? 感想 米澤穂信「春季限定いちごタルト事件」

片山若子創元推理文庫・580円・ISBN:4488451012
内容を要約すると「小市民の道は険しい」
小鳩君と小左内さんが一生懸命に小市民を目指すも、地金のせいですぐぼろを出す話。
さておき。
単に感想を書くだけなら「面白かった」ですむのでそうしましょう。 ではどこが面白かったのか? ご説明いたしましょう。
小左内さんが可愛いのです! 最初のチョコチョコとした可愛さがじわじわと地金があらわになってそっちの方に傾いていくけど、それはそれで! という段差式可愛さが素晴らしいのです。 小鳩君のいちいち古臭い言い回しをする所もいいですけれど、やはり小左内さんの可愛さにはかないません。
これは米澤穂信氏の良さの一つを言い表してます。 それは文章だけで人物を際立たせる事。 これが格段に上手いんですね。 今までの作品もイラストが表紙以外にない形で人物を書いてきたわけですけれど、この本で人を書くというのが完成の域に達しはじめたといっても過言ではないと思います。 特に小左内さんから真・小左内さんへと移行する所の全くの違和感のなさというのは、グダグダいわないで見てみなさいといいたくなるほどです。 大体はこういう一冊内での大変化っていうのはなかなか難しくて、それはもういろんな人が失敗を重ねているわけですけれど、それをまったく違和感なくやってのける辺りに米澤穂信氏の技量の冴えを見せ付けられた思いです。 その人の芯中をきっちりさせつつもそれを隠して殻にこもろうとする様を書くことで、逆にその芯中があらわとなって映えるんですね。 上手いなあ。 そしてどっちの小左内さんも可愛いなあ。
米澤穂信さん、今年は結構本を出すそうなので、ひとつ残らず買いたいと思います。
え? 解説?
あーーーっ、ねぇ?