサスとしてはあるのですが、今回は藤宮さんに対するたかふみさんの鈍感力がクローズアップされてきます。藤宮さんがたかふみさんに気がある、というのはあの鈍感力のおじさんですら気づくレベルなのですが、何故かたかふみさんはそこを凄まじい豪胆さ、としか言えない、もので全潰しにかかります。色々あってシャワーを借りることになった藤宮さんにおじさんが狙って2時間ほど留守にすると宣言。そこにたかふみさんが帰ってきてもう後は分かるな?
 なのですが、ここでたかふみさんが旗という通信手段でおじさんを強制帰還させ、更に藤宮さんの風呂上りを見た事、その記憶を消してくれ、と言い出します。ユウジョウ! の為ですが、当の藤宮さんはそうじゃねえだろ! と食って掛かってもう大変。この後記憶はおそらく消されたのだろうなあ、という余韻でその話は締めとなります。が、そうじゃねえだろ! たかふみさん友情に厚いにも程があるだろ! 第一印象の為にそういう対象に見られてない、という江西陀・志熊現象ですよ! おじさんがちゃんと言わないとおそらく永遠にこのまま! 誰か彼女を助けてあげて! エロ漫画媚薬に手を出しそうな彼女を、藤宮さんを!
 さておき。
 1巻の時点でもだいぶコアなSEGA者だったおじさんですが、ドリームキャストという情報が無い為にメガドライブに回帰し始めました。というより、そもそもおじさんはメガドライバー。サターンがあってもメガドライブをするという硬派というか単にエイリアンソルジャークリアに青春を捧げ過ぎたというか、とにかく思い入れの強いハードがメガドライブの模様です。その青春のゲームたちを、高い金を払って手に入れているのは正直いいものだなあ、と。埋められない時間を埋め直す、というのはなんか癒しを感じます。まあ、エイリアンソルジャーが3万、ゴールデンアックスが3作合わせて1万、そしてサターンだけど心霊呪殺師太郎丸が8万と、分からない人からするとファッ!? な文字列が並んでそりゃたかふみさん怒るわ案件でしたが。いやいや、そもそも太郎丸8万ってそれマ!? テンゲン最後のゲームとして名高いですが、そこまでするの!? ぼったくりちゃう!? とも思ったりも。言いつつも、微妙にいい値付けというか、レア度合いを勘案すると今ならそれくらい、……でもやっぱちょっと高くね?
 というのはさておき、この巻における連載分の末尾のところのぶっこみ具合はヤバいですね。という話をします。
 そもそもの話、おじさんの異世界に行ったことはよくある形でしたが、さてどうやって帰ってきたのか、という部分が不明確なままです。しかし、そこに思考の一助になる情報が舞い込みました。それは、メイベルさんの血統が、日本から異世界に行った人の末裔という話です。つまり、結構あちらの世界に日本から人が行っている可能性があり、同時に帰ってきている可能性もあるのでは? とワタクシ勝手に思ってみたりします。更にあるいは、そう言う人は今までおらず、おじさんだけが、という可能性もあります。どっちにしろ、おじさんが帰ってこれた理由がその辺りに眠っているのでは? という風です。その辺が明かされるという気もしますが、でもこのままおじさんがのんびりYoutuberしているのもいいのかもなあ、という謎の立ち位置に移動して、この感想を終えたいと思います。