感想 石川博品 『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

 大体の内容。ネルリ終了! 英雄達に衝撃が走った!
 ということで最終巻であります。泣いても、笑っても。今回もネルリの未来予知というかまあ占いによってドタバタして、レイチ君がレイチ訓というか単なる妄言虚言、ときおり世界観! 世界観! って言いたい瞬間もありますが、そういうの吐き連ね、ラブったり連ねすぎたりしてたら気がついたら事態が終わっていました。いつも通りだけど、この辺は以後の課題ですね、って何様顔してみちゃいますが、まあそれはそれ。
 話自体は今回もありやなしやってギリギリのラインのように感じてしまいましたが、架空世界の激烈な冬、というのを強く感じられたのは楽しかったです。トイレの件とか雪下ろしとか、ストーリー的な貢献度はまったくと言っていいほどないんですが、でも神は細部。こういう自然の驚異とそれに対する生活の動きなどがやけに良いのが『ネルリ』のもう一つの持ち味だったんだよなぁ。と思い起こして遠い目。*1
 それで、ここまったくどうでもいい話をすると、最後の方に至るにしたがって「終わっちゃうよー!」って希望と絶望の交錯する時間を体験してしまいました。なにこの読みたいのに読みたくないって心の機微。ああ、『ネルリ』の三年間、みたかったなー。これが語られてたら楽しかったんだろうなー。そして、最後は更にぐっと来ただろうなー。うっおー! くっあー! ざけんなーっ! もっと、もっと見せてくれよー! あー! 嘆いても仕方ないけど嘆かずにはいられない。もっと読みたかったよー! 終わりが近づくにつれ、本当にこの世界が閉じてしまう、いや実際閉じはしないんだけど、妄想の中だけ、「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」の世界に突入するのが、惜しくて仕方ない。もっと、開いていて欲しい。ああー。
 総じて、レイチ君の妄言が気に入らないと、それが基本的な部分、根幹なのでまったくピンと来ない小説だったと思いますが、それ以外の部分も評価できるゆえに、石川せんせの次回作を待たずにはいられないのでありました。
一巻感想)(二巻感想

*1:一つ目は当然レイチ君の自重しない妄言ですが