感想 『処刑御使』(ISBN:4344011929)

荒山徹幻冬舎:1800円+税>

 内容を要約すると、「死ねよやーーッ!!」
 だって、本当にぶっちゃけそれだけの話なんだもん。
 詳しくすると、荒山先生が新朝鮮妖術をもってファック伊藤博文する話で、そのついでに歴史もファックされます。一応、フォローが入ってなんとか収拾がつきますが、読み初めの頃は「荒山先生が歴史を改ざんし始めた!」と思って戦々恐々でした。まあ、フォローがあるせいで余計歴史ファックが無茶になるので恐れ所は間違ってませんでしたが。
 さておき。
 面白いなぁ。どんどんと山場を連打する事でごり押しで読ませてくれる、とでもいいましょうか。連載が元、というのもあるんでしょうが、とにかくたらたらとした説明は出来るだけすっ飛ばしていくのは爽快です。
 だがしかし、その代わりに巻き起こる瞬殺の嵐! もう、主要だろうが脇役だろうがお構い無しにさくさく死んでいきます。「尺足りねえんだよ尺が!」という荒山先生の声が聞こえそうです。落ち着いてください先生。そう思ってるのは先生だけで、読んでる方は唐突過ぎて困ってますから。
 その虐殺の最中で、たまに伊藤博文(作中では俊輔)が狙われる理由なども明らかにされるにはされますが、未来から来た事にはまだなんとか目をつぶるにしても*1、「俺を殺したからって歴史変わるの?」(意訳)という伊藤のタイムパラドックス的疑問に「相手はあんたを殺せばなんとかなるって思ってる考え無しなんです」(意訳)という回答は、いくらなんでも潔く投げ過ぎです。荒山先生の「タイムパラドックスなんてこの話には関係ないんだよ!」という声が聞こえてきそうです。いやな幻聴だ。
 そして話は最終的に「殺(と)られる前に殺(と)る」という「マフィアかお前」な思考に発展。舞台を移して話は一気に加速し、霊山での大決戦を経て気が付いたら終わります。
 ここまでくると流れが速すぎてなにがなんだかで、その上、大決戦の頭の使い方の間違いっぷりに大爆笑させられた次の瞬間に終わっているので。、気持ちの方が追いつきません。正直、なにされたのかよく分かりませんでした。まあ、終わりの終わりの切れ味は良かったので、最終的な読後感はすっきりした物でしたが。
 えー、全体としては「なんだかようわからんわぁ」という感情で一杯です。これは柳生が出てこない分、剣よりも妖術重視の展開だった事もあり、荒山先生のノー説明っぷりが際立っていたのが原因だとおもいます。柳生が含有されていないと話の混迷度が増すというのは、ある意味荒山先生の業なのか。
 最後に。あの先生の次はその先生だったか! 今度はやっぱりあの先生をやっちゃうのかなぁ。

*1:何故それが出来るかは、相変わらず理由不明