感想 奥田英朗「イン・ザ・プール」

文藝春秋・1238円・ISBN:416320900X
内容を要約すると「医者にいったら驚いた」
伊良部総合病院の精神科医にして変人の伊良部とそれに関わる人たちのなんとなくなお話。
さておき。
とりあえずは楽しめました。 全然笑えないんですけどね。
なんでも精神病にすればいい&変人に会ったらなんとなく直るという思考は、その気のある私としてはかなり許容できかねるのですけど、まあ悲惨な話にはならないのでギリギリ許せる範囲です。 あくまでギリギリですけど。
問題なのは伊良部はそんなに変人に思えない事です。 これは主に私の変人耐性が高すぎるのが原因なので本のせいにはできないんですけれど、そんなに変な奴とは感じないんです。 喩えば成田良悟作品のキャラでいうと『ヴィーノ』位までぶっ飛んでたら流石に笑えるんですけど、そこまで無茶には達していない。 ギリギリ共感できそうな人物、この範囲なら世の中として認められる人物として『伊良部』はいるわけで、どうしても世におもねっている部分が多く、その上笑いの肝心要が『伊良部のキャラ』なので、結局ぜんぜん面白くないんですね。 っていうかこんぐらいの変人ならそこいら中にいますよ、実際。 皆見て見ぬふりしてるだけで、たっくさんいます。 でもそれは世の中として許されないレベルまでいってたりする。 己の根幹すら破壊しかねない変人である為に防衛として見ないんですね。 なんでこれを読んで「変人っぷりが笑えた」って人はとりあえず殴っていいですか? 奥歯ががたがたいうくらいに? そんな簡単に精神良くなりゃ、こちとら苦労なんてしないんだよっていいながら作者を? (落ち着け)
ごほん。 すいません。 本当にギリギリでしか許せないものでつい。
えー、ただし、文章の流れは上手いのでそれが上手く出ている表題作「イン・ザ・プール」とかは結構好きです。 オチが納得いきませんが、「このまま流れていきたい」という感覚に浸らせてくれたので楽しめました。 映画もこのノリが上手く引き出せたら、面白いものにはなると思います。 きっと見ないので本当にどうなるかは知った事ではありませんけどね。 あー、中古で買えばよかった。 印税渡してしもうた・・・。(そこまで嫌か)