感想 海原零「銀盤カレイドスコープ vol'4」

鈴平ひろ集英社スーパーダッシュ文庫・571円・ISBN:408632241>
内容を要約すると「妹の場合」
さて。
いいか!! ここでもう一度海原零の作家能力の特異部分について確認しておくぞ!(版打) 今度こそ。
彼の作家において一番重要な点は、彼の書く文章のリズムにあります。 喩えば西尾維新谷川流福田政雄冲方丁のような「流々連綿とした文章」*1とでもいいましょうか、文章流れの中に山や谷が、平や荒がある文章のリズム。 それと対照的な「区切り、スタッカートな文章」こそ、海原零の文章の骨子となる技法なのです。
流々なる文章が流れに力を加えて大きな波とするのに対し、区切りの文章とは読点、改行、空行のタイミングによってテンポを生み出し、話の流れを作り出し、緊張と弛緩を生み出しているのです。 喩えば、4巻におけるタズサとヨーコの氷上談義がその良い例ですね。
この方法は精密なテンポ制御ができ無ければ、読み手の読書後の感覚は散漫となってしまうでしょう。 しかし、海原零はその能力を持つがゆえにしっかりとした読書感を我々に与えてくれるのです。
こちらの緊張と弛緩を上手く操れる作家として私は「乙一クラスの逸材では?」と思っています。 …褒めすぎか?

*1:この能力が高くなると、隆慶一郎の域に達します