<おかゆまさきと愉快な仲間たち:電撃文庫:550円>
内容を要約すると「協和する不協和音」
全員が各々のやり方で書いた為に「なんだろうこのコンセプト同人」になってしまった、いろんな意味で奇跡的な一品です。トリビュートってつければ何しても許されるのでしょうか。
許されるんだろうなぁ。
さておき。
さまざまな作家さんがただでさえ作品の構成要素がゆっるゆるの「撲殺天使ドクロちゃん」を、よってたかってするのはなかなかに楽しいですが、同時にハラハラします。なにしでかすか分かったもんじゃないですから。そして実際しでかしてるわけですが。
で、同じ書き出し&書き終わりで一応のくくりをしたことが、そのくくりをいかにするかに注力した作家陣の暴走を呼んでいるんですが、これが図に当たっているというか、その作家個人個人の良さを上手い具合に引き出しているので、かなり楽しいわけです。好きな作家が一人二人いれば、かなり元が取れた気分になるんじゃないかなぁ。他の作家のも比較対象としてみれば楽しめるし。この辺のやり方のセンスはさすがおかゆまさき、と思ってみたり。というか、構成まで考えたって、おかゆさん、あんた編集者の方が向いてるんじゃないか?と思わずにいられません。*1
気が付いたら、いつのまにかおかゆまさきが編集者になっている、というバカ小説から始まるミラクルが、案外そう遠くない未来に現実味を帯びてきたりしたら、それはそれで楽しいかも。
さて、せっかくなので作家別の感想を、「ドクロちゃんフォーマットに沿っている」、「作家らしさ」の二点の割合を比率で出しながら書いてみましょう。
高橋弥七郎の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 2 : 8
バトル物。
どうにかして燃えシチュエーションに!というのがいつもの高橋弥七郎だなぁ、と訳も無く納得。「地の文」が雄弁なおかげで、逆にドクロちゃんという作品があんまり「地の文」という感覚で「地の文」を書いていないことが分かる。
築地俊彦の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 1 : 9
スプラッター&情痴物。
一応スプラッターとは書いたけれど、その辺の描写がくどいわけでもなく、情痴物と書いたけれど、その辺の(以下略)。
こういう振れ幅もありうる、というのだけは良く分かるけれど・・・。
鎌池和馬の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 8 : 2
若干失敗気味のホラーコメディ?
衒学的な匂いを少し出しているものの、全体的にドクロちゃんの流れに沿った具合。ホラーの雰囲気に挑戦しようとしているけれど、あくまで衒学の為の添え物といった按配で、その後のギャップで落とそうとして、うーむ。
ハセガワケイスケの場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 7 : 7
不思議世界のシンミリ話。
「フォーマットに沿う」と「作家らしさ」が必ずしも相反する物ではない事の好例。これが「ハセガワケイスケ」作品の持つ雰囲気なのか、と少し感動した。不思議についての理由を完全に投げているのは、私は好みです。
谷川流の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 1〜9(フレキシブル) :1〜9(フレキシブル)
「この世にフィクション以外のなにがあると思ってるんだ?」(BY古川日出男「ベルカ、吠えないのか?」)な話。
こいつは面白い。見ようによってはおかゆまさきのようにも見えるが、谷川流のようにもみえる。全体的に投げてる感じがたまらん。真実はドコだ!
水島努の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 5 : 10?
これはひどい。
本当にひどい。いろんな意味で。はっきりいって、これのせいで回収とか言う話が出ても、おそらく信じてしまうくらいひどい。最前の「谷川流の場合」があっさりかすむ位ひどい。
「最も文筆経験のない者が、もっとももっとも(以下略)恐ろしい!マギーーーッ!!」
成田良悟の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 10 : 5
「バカだ!あいつバカだ!!」(BYサナギさん)な、まとめの話。
本当にバカです。話はシリアスなのに、構成要素が桁違いに狂ってる*2ので気を抜くとバカな話にしか見えなくなるのが凄い。そしてそれをちゃんと統制してバカになったりシリアスになったりを繰り返してるのが凄い。でもバカだ!
谷川流に対するあの三語は言ってみたかったんだろうなぁ。まあ、私もそう思ったけれど。
時雨沢恵一の場合
- 「フォーマット」:「作家らしさ」
- 5 : 5
時雨沢氏らしい、思考実験的な話。
いつからだろうか。強力若本が「渋い」と評されるようになったのは。
「まとめ。」
そうねぇ。「バカだ!あいつらバカだ!!」って事で。
「そうですね」
*1:「撲殺天使ドクロちゃん」あっての事とはいえ
*2:殆ど100%の読者およびおかゆまさき自身が覚えていないようなキャラ総出演とか。青木さんやらエゾシカやら、誰も覚えてないって!