感想 福地翼 『ポンコツちゃん検証中』1巻

ポンコツちゃん検証中 (1) (少年サンデーコミックス)
ポンコツちゃん検証中 (1) (少年サンデーコミックス)

 大体の内容「地球のピンチ!? でも夢咲さんの可愛さの前では霞むね!」。地球にピンチが迫っている! 一年の間で能力を見極めるのだ、夢咲さん! というお話ながら、ポンコツ系美少女夢咲さんと目力あり過ぎ系男子水戸くんが大変可愛いので大変ニヨニヨできる漫画。それが『ポンコツちゃん検証中』なのです!
 この漫画は、能力モノでありつつも、夢咲さんは、可愛いですよ! という部分を猛烈くクローズアップして、しかし能力モノとしての素地も全然忽せにしていないどころかそれが夢咲さんの可愛い、水戸くんの可愛いをマシマシにしつつ、唸らされる展開へと持っていくという、漫画技術の粋を魅せられていると発言したいレベルのものとなっております。タツジン!
 とにかく、この漫画は能力モノと夢咲さん及び水戸くんの可愛いという二輪状態です。まず能力モノとしての側面について語りましょうか。
 というのも、この漫画は、夢咲さんの能力で1年後に降ってくる大隕石をどうにかしろ! という基本の筋を持っています。その上で、夢咲さんは毎日日替わりで様々な能力を授けられる、という、能力モノとしては変わり種の設定をかまし、それを日々検証する、ということで夢咲さんと水戸くんが触れ合っていく、という方向性を持っているのです。
 日替わり能力! これは中々多くない設定です。ネタとしては思いつくものの、能力を毎度考えないといけない、なので展開が安定しないと採用が見送られる形になりやすいものですが、この漫画では色々検証して隕石対策を考える、というお膳立てがあり、それ故にむしろこれ以外の設定ではこの漫画は成立しないだろう。そう思わせるくらいには、優れた設定となっております。
 ただ、これはある意味危険な設定でもあります。日替わりで、ということは毎回毎回違う能力を考えつかねばならない。そういう地獄の設定であるからです。しかし、それは杞憂でありましょう。何せ作者は福地翼。相手を眼鏡っ子好きにする能力という、極まりきった能力を考え付いた漫画家です。その事実だけで、この漫画に対する全幅の信頼が沸き上がってきます。それが、福地先生を追い詰めることになるかも、とは思いつつも、一つ安心できる材料であるのもまた確か。福地先生なら、福地先生ならきっとやってくれる……!
 後、アポカリプスが1年後というのも、この漫画を特徴づけています。日替わり能力、出来て360回程度、という一応の縛りではありますが、それでも360種類……。広大過ぎます。この能力の様態を、毎日きっちり確認していく、というのがこの漫画な訳ですが、毎日だろ……。一日一日やっていくのか……。
 というのもそうですが、これを毎日、夢咲さんと水戸くんがこなしていく、というのでもうバディというかボディじゃん? レベルで二人はどうなっていくのか、という興味をそそります。1巻段階でも相当お互い意識しまくっている二人が、この後どうなっていくのか……。妹に舐められだした後藤ひとりさん並に気になるところです(ぐるぐる目)。
 そう、もう一つの軸である、夢咲さんと水戸くんが可愛いも、この漫画の大事なところです。
 基本、夢咲さんが大変可愛いなあ! というのを、能力モノとしてやっていきつつ魅せてくる漫画ですが、それにしたって夢咲さん可愛すぎか! 水戸くんも可愛すぎか! 案件なのです。
 夢咲さんはポンコツに可愛いお顔に豊満ボディ、更に関西弁という要素の多重事故で、能力使ってあたふたするところが可愛い。食べたいまである。その為の漫画ですから、それは理の当然。
 しかし、水戸くんの可愛さはどうだ! 親譲りの目つきの悪さと強めの口調のせいで、誤解がある彼ですが、その実は実直でいいやつであり、その上で夢咲さんが、可愛い!? そして頼られている!? というのでアップアップする可愛さがあるのです。その照れたり血を吐いたりする様、可愛い……。
 まだ好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしら、という感じで、夢咲さんとの仲は使命感が強いのですが、その内夢咲さんにおぼれていってしまいそうな雰囲気もあります。地球を守る、というのより、夢咲さんのいる地球を守る、という方に使命感を感じている描写も出てきて、付き合い始めたら、ぐずぐずやな! と思わされます。そこがいいんだ……。
 ということで、能力モノとしての側面と、夢咲さんと水戸くん可愛いなあ! の側面で回していく漫画。それが『ポンコツちゃん検証中』なのです。

 ネタバレ感想 高橋慶太郎 『貧民、聖櫃、大富豪』5巻

貧民、聖櫃、大富豪 (5) (サンデーGXコミックス)
貧民、聖櫃、大富豪 (5) (サンデーGXコミックス)

 大体の内容「国家予算を削り取れ!」。などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。と言わんばかりの展開を見せつつ、しかし方向性としては悪くなかったんだよなあ、とも思わせる、そんな状況へと変遷したのが『貧民、聖櫃、大富豪』5巻なのです。
 今回、アンマリちゃんというタイガーの尾を踏んだのは、モレー陣営の京司さん。アンマリちゃんの国がデカい銀行なら、知らないうちにヤバイ資金を洗浄しようとしたり、租税回避に使ってりしているところもあるだろう、というモレーの言から、その辺を突っついて、確かにその証拠は出て来たりするのですが、そこを使ってアンマリちゃんの国への信用不安を作り、ついでにその情報を売って金を、という一石二鳥作戦に出たら、アンマリちゃんが秒でその不透明だったり危ない金の関係口座をシャットダウン。それによって、価値下がり始めているけどその行動をとるならという、絶好を見逃さない投資家によって、アンマリちゃんの国の株は買い支えられ、元より大きい資金を得るに至るのでした。アンマリちゃん判断力の鬼か。
 そっちの方は、絶好が一瞬にして絶悪に切り替わってしまって、おっさんであるのも含めて生きて帰れたら不思議だろうなあ、という状況なのですが、そこで次の巻に! なので、なんとなく死んだな。という感想がまろびでてしまいます。作った新組織とやらがまだ何かしてくるなら、生き残れる可能性はあるんでしょうが、うーん。おっさんだしなあ。男をもりもり殺した『デストロ246』の作者だからなあ、高橋慶太郎先生。
 他方で、聖夜さんの方は順調の動き。まだ出だしなので、広告塔からの委譲も視野に展開する聖夜さんに対し、街の一区画にどでかいモールを、という策のフワさん。しかし、そこは安倍野さんが待ったをかける形。そこをどうこうするには、安倍野さんをどうにかしないと、ということでフワさんが動く、というのもこの巻のエポックです。
 今までもそれなりに見てきたように完全に居場所を隠匿出来るフワさんに対し、安倍野さん側は毒を使って制する、という手段に出ます。広域に毒ガスを! それなら位置が分からなく手も問題ない! つか、えげつないな! パラケルスス
 で、毒を食らいつつもなんとか逃走に成功し、この勝負は安倍野さんに結構な痛手を与えられましたが、そういう存在がいる、という事実が知られたのは結構デカいことかもなあ、と。知られていない、が一番強みだったのだから、このタイミングでそれを切ったのはどう出るか。その系統に強いモレー陣営にもその情報がもたらされてるっぽいので、フワさんはしばし試練の時かもしれません。
 しかし、フワさんの聖夜さんスキー具合が結構度を超しているというか、自分を彼女、そして正妻扱いしているというのでもう、本当に本気なんやなあ、と。聖夜さん側も、好きなんだろうけど、ここまでではないだるし、この温度差のある百合というのも中々見応えがあります。齟齬が出て崩壊してフワさんが自暴自棄になる、というルートもあるだろうし、案外上手くいって本当に正妻ポジに、という可能性もある。この辺の匙加減というのが高橋慶太郎先生の場合、大変読みにくいというか、予断を許さないので、さて、そこもどうなるか。
 とかなんとか書いて、この項を閉じたいと思います。

 ネタバレ感想 九井諒子 『ダンジョン飯』8巻

ダンジョン飯 8巻 (HARTA COMIX)
ダンジョン飯 8巻 (HARTA COMIX)

 大体の内容。「6階、一筋縄では」。突如何かの症状に苛まれ、一旦小休止となったライオス一行。流石に食あたりの可能性は高すぎるなあ、とライオスが思っていましたが、その症状はそうではなく……。ということで、初手から搦め手で攻めてくるのが、『ダンジョン飯』8巻なのです。
 その症状、というのはチェンジリングの効果で身体が変化していたサイン。それによって元の種族とは違う体になってしまったライオス一行ですが、最初はこれ結構いけるかも、と過信してしまいます。ライオスはドワーフになって、流石に力が違う! ってなります。しかし、それぞれの種族がそうなっている、その理由を理解していくうちに、このままじゃまずい! となってワタワタ。ついでにガーゴイルも出てきてさあ大変、というのが砂地が水を吸うように、自然の速度で読者に理解させられます。早くもなく、かといって遅くもない。まさに理解出来る速度で理解出来る情報を理解出来る量で。
 ドワーフが何故薄着なのか、とか、チルチャックが何故前線に出てこないのか、とか、エルフの魔力が如何に大きいのか、とか、そういうのを探索したり戦闘したりという部分の隙間隙間にきっちり入れつつ、あ、これやばい。と読者側に理解させ、更にその解決の糸口からの小ネタの効いたガーゴイル戦、というのを、マジで過不足なくやってくるのです。毎度毎度凄みが増している『ダンジョン飯』ですが、ことここに至ってこの淀みの無さ。まだ昇れる余地があるんだよ! という九井てんてーの向上心の高さに目がくらみそうです。
 この高み具合は、地上付近のあのダンジョンぶち壊し隊とカブルーの一悶着、そして狂乱の魔術師との対峙の場面でもう一段上がっていきます。
 ダンジョン1階に巣食い始めた人たちを、さあどう追っ払おうか、からの狂乱の魔術師との対峙は、しかし突発時。巣食う人たちを追っ払おう、としたダンジョンぶっ壊し隊の前で巻き起こる、巨大歩き茸による混乱! 胞子を吸ってしまった人たちの中に、狂乱の魔術師がいる! とダンジョンぶっ壊し隊隊長は予測し、その発見をカブルーに。からの、その突発的発見。そして微妙に噛み合わない会話からの、ファリン登場! で、もう場がぐちゃぐちゃです。ちょっといっぺんに色々起こり過ぎているんですが、それでも全然納得して読める、というもうほとんど魔技というレベルに九井てんてーが到達しているので、もりもり分からされます。コワイ!
 さておき。
 魔力が薄い、というので厄種のファリンは大きく動けず、なのでこれで終わりだ、と誰もが思って、そしてそれを一番強く思ったカブルーが、それはいけない! と動いてしまいます。元々、幼い頃に同じようにダンジョンぶっ壊し隊によって故郷を消された、というのと、ファリンをライオスは助けたい、という想いで、他の想いもあるけど、動いている、というのが合わせ技になった格好です。そして、ダンジョンぶっ壊し隊の隊長と共に、狂乱の魔術師と一緒に逃げようとするファリンの落ちる穴へと。さて、この組の方もどうなるのか。ああ、隊長さんは転移魔術が使えるんで、一応大丈夫だろう、という予断はあります。が、その隊長さん、極度の方向音痴で、移動の為であるはずの転移魔術をその方向音痴感から攻撃に転用している、というこれはちょっと、やっちゃいましたね……。という予断もあり、カブルー助かるのかなあ、と予断を許されないのでありました。
 さておき。
 今回の、地味なんだけど一番デカい話がありまして、それはファリンがマルシルと一緒に何か食べようとしたのが幼少の寂しさの埋め合わせであった、というのではなく、ファリンを元に戻す方策が一応立ったことです。
 何故立ったのに一応なのかというと、センシの予測で、食べて他の生命の体の元となったら、もう元には戻らない、というのから発展して、ならファリン部分以外を食ってしまえば問題ないんじゃないか? という亜空の結論に至ったからです。
 先のレッドドラゴン、ファリンが成った部分以外の肉が戻ったけれど、それでも全部は戻らなかった。それは、わしたちが食べた分だ、という部分からの推理なんですが、そうなるとどうやってファリンは元に戻れたのか、という部分も混乱があります。まだレッドドラゴンの身になる前だったのか、それともレッドドラゴンが食うという摂理の外にあったのか。前者な気がするんですが、後者もありそうで、しかしどの道あれだけの質量を食う、というのは生半には出来ないぞ、となり、なら人に振る舞えばいい、まで到達した後の、その頭数に入れられたカブルー以下に走った背筋の悪寒で一気に噴きました。勝手に頭数に入れられているけど、そもそも魔物メシ受け入れてねえから! その辺をどうするか、というのも今後次第。そんなに皆食ってくれない気がしないでもなく、空論に終わりそうな雰囲気です。でも、この漫画だからなあ。
 そういう予断を再度持つ、そんな無茶さがある。うんうん、それもまた『ダンジョン飯』だね!
 とかなんとか。

 感想 塩野干支郎次 『プニプニとサラサラ あるいは模型部屋の少年と少女における表面張力と毛細管現象』3巻

プニプニとサラサラ 3 (3巻) (ヤングキングコミックス)
プニプニとサラサラ 3 (3巻) (ヤングキングコミックス)

 大体の内容。「少年少女と、模型の青春は続く……」。完全に打ち切り、だというのになんかこれはこれできちりと終わったような気にさせられる、それがプニサラ3巻なのです。
 先述の通り、この漫画完全に打ち切りエンドなんですが、しかしそれすら予定に組み込まれていたのでは? というくらいに巻き進行なく、終わっていきます。あくまでマイペースといえばいいのかもでしょうが、あまりに急ぎを見せないその姿は、いっそ恐ろしいものではないか? とすら思ってしまいました。それくらに、本当にペース配分が変わらなかったのです。
 特に、終盤であるエアブラシ編に至って、それは極致に到達します。撮影の都合で南の島にいる文夏さんが偶にインサートされる以外は、エアブラシの話をきっちりやっていくだけ、というある意味バランス感覚が優れていないとできない配分でされるのですが、ここですらペースはマイペース。急いだところが全くありません。ここは基礎だから、しっかりやらないと、という心配りを感じさえします。そういう場合じゃないんじゃないですか!? なんですが、塩野先生の歩みに淀みも遅滞も拙速も雑さもありません。あくまで丁寧に。そういう所作、嫌いじゃない。
 さておき。
 最終巻ですので総まとめみたいな話をしますが、先にも書いた通りに、本当にペースが変わらなかったなあ、と。最後の最後で匠海くんと文夏さんのあわい関係を、最後まであわいままで、しかしこれは脈あるな? という風に維持したのも凄いですし、模型ネタとしては大体基本はやりきっているのも凄いです。逆にこれ以上長くなってやることがあったのか? という気もしますが、その辺はマニアックなネタに深堀出来たらしたかったんだろうなあ、という面もあったので、案外やれたのかなあ、とか。
 しかし、もうちょっと女の子とキャッキャウフフの模型生活、見たかったなあ、とは思います。大体のラッキースケベは行ってしまった後なので、そこは限界だったかもですが、そこがメインの漫画じゃねえから! とも思え、そういう意味ではこれ以上ラッキースケベを開発する方に舵が切られなかったのだけでも、良かった。それで満足するしか、ないじゃないか……。と妥協満足するばかりです。
 それにしても、模型ネタガチガチにしつつも、女の子で干渉帯を作る、という現代的な作風でしたが、それがうまく両輪として回っていた、というのが最後まで維持されたのは良かったです。模型ネタは門外漢なのでへー、でしたし、女の子要素はふひっ。でしたし。その上で粛々と打ち切りを受け入れ、そしてこの漫画で出来る事を全く忽せにしなかった。そして最後に向かえる、匠海くんと文夏さんの、なんかこういうのよいよな。という読後感を感じさせるあわい。見事なお仕事だった、と言えるでしょう。短い一作でしたが、十分なものだった。そう書いてこの項を閉じたいと思います。

 今月のまんがタイムきららチェックポイント(2019年10月号)

まんがタイムきらら 2019年 10 月号 [雑誌]

先に総評

 今回の号の特徴、というとやはり、色々な作品が抜けた後の反動。そう、ゲスト攻勢です! ということで3割がゲストという、高高度ゲスト構成になった訳ですが、TYONE『謎のリリリス』が頭一つ抜けて存在感を持っていたのが印象的でした。ゲスト、特に謎の生命体っぺれえのが、というのは大体箸にも棒にも掛からぬタイプが多いんですが、『謎のリリリス』は中々な角度で攻めてきて、いけてるわ。と涅槃姫みどろさんのサムズアップで言えるタイプとなっております。可愛い女の子がわちゃわちゃするだけ、だけど、吐くとお腹がすくので吐きたくない、という危険球がワタシにクリティカルヒットでしたよ……。こいつと、連載だけど『星屑テレパス』がきらら主戦場に入ってくるのが楽しみです……。

個別チェック三連弾

  • 荒井チェリー『むすんで、つないで。』
    • 薗部の姓はかき回し役に任ずる。という感じで色々と濃い存在として、薗部苺さんが登場しました。薗部、というだけで荒井チェリーを知っている人はガンガンと警告音が鳴っていると思いもますが、そのアラートは正しく機能しています。何せ、行方不明から50年、平行世界で過ごした、というのですから。ブラフなのか、真実なのかはさっぱりですが、かのちゃんさんの例があるので、それはそれであるのでは? と。でも高度に厨二と高二が混ざっているだけな気もする辺りが、流石荒井チェリー先生、と言えるところでしょう。その辺のあわいを機ちりと残す所作。流石。
  • 篤見唯子スロウスタート
    • 先生、付き合いいいな……。ということで、あちこちで皆がうろうろしてた回でした。えーこちゃんさんのサイドビジネスが回り回ってかむさんの所に到達していたのが、なんというか、尊い。えーかむえなみの三角関係っぷりも増しつつ、はなちゃんさんも秘密が言えたらいいな、ってなっている、ある意味この漫画においては結構デカいタームの回だったのかなあ、とも思ったりも。はなちゃんさん、秘密言える日が来るのだろうかなあ。
  • 猫月『トールさんの通り道』
    • スライムを飲む、ってお前正気かあ!? な回。迷子スライムを届ける話でしたが、やっぱりスライムを飲むという行為がヤバいとしか。どうにも、分離したら意志とかはないみたいなので、普通に水分になるっぽいんですが、それでも飲んでみよう、とは思わんよな……。ある種吸血鬼的なムーブだし……。あ、お母さんスライムの別口で酒を飲むとこがなんか良かったです。飲んだらすぐ影響でそうなんだけども。

今月のワンワード

  • 湖西晶『下を向いて歩こう』から。

愛人を排除せず三人で楽しむ…
 積極的だな シエル

  • しょーこさんがぽっと出の女なんかに! という嫉妬心をあらわにするシエル。しかし混ざりたいというので、この台詞をさざれさんが言うことに。語弊!

 感想 小箱とたん 『スケッチブック』14巻

スケッチブック 14巻 (ブレイドコミックス)
スケッチブック 14 (BLADEコミックス)

 大体の内容。「いつもと違い、いつもと違うが、いつも通り」。あるいは終わらないのが終わり。それがゴールド小箱とたんレクイエム。そんな戯言を言いたくなるくらい、違うし違うはずだけどいつも通りを貫いたのが、『スケッチブック』14巻なのです。
 この漫画も長丁場。15年近くやっていた訳で、そりゃあ梶原さんのキャラが変化するのもむべなるかななんですが、それでもこの漫画の持つ雰囲気というのは変わらずやってきたと思います。初期に比べると鳥飼さんの小市民ネタが枯渇したり、麻生さんの存在感の変転が面白かったり、涼風コンビやケイトのせいかおかげかとにかく空閑先輩の存在感が薄れていったり、栗原先輩の自然ネタが横溢したり、ケイトの存在を使ったネタが縦横無尽だったりしまりしましたが。いや、結構変わっている!
 などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。と家弓家正声がするっと。確かに、梶原さんは初期のちょっと不思議で儚げで不思議な感じから、力強く不思議な子になりました。しかし、ベースとなる作品の転調とまで言えるか。梶原さんの変転をしても、空閑先輩が存在感薄れても、ケイトが爆裂しても、それでもこの漫画の持つものに変化はあったか、と言うと無かったんじゃないか、という感想がまろび出てしまいます。
 絶対に違う、と言い切ってもいいのに、なんだかそうではなく、この漫画持つ稀有なものは、残り続けて味わわされ続けたのではないか。それがこの長期連載に繋がったのではないか。そういう感想すら出てきます。
 ではそれは何か、と言われると、やはり空気感、という言葉が一番しっくりくるのです。が、この場合の空気感というのが、00年代の空気系という型のそのアトモスフィアとははっきりと違うタイプのスタンドだと言えるのもまた、『スケッチブック』の存在感です。単にギャグ調でもなく、かといって空気の良さが無い訳でもない。でもどちらとも特化した形ではない、というか自然ネタの横溢は空気系という言葉とはまた違う側面をすすっとおもてなしされている感じ。こ、こは何事……?
 錯乱はさておき。
 もしかすると、『スケッチブック』の真価とは、涼風コンビにあるのでは? ←まだ錯乱している
 いやいや、マジで。あの二人が近接してからこっちの『スケッチブック』というのは、流れに困ったらあの二人を外接すればいいや、という油断、というか慧眼に満ちていたのではないか。あの二人が起動すれば、たちまち『スケッチブック』のギャグ調の行進が始まります。今までしていた話のまとめて尺が余ったら、ぶっこんじゃえばいいんだよ! そういう思慮が深まっていたのではないか。
 実際、涼風コンビが締めを仰せつかる流れは結構あります。あるいはオチではなく一段落として外接する場合もあります。共通するのは、それで流れを完全に断ち切る形になる事。まあ、涼風コンビだし、こんなボケた、多重な意味で、展開でもしょうがないか。そういう予断を我々に与えてくれる、あるいはデウスエクスマキナだったのでは? そう考えた我々は『スケッチブック』再読の行動を開始した!
 してません! やりたいしするけど、今じゃない!
 さておき。
 この漫画の流れというのは、涼風コンビで統御されていた、という驚きの勘が冴えてしまいましたが、案外あの二人のノリ、というのがこの漫画のノリとして状況を支配していた、というのはあり得るかもしれないと思い始めました。
 思えば、涼風コンビのネタというのは、がっと笑わせるタイプでも、くすりとさせるタイプでもなく、え、あ、うん。うん? という戸惑いから生まれる妙てけれんな笑みと言いましょうか、およそ空気系が持つにはおかしいリソースです。そこにいろんなネタがまき散らかされ、ジャミングされていますが、基本となるそれは、一つも揺らいではいなかった。あるいは、梶原さんの初期の雰囲気もそっち寄りであったけど、涼風コンビの登場でそこからじんわりと足を抜けた、からのダイナミック梶原さん爆誕かもしれません。確かに、初期の梶原さんというのは不思議と儚さと不思議を掛け合わせて不思議が多い! な動きをしてたけど、あれも当惑の笑みをさせられる変な味わいだったよなあ。
 そう考えると、色々なネタがあったにしても、最終的に同じ空気感が続いていた、というのは成程、そういうことなのか。そう勘違いをしたいと思います。
 さておき。
 そう考えると、最終回の後にあった描き下ろしの良く訳の分からない感じも、この漫画の基本とはここなのだ、という示しとして感ぜられます。おそらく後世に残らないだろう見事な見開きボケの唐突具合とか、みなもんの妙な存在感で押していく感じも、涼風コンビのそれと軌を一にしている。この、妙てけれんこそ、『スケッチブック』だったんだ! 父さん、見えないの! 『スケッチブック』がいる! 怖いよ!
 個人的な好きだったキャラ話をシマショウ。←唐突
 というか、やっぱりケイトなんですよ。自分のストライクゾーンからするとやや内角低めで判断が難しい球ですが、これがもうてきめんに。どうしてこんなに好きなのかよく分からないんですが、それを今解明しようとして、荒く感じるのも勿体ないと思うので、終生の疑問として墓場まで持って行こうかと思います。←そこまでの話か
 いや本当、ケイトの良さというのはいくらで出てきますが、出てき過ぎてよく分からないというか、それ一挙手一投足じゃねえか! なのでどうしたらいいのか分かりません。誰か、助けて……。ケイトの良さを俺にレクチャーして……。←好き過ぎておかしく
 と錯乱しましたが、とりあえずこの困惑の大笑みを与えてくる作風で、次はどういう漫画を描くのか、小箱とたん! とやっぱり錯乱したままこの項を閉じたいと思います。一生どこへでも、ついていきます! ←落ち着け

 感想 鴻巣覚 『がんくつ荘の不夜城さん』3巻

がんくつ荘の不夜城さん 3巻 (まんがタイムKRコミックス)
がんくつ荘の不夜城さん 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「さらば不夜城さん、また(その漫画で)会う日まで!」。ということで、なんとなく2巻乙を越えたものの、3巻乙になった不夜城さんの明日はどこかだ! という感じでエンドマークがついた『がんくつ荘の不夜城さん』なのです。
 この漫画の存在というのは中々に難しい所がありました。というのは、腋とか超好きだから! というのを惜しげもなくやっていたことではなく、この漫画が不夜城さんが描いた漫画である、という入れ子構造を導入してくることをもって、難しいという判断を持つことです。
 そう思うと、あそこは、とかここは、とか、とにかくメタ認知が必要なんですよ、メタ認知が! という声を上げるくらい、もしかしするとそういう思惑で……。と惑乱させられます。そういう風に描いた、というのの最上級の逸品なのでは? という錯覚めいたものすら覚えます。どこからどこまでがそうなのか。あるいは勝手に思わされているだけなのか。そこを突き詰めるだけでも、この漫画を多重に楽しめる素地の有難さを感じずにはいられません。
 さておき。
 そういう話抜きにすると、この漫画の構成要素の7割くらいである鴻巣先生の、あるいは不夜城さんの趣味である掲載誌のレベルで出来るギリギリのエロ要素というのが鋭角に突きたたってきます。
 3巻カラーのその趣味LOVE1000%ぶりは、ちょっと他の漫画ではお目にかかれないというか、それをするのを誰かが止めるやつなんですが、止めるやつがいなかった模様で鴻巣先生あるいは不夜城さんの趣味が爆発! 爆発! 科学戦隊ダーイナマーン! しており、そのあまりの趣味爆裂具合にそういうのに慣れているはずの腐れ読者の私でも軽く引くレベルとなっております。エロ要素、嫌いではない! が、限度がある! 狂気レベルでぶっこまれると流石に引く! やめて! 好きだけどやめて!
 そんな超濃度の趣味絵をしつつ、お話の方は不夜城さん三度目の打ち切りへと推移していきます。打ち切り慣れしているし、という不夜城さんでしたが、王様と逢瀬するタイミングで、やはり悲しかったのだろうなあ、という場面に遭遇します。が、それは4コマ目の後。誰も見ていないタイミングなのであります。この「4コマ目以降なら誰も見ていないさ」というのは、4コマ漫画の拡張の在り方として一つエポックだと思うのですが卿らはどうか。
 さておき。
 掲載誌での最終回も大変良い物でした。白仙ちゃんがメカクレからメカクレ眼鏡ロン毛になってパワーアップ! というのだけではないのですが、個人的にはそこがダイレクトアタック! イワアアアク! で、内容も入ってくるにはくるんですが、趣味の子や……俺の趣味ドストライクや……。ってなってしまうのも仕方ないと思っていただきたい。
 そこもある意味狙って弾ぶっこんできたとしか思えない、素敵な白仙ちゃんなのです。そういう部分に対する誠実さでは、鴻巣覚先生を超える者はないと断言できるくらい、信頼出来る人の性癖狙いなのですよ……。
 さておき。
 この漫画がどういう漫画だったか、というとやっぱり性癖狙い撃ちし過ぎ漫画だった、という印象が最後の白仙ちゃんで上書きされちゃうのも仕方ないのです。でも、メタな部分もまたこの漫画の持ち味という風にまくしあげてからの白仙ちゃんの性癖ドストライク、というので揺さぶりが強過ぎました。
 刺激物!
 そういう漫画だったんだなあ、という呟きを残して、この感想を終えたいと思います。