感想 もずや紫 『ラノベ部 1』

ラノベ部 1巻 (ガムコミックスプラス)

ラノベ部 1巻 (ガムコミックスプラス)

 大体の内容。「そんな私達のラノベライフ」。なんかラノベライフが断片的だなあ、って感じもしますが、元が断片的なんだからその漫画化が断片的にならないわけが無かろうよ、という言を発していきたいと思います。そして、GUM誌ではその断片的なのが一種のフレーバー、週チャン的に言えばイカ娘ポジな印象を与えているんだろうなあ、ってのも思わないでもないです。そんな箸休めな物の集積。それがこの一巻なのです!
 さておき。
 内容の方は原作『ラノベ部』に忠実、軽小説部ことラノベ部に集まる人の徒然掌編集という体で、色々と平凡な日常がある、というものです。所謂日常系の系列としては順当な位置づけにある元ネタをきっちり維持というか、基本的に非常に出来ておる喃なコミカライズ、という印象がまずあります。巻末コメントで平坂読せんせが戦慄するのもむべなるかな、といいますか。
 こういうコミカライズは原作の空気をどこまで表現できるか、そして漫画家の独自性が何処まで出せるか、がキー・オブ・ザ・グッドテイスト。その観点で見ますと、原作の空気は「あれ、これが原作だっけ?」と言う高いレベルの『ラノベ部』ノリ。『ラノベ部』原作を読んだ人はそのノリの維持っぷりに正直驚愕だと思います。そしてこっちから原作読む人は原作の空気が漫画ママという事実に正直驚愕になるでしょう。その位、原作の味わいをしっかりと掴んだ作品であります。暦の勧誘パートとか、文香が自分で本買おうとする辺りとか、原作で感じたなんとも言い様がないくすぐったさを再度感じれた、というのは原作の空気を必要十二分に出したわけであり、その辺りは本気で正直驚愕でしたよ。
 そしてもう一方の独自性についてで言えば、細かい所作さえ絵として出せるという漫画としての利点を最大限利用して、たとえば文章では表し辛い暦の赤面性を端々で見せてくれたり、萌え転がる綾の絵を絶妙の崩し方で見せてくれたり、“あの”リレー小説をがっつりと描き分けてくれたり、としっかりとした足腰で魅せてくれます。この辺の味付け、魅せ方もまさしく漫画家独自の色であり、ゆえに、そっちも高いレベルでまとまっていると言えましょう。キャラの描き分けがやや、特に暦と美咲がぱっと絵だけ見ると……、というのが弱点として挙げられるかもしれませんが、『ラノベ部』は一人一人キャラ立っており、それを十分に活かしている漫画ゆえに、慣れてくれば何も問題なく見分けられるようになります。この辺も凄いなあ、と。
 漫画として絵で動くキャラを見るようになって思うのは、先にも書いた暦の赤面性可愛いなあ、というのと、美咲が思った以上に可愛い感じだなあ、そして文香が不思議空気出しすぎだけど、女の子なんだなあ、という事でしょうか。特に美咲は原作版では最初の絵の印象が先行して、可愛いって感じを受けた覚えが無かったんですが、この漫画だと絵と行動のおかげで美少女力が高まっておられ、ぶっちゃけ龍君が色々混乱したのもむべなるかなあ、というか。告白が上手くいかないでポしゃった辺りとか、なんというか哀愁がいい具合で…。後、綾が美人だけど残念すぎるのもクローズアップされたような。こんなに残念美人だったっけ、綾。ってやっぱり戦慄してしまいました。まあ、残念だったけど、実際に絵としてあると本当に残念なんだな…。て理解しやすいというか。コミカライズの勝利ですなっ。
 という事で、かなりレベルの高いコミカライズで、原作読んだ方にも、未読なライトノベル読者の方にも、安全ですよ! って笑顔でサムズアップ!