感想 田口仙年堂『吉永さん家のガーゴイル 5』

日向悠二:ファミ通文庫:640円:ISBN:4757720335
今回の「吉永ガー」はお祭りが発端となり、吉永さん家に分裂の危機が訪れます。 そもそも南口商店街が主で行われるはずの桜祭りに北口のデパートも便乗するかのようにセールを企画してきた事により、北対南のお祭り抗争が勃発。 南口ひいきの吉永さん家では当然のように南口商店街に肩入れするのですが、そこにパパさんが突然「北口に頑張って欲しい」と発言したからさあ大変。 この発言にママさんぶち切れ。 それから家族は上手くかみ合わなくなっていく・・・。 というのが粗筋であります。
そこから北対南の激闘をへて一大騒乱になっていきますが、その過程で吉永さん家がきっちり家族として団結しなおし、最後にはラブラブな終わり方をするのを見ているとなんとも良い心地になってきます。 ラストの場面は、他人事ながらこそばゆくなりました。
しかし、一応非現実な者たち大集合な、ある意味怪獣大決戦みたいな話なわりにメインはあくまで御色町に住む人たち+αなあたり、こんな話がかける田口仙年堂はすごいなあと思わざるを得ません。 もうこれは、現在のライトノベルの範疇では「エッジ、または先鋭」と言って良いような気がします。 普通の話が過ぎて逆に先鋭化しているというか、どんなものでも取り過ぎは体に毒だといいましょうか、そんな具合です。 というか今気づきましたが、どうやら私、吉永さん家一帯がまるで実際にあるように感じているようです。 現実と虚構を混同するほどに書き方に説得力があるのでしょう。 やっぱり良い新人さんです。 ってまだ新人だよ?! という驚きを胸にしつつ、次の話を待ちわびようかと思います。