白地起源と傾向(序盤戦)<06年9月29日追記>

 こういうネタは偏執狂の出番ですのでやりましょう。
 現在わかっている範囲では、今の形の白地の起源は、拙考「表紙絵と女の子」と近しいようです。つまり、「ブギーポップ起源説」に行き当たります。

  • ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

 が、少し異論もあります。なぜなら、電撃文庫の初期作品にも、これに近い形があるからです。記憶がある人は思い出していただきたい。
 あかほりさとる「爆裂ハンター」、中村うさぎ極道くん漫遊記外伝」、友野祥「央華封神」などがあります。
 これらも、id:megyumiさんの、

 なんでこういうデザインの表紙が多いかというと、キャラクターを目立たせるためには、下手に背景をつけるよりこういうシンプルなものの方がいいんだろうなーと

 という説のように、キャラを前面に出す形の表紙だったと記憶しております。この説はかなり説得力があるのかもしれません。
 さて、電撃文庫における傾向の話移りますが、これはわかりやすい指標となる著者がいます。
 それは川上稔
 この人の作品において、都市シリーズの頃は全く白地が無いというか空間恐怖症なんじゃねえか位白地がなかったのです.

  • 機甲都市伯林―パンツァーポリス1937 都市シリーズ (電撃文庫)

 が、AHEADシリーズに入っていきなり「白地に女の子一人」パターンに移行します。

  • 終わりのクロニクル 1(上) 電撃文庫 AHEADシリーズ

 これが2003年6月の事。この辺りが転換点、とみる事が出来ます。
 実際、前年2002年に始まった「白地に女の子」表紙作品、高橋弥七郎灼眼のシャナ」、うえお久光悪魔のミカタ」の隆盛、メルクマールの秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏」の完結などがこの2003年に集まっています。
灼眼のシャナ (電撃文庫) イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫) 悪魔のミカタ―魔法カメラ (電撃文庫)
 そして、この年以降の傾向として、「知名度があるのは白地表紙」というのが顕著になります。
 しかし最初は白地が多くなったから自動的にかと思ったら、違うんですよ。最近増えた白地で有名なのは実は少なくて、2003年頃白地だったのが知名度が高いんですよ。つまり、この「白地に女の子」という方法論が例が増えたからそう見えるではなく、実際に効果がある(あるいは2003年時にはあった)からされている事なわけです。
白人萠乃が色付き→白地になったり、
 白人萠乃と世界の危機 (電撃文庫)   →  白人萠乃と世界の危機 メイドinヘヴン (電撃文庫)
古橋さんや秋山さんの新作も、ついでに成田良悟さんの「針山さん」が白地だったりするので、かなり効果がある(あるいはあった)んじゃないでしょうか。またここから、「とある」はずっと色付きなのでエース級なんだな、という見方も可能だったりします。
余談

  • 2003年で表紙が白地のシリーズは「護君」「シャナ」「悪魔のミカタ」「終わクロ」「いぬかみっ!」「桜色BUMP」(4巻目で方向転換)「イリア」(最終巻)「学校を出よう!」(3巻目で方向転換)「ワーズワースの放課後」(この年の2冊)「Hyper hybrid organization」(00シリーズは黒)「リバースエンド」(この年最終巻)の12作品です。これらの量は、その年の総量の4分の一しかありません。さらにこの内、3作品が2006年現在でも健在で、なおかつアニメ化しています。*1
    • 翻って2005年では、年総量の5分の二。しかも、総量が2003年より40位増えているので実数はもっといってます。この頃になりますと、白地以外の色が少しあったり、布だったりなど単純な白地じゃないのも増えてて、計測が極めて難しいです。ガイドライン欲しい。

 最後にid:kim-peaceさんに。
 [雑誌の住人]で昔こういうものがありましたよ、といってみます。
 後、最近は鈍ってますが、表紙イラストとか口絵を見れば大体わかります、自分。鎌部さんと荻窪さん辺りは癖がわかりやすいですし。たとえば、荻窪さんはカラーイラストの所で漫画はじめた最初の人(と、私が勝手に認識している。ちなみに一番最初はあちたろう「僕の血を吸わないで*2)だけあってビジュアルイメージにこだわりがあるようですし(「護君」が一番典型です)、鎌部さんは口絵キャラ紹介に本文引用をつける「ブギーポップ型」やその発展としてカラーイラストに短文をいれる今で言えば「キノ型」を*3作った、と私が勝手に思ってる人ですので、見れば大体わかったり。
 ためしに予言。書いてないですが、沖田雅「オオカミと七人の仲間たち」は、表紙で作者及び絵師の名前が帯の上に来るように設定されている、そして「帯を取ると」ネタが仕込まれている、デザイン者の名前が無い、の三点から、鎌部さんでまず間違いないでしょう。名前が帯より上、というのは既に壁井ユカコ姐「キーリ」でされていますし。*4
 にしても、「デュラララ!!×3」ではものすごく思い切ってヤスダスズヒトさん*5にやらせてマッキッキーにおいて、こっちでは典型的な「白地に女の子」かぁ。
<06・09・29再追記>
 調査しなおし、再考した結果、「オオカミさんと七人の仲間たち」のデザインは鎌部さんじゃなくて、荻窪さんではないか、という結論に至りました。
 実際どうなのかわからないとはいえ、よくよく調べなかった俺のバカ!
 去年一年分の調査をしたら大体勘を取り戻せそうな…。まだ担当編集までわかりませんけど。
 って、書いてみたら存外にうざったらしいな、私。オタは知識をひけらかす物というのは本当だ。
 次、このタイプの話をする時は「中盤戦:富士見ファンタジア文庫:はみだしの美学」とで名づけてやる公算はあんまりない。「えー」
<追記>
 いろいろと突っ込んでもらえたので、感謝だったり。やっぱり、本屋古本屋でじかの情報にあたるのを止めたらあかんな。

*1:逆説的にライトノベルのアニメ化は3年後という図式も考えられます。ハルヒもそうだし

*2:追記:ぎおらむさんのこれによると、先例あり。ただ、「爆裂」以降で漫画の形が確立した=より漫画に近い絵が選択されるようになったのは「僕血」から、とは言えそう。負け惜しみですが。

*3:電撃文庫で一番最初は、大体のあたりでいうと「ダークウィザード」だったきもしますが、普及したのはこれから、という考え

*4:追記:一応、可能性の比率は鎌部善彦:荻窪祐司が9:1位だとみてますけれど。「先輩とぼく。0」がカラーんとこで描かれてるのがなぁ

*5:ヤスダさんはデザイン上がりという事で、イラストが他の作品に比べて始点、構図、切り口などが異色なんですが、誰か語ってほしいなぁ「他力本願か」