感想 高遠るい 『鉄漫 TEKKEN COMIC 1』

鉄漫-TEKKEN COMIC- 1 (ヤングジャンプコミックス)

鉄漫-TEKKEN COMIC- 1 (ヤングジャンプコミックス)

 大体の内容。「鉄拳、納得のコミカライズ」。
 キャラが一部独自解釈されて*1いるように見えますが、そもそも『鉄拳』というゲームってのは、吉光やらJACKやらクゥマやらのキャラが異常だとか、浮かしたらほぼ勝利出来るという無茶なバランス*2とか、一八と平八の分かりやす過ぎてちょっとおかしい確執の結末とか、どちらかと言わなくてもバカゲーに近いゲームだった*3わけで、それがいつの間にかスタンダードの面して我々の前にいるだけに、その昔の味付けの方、バカっぽいところを見せるこのコラボは、むしろ正しい選択だったのではなかろうか、と思わせてくれます。
 それにしても、ってことで全くどうでもいい話をすると、鉄拳も何度目かのコミカライズですが、今回担当漫画家が高遠るいせんせだったのが、何というか縁を感じるなあ、という感想を持ってしまいます。
 漫画というものには、大なり小なりの嘘が存在するわけですが、特に格闘漫画は嘘の去就で見た目、はっきり言えば派手さが変わってくる、特に嘘の重要なジャンル。その嘘 の吐き方においては、高遠るいせんせはいっぱし以上の嘘吐きである、というのが代表作『シンシア・ザ・ミッション』から分かることであります。
 大体の場合、嘘を吐く時というのは、一度吐いた嘘を最後まで糊口するのか、ある程度糊口出来ないと割り切るか。そういう部分をどうにかせねばならないわけですが、高遠るいせんせの場合は基本前者の立場。『シンシア』では少女暗殺者、という大きな嘘を、リアリティを含んだ嘘で固めて成り立たせていました。
 これがたとえば後者の立場、つまりある程度嘘がばれるのを割り切る立場の作品であるイダタツヒコ美女で野獣*4ならば、暗殺業務には踏み込まず、言質だけで押す方向を取っていただろう、とは勝手に邪推、ではなく実際、あるキャラの父が凶手だった、という話があった延長線上で、そのキャラがパワーアップをしていたりします。
 さておき。
 そういうわけで基本、嘘を吐くなら全力疾走で、最終的に1兆度にたどりついたのが、高遠るいせんせの嘘の吐き方なわけですが、その辺、最初に吐いた嘘を現在まで押し進めた結果、親子による財閥内部抗争から世界に宣戦布告まで到達してしまった『鉄拳』とは、相性抜群だったんだろうなあ、と考えたのでありました。

*1:シャオユウもたいがいですが、特にリリが、リリが。お前誰だレベルのアーパー。あれ、実際にこんなだったっけ? でも、このリリお嬢様も、いいかもしれない

*2:特に1はお手軽に即死出来すぎ

*3:そんな中でJACKのエンディングとかのシリアスさとかもあるから、対処に困るんですが。あれも後々にちゃんと繋がってしまうから、更に困る。

*4:これが同時代だったのが、ある意味で『シンシア』の不運であり、幸運だったのですが、それはまた別の話。