感想 虚淵玄 『ブラック・ラグーン 2 罪深き魔術師の哀歌』

ブラック・ラグーン 2 (ガガガ文庫)

ブラック・ラグーン 2 (ガガガ文庫)

 内容を要約すると、『エダさん一人相撲。あるいは魔術師還ったり還らなかったり』。エダさん、自分の真の身分絡みでの面倒な仕事だったってのもありますが、絡む相手がよりにもよってあの“魔術師”、つまりロットン・ザ・ウィザードだったのが最悪の運の尽き。結局一人相撲、あるいは大山鳴動して鼠一匹という体たらくになるわけですが、それゆえにもっともマシなエンディングだったので、ここはエダさんが痛飲しなくてはならなくなった事を、全く運が無かったですね、と言う顔でお見送りしたいと思います。エダさんの望むエンディングだと、ホント救いが無いですからねえ…。そしてこの場合、それをしようとしたら確実に漫画の方に影響が出てしまい、誰にとっても得にならない事になってしまうので、このエンドでよかったんですよ。うん。
 さておき。
 今回は視点がころころ入れ替わるタイプの話でしたが、普段心情の見えないキャラの心情にまで踏み込んだのがこの巻の大きい一歩。この話のメイン格であるエダやロットンから、バラライカやら張の旦那、更にはダッチまでという幅の広さと、そのキャラらしいと納得の語り口で魅せてくれます。正直、別人が作ってる話なのにここまでそのキャラらしいと感じさせてくれるのは豪腕以外の何者でもないですが、そんな中で一番納得だったのがロットンという凄まじさ。単行本での総登場コマ20コマいかないはずのロットンをここまで納得のキャラに仕立て上げる様は素直に脱毛――帽子と一緒に毛が抜けるレベルで恐れ入る――です。あいつが銃を抜いても撃たない、という理由付け、今回ので確実に漫画の方にフィードバックされるんだろうなあ。あまりにロットン・ザ・ウィザードらしすぎて納得する以外の行動が出来ないレベルの理由は、是非読んで脱毛していただきたい所です。
 さておき。
 そんなキャラによる語りによる進行が随所に見られるというかメインの作品ですが、そんな中にあって全く出番が回ってこないのが、なんとロック。今回は一気に状況の深度に食い込むんですが、それでも周りから色々語られるものの、自分の言葉で語る事がありませんでした。普段、というか漫画版がロック主体である事から鑑みても、結構異端な流れではなかったかと思います。まあ、最近の漫画版のロックも得体が知れなくなってますし、その得体の知れなさを、いろんな人が語るのもこの小説の面白さではありますけれども。さて、自分で語ってたら、一体どういう事を言ったのか、は気になりますが、それはまたいつかの機会に頼みましょう。
 さておき。
 キャラ話をするとエダさん大変だったね、と、ロットンマジ良くわからないね、というのが主な回ではありますが、もっとも美味しい所を持っていったのは勿論あいつ。あまりにも美味し過ぎて爆笑せざるを得ませんでしたよ。もう、全力でお前かよ! って言ってしまいました。そして最後の挿絵の破壊力の高さといったら! 気になる方には是非、予断無く読んでいただきたい所であります。