- 作者: 島本和彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/02/05
- メディア: コミック
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見所。
少年ビックコミック!!
いやいや。
とうとう、島本和彦が、回顧に手を出したっ! 用心せい! という記念碑的作品です。とうとう、島本和彦が己の過去まで食い物にし始めたっ! 用心せいっ! という記念碑的作品です。本当に、時空を超えてあなたは一体何度、我々の前に立ちはだかってくるというのだ! 島本和彦!! 立ちはだかられてるのは私も初な気がしますが。
しかし、本当に凄いと言うかやけに実感のこもった言葉に彩られた漫画であります。
以下、主人公、焔燃の言霊。
俺も絵が下手だがこいつはもっともっと下手だ!! (P11)
俺はべつに手塚治虫とかちばてつやとか、 水島新司とかと戦おうっていうんじゃあないんです!! (P27)
ブライガーもOPとEDはすばらしいが―― 本編はアレだな! 見なくてもOKだな! ――しかし、このOPとEDがすばらしいために… 30分間、俺たちはTV前に拘束されるわけだな! (P37)
わかった! これだ! 見えた! カッコイイ絵柄でギャグをやるんだ。 これは新しい! 誰もまだやってないジャンル!! (P100)
この悔しさは、俺が自分で実写映画を撮る時に晴らしてやる! (P122)
内容としては80年代の漫画、アニメやそのほかオタ周辺状況を、いつものと言える島本和彦ノリでテンション高めに描いていくものです。80年代という20年以上昔の話なワケですが、オタの心境と言うのがこの頃から特に変化が無い、というかお前は俺かシチュエーションの宝庫で笑えばいいのか笑えばいいのか良く分からない一品に仕上げてきています。
中でもあるある、と思えるお前は俺か台詞。
かわいそうなあだち充…… こんなに俺にとっては面白いのに…… よし、俺だけは認めてやろう!! ちゃんと切りとってスクラップにしておくからな!! (P30)
今ならスクラップじゃなくてスキャンでしょうが、この「俺にとっては面白いのに」「俺だけは認めてやろう」という意味不明の不遜さというのは、今のヲタでも含有されている成分だと思いますがどうか。
で、終始そんな感じで進みますが、掲載誌の都合か新たな境地か、恋愛模様と言うか妙にモニョモニョとした片思いが話にスパイスを与えていたり、その対象であるトンコさんがみかみみか(らくえん)に見えて仕方なかったりするのが、妙に新鮮でした。こういう方向も描けるんだな島本和彦! と思ってみたり。
余談。
どこで見たか良く覚えてないのですが、数日前に確か「島本和彦はパロディに無自覚な天然」という素薔薇しいキーワードを見て慄然としたんですが、あれは一体なんだったのでしょうか。都市伝説?
そんなうろ覚えの言葉に対して私見を述べるなら、
なんだぁ……天然だぁ……天然にパロディが出来るわきゃねーーーーっ!!
ですよ。
そもそもパロディというのはその元となる物をある程度自分の中で理解していないと、表面をなぞるだけのものになってしまいがちではなかろうか、と思うので、思考が直行直帰な天然には出来ないジャンルといえます。
で、島本和彦が考えているという証左として、この巻の第4章で、いわゆる庵野ウルトラを解説する場面があげられます。
引用。
ハードルが高いんです! まず金が無くって(1)着ぐるみが作れない! (P113)
と何故ハードルが高いか順繰りに説明し、ひるがえって庵野ウルトラがどうやってそれらを乗り越えているかを話すんですが、これが実に良く考えていると言うか、良く分析していわけですよ。この分析力があって天然なんて事があろうか、いやない。と思うわけですが、はてさて。
皆「アオイホノオ」を読んで島本和彦を再認識すると良いと思う冬の朝でした。