感想 木々津克久 『名探偵マーニー』9巻

 大体の内容「今回もマーニーにおまかせを」。毎度毎度この入りになりますが、この台詞便利なんですよ。便利という便利な言葉が、我々の切り札。と言う事である意味ではいつも通りな、でも徐々に様相が変化もしているのが、『名探偵マーニー』9巻のあらましなのです。
 基本的に探偵漫画というくくりには不釣り合いかもしれない一話完結なこの漫画ですが、それが今回も変わりません。それで問題が出るか、というとそれが全くというだけで褒めそやしたいですがそれはおいておいて、そんな中でもちょっと大きめの、マーニーの宿敵であるメカニックに関する回が二回あったのが、今回の大きなトピック。
 その二回の一つ、file73『マーニーの思い出』は小学生期のマーニーと後のメカニックとの出会いですが、そのメカニックになると思われる男は今までちらっと出てきたメカニックとはちょっと違うな、という印象を持ったりしました。飄々としているんだけどわりと簡単に仲間割れから大けがさせられてるし、だというのにそいつらを殺すという事もしないし、それにその仲間割れの原因の事件でも特に血が流れるような作戦ではないし、で、ちょっと疑問符がつくんですよ。
 それが具体的にマーニーが昔あった男、鴻上と今のメカニックが違うのではないか、というのが提示されるのがメカニック回のもう一つ、file76『シンキングワールド』。この回は珍しくマーニーが依頼を受けず、ただ今まで集めた情報からメカニックであろう鴻上について思考していくという回なんですが、そこでマーニーが導き出したひとまずの結論が、メカニックは二人いる。鴻上という騙し屋稼業だけど人は殺さないメカニックと、それと外郭は似ていても、人殺しをさせる事を好んでいるかのようなメカニック、その二人がいるというものでした。この点で、マーニーと因縁があるのは、ロイドさんが刑事を止めるきっかけになった事件の犯人はどっちなのか、あるいはどっちもなのか、という謎が、不気味に漂い始めます。ここ、かなり一筋縄ではいかない雰囲気ですよ。メカニック同士がかち合う場合もありえそうだし、マーニーの因縁の事件にはどっちも絡んでいる可能性だってあるし。ここ、どういう決着を見せるのかなあ。見せてくれるはずだ、木々津せんせなら。
 堅めの話はさておき。
 今回はいつも通りバラエティに富んでいる漫画なんですが、それでもクスリ、とくる回が多かったかと思います。file77『美人コンテスト騒動』は単なるミスコンだったはずが初手から妨害工作が始まり、どんどんと相手のスキャンダルを暴きたてる情報戦の様相を呈し始める中で、最終的にゆりかちゃんが美人コンテストに参加もしてないのに漁夫の利を得るのでクスリですし、file79『ニセマーニー』のどうしてマーニーのニセモノが? それも特に風評を悪くしようとしてるのではなく、むしろ良くしているし、なんだこれ? ってマーニーが当惑しながら調査して、潜入までして分かった事実と、その結果生まれた百合的な側面、そしてゆりかちゃんの彼に疑惑が!? というオチでクスリでした。
 しかし、それらを大きく上回るクスリポイントが、9巻描き下ろしのゆりかちゃんの復しゅう話。浮気してた彼氏に鉄槌を! と、しようとして全然そういうの出来ずじまいである辺りに笑いが生まれます。とはいえ、復しゅうなんて出来ない子なんですよ、というのが今回の趣旨だったらしく、最後はマーニーによしよしされるのでした。まあ、マーニーはその前にあんたも浮気してだろとか言ってましたが。そして、そのよしよしの後に、美人コンテストの漁夫の利で手に入れていた、立花さんとのデート権を使う事を決意するので更にもう一笑。この辺りのタフネスは見習いたいですね。というか、一応彼氏いたから、それに義理だてしてデート権は使ってなかった、と考えるとゆりかちゃんにちょっと同情心も湧くような気がします。まあ、結論するとなんだこのテコ入れなんですけども。
 とかなんとか。

2014年06月07日のツイート