感想 せがわまさき 『山風短 1 くの一紅騎兵』

山風短(1) くノ一紅騎兵 (KCデラックス)

山風短(1) くノ一紅騎兵 (KCデラックス)

 大体の内容。「奇想天外! よりもいい味を出す親父群の顔」。基本的に凄い無茶な話で、ゆえに一転二転と奇想が転がっていくのが見ていて楽しい作品であり、そこは確実に見所なわけですが、それよりも見所としてあるのが、出てくる面々のいい親父面。俗に言うイイ顔親父というやつで、とにかく美男ではないけど、とても味のある、つまりはせがわまさき作画のイイ顔有象無象がだだ出てくるのがこの漫画のもう一つの妙味。ちょい役からそこそこ出番のある人物まで、本当にいい顔の親父達が乱れ咲きでありまして、正直に申しますと、ずっとこのイイ顔を見ていたいなーと思ってしまいました。画像である漫画において、文章のものをどう映像化するか、特に男のおっさんばかりになる戦国物で、という部分をこうやってイイ顔でフォローする、というのは目から鱗というか、きれいなしゃっ面だけが顔じゃないよな、と、とても納得出来るものでした。その中でも比較的多く出てくる上杉忠臣も、最初の出番以降ほとんど基本の筋に関連してこないのがマジで惜しい顔持ちでした。でも、最後に出てくる関ヶ原以降の行く末がきっちり全員分語られる辺りは、ちゃんと出したならばその落とし前として、ちゃんと語らなければならない。という書き手としての筋の通し方を感じずには居られませんでした。でも、ほとんど点つきで意味深にしつつ「伝えられている」、という書き方になっており、読者が一時でも知った人の結末を読者の想像に任せている、というのがまた、なんとも心地よく感じてしまいました。このイイ顔親父達が、簡単に討ち死にして欲しくないと思った自分は、後もどこかで生きていたんだろうなあ、と思うことにしたのでありました。
 とかなんとか。