感想 橙乃ままれ 『まおゆう 魔王勇者 1』

 内容を要約すると、「それは世界革新の足音」。序盤から基本そういう話ですが、最後の方になってそれがもっと具体的に、支配構造にすら影響する話となり始めて、その端緒となる演説で震えるものがありましたよ。ここでこいつが出張るのかよ! これが、二列目三列目…っ! と感動でした。二列目三列目の話の意味が分からない向きは買い読み必須ですよ? 基本的にどういう作品であるか、の解説も桝田さんがきっちりとされているので、そこだけの為に買う、というのは、いや、無いか。というか、その部分で大体の事が書かれているので、あえて自分が感想として書く事がないですよ。それくらいきっちりとした解説なわけですけれども。
 ならば、という事でキャラ語りに移るのが二十一世紀オタとしての面目が躍如る所ですが、魔王と勇者の仲というのが煮え切らないのが素晴らしい。やっぱり愛は直ぐに煮え煮えるよりはじっくりコトコト煮込んだ方がよろしいですよね。その距離感が、台詞だけという基礎とあいまって、なんともこちらの想像を駆り立てる仕様となっております。動作、仕草がほとんど分からないからこそ、見開かれる次元、というものが確かにあるというのを感じさせてくれます。単に自分の想像スキルがそれなりである、という事の証左なだけかもしれませんが、それはそれでどうでもいいです!
 さておき。
 この巻での名シーンは最初の魔王が勇者を篭絡(語弊)する所、メイド姉が魔王の姿で大演説ぶるところ、そして女騎士が剣を捧げる場所でしょう。特に女騎士が捧げる所は女騎士の不器用さがこうころがるのか!と思わされる、すこぶる付きの名シーンです。自分が自分が、ではない所、進みたいけど進めない、でも進まなければならない、押しのけてでも。でも、いい人なのでそこをどうしても割り切れない。そういうのを感じてしまいました。女騎士いい人過ぎて不遇すぎる…。
 さておき。
 ここからどうでもいい自分語りを話しますが、『まおゆう』、巷で話題になっていると天邪鬼になって無視してしまうスキルが発動して、ネット上にあるのに見るのをためらっておりましたが、この書籍化には何故か食いつきました。主に好きな人である桝田さんが絡んでいる、という事実が非常にピンときたというか、桝田さんが絡むんならそれは楽しいに違いない、という謎の信頼が発動した為と思われます。で、実際面白い事になったので、その信頼が当たっていて、また信頼に足る事が再度発覚したので、大層嬉しくなりました。しかし、そういう事がなければ、この本を手に取っていたか、と思うと、無いかなあ、と思うだけに、こうやって著名な人が絡んでいく、というのは大事な事なんだなあ、とも思いましたとさ。あー、早く続き読みたい。←いきなり話が変わりすぎ