感想 中村九郎 『曲矢さんのエア彼氏 3 木村君の電撃結婚』

曲矢さんのエア彼氏 3 (ガガガ文庫)

曲矢さんのエア彼氏 3 (ガガガ文庫)

 内容を要約すると、「木村君の別れと再会」。相変わらず、なんともせつない恋物語を書いてしまう人でありますな、中村九郎先生は、というくらいに木村君の別れと再会の部分は安心の中九印でありました。杏子……。って感慨を得るには十分な、美を感じます。きっちり終わると途端に綺麗だよなぁ。1,2巻の終わり方とは何だったのか、とも問いかけたくなりますけれど、でも今回は綺麗に終わりました。最終巻っぽいですけれども。
 それだけなら綺麗な話でしたね、で済みますが、問題は当然、このシリーズの問題児であった曲矢サンノです。今回も歪みがないというか、歪みすぎてむしろまっすぐにしか見えないレベルで歪んでしまっておられます。正直、こいつが近くに居たら嫌どころじゃないな、と思わせる今局所で流行りの残念すら超えた何かです。
 今回の件も、ほとんど関係ない自分のエアプレイの為だけに木村君から小沢にね子、及び自分の妄想の産物である巽すら有効に活用するしたたかというか自己中を発揮しており、正直こいつ……。って感じですが、でも、なんとなくそれの過程で解決しちゃったから始末におけない。まあ、話が変になっていく原因、つまり話の芯部分が曲矢さんの力によってる部分があるので、曲矢さんはおかしくおかしくないといけないんですが、それでもやはり限度と言うものがあり、登場するタイミングタイミングで全く感情移入できないわけで、それがいい加減に至福を感じるようになってしまいました。次の巻とかなさそうですが、曲矢さんだけでスピンオフ的な何かってないだろうか。でも、ツッコミと他の一人称主体がいないと、曲矢さん主体では中身にたぶん全く共感できないから、面白くないだろうなぁ。ツッコミと一人称主体である木村君がいるから、全くわからんということが出来たわけだし。
 でも、それでも、もうちょっと曲矢さんの活躍と言うか電波的な活動が見たい。エア騎馬隊とかの話も、どうするのか見たいなあ。そして曲矢さんにパワー系ツッコミ、物理力のツッコミが入ったらどうなるか、みてもみたい。そんな思いを持つのでありました。というか、うきさんがイラスト力を全開にしてるから、続きは無いんだろうなあ。