感想 鈴城芹 『家族ゲーム 8』

 大体の内容。「真言の焦れ焦れは色んな意味で仕方ない」。
 今回は前巻において西浦への恋心を自覚した真言が、それを爆裂させるのは大学に合格してから、という枷を自ら嵌め、それまでは今まで通りで行こうという事にして、それをこの巻で実行するわけですが、実は超らぶいのにそれを押し殺しておかないといけない、というので色々大変な状態に。
 メールでそっけない文どうやって書くよ、とか、実は思い人として待ち伏せしてみたり、とか、とにかく真言がこんないじらしいのなんて嘘だそんな事ー! と今まで『家族ゲーム』を読んできたクラスタからしたらそんな叫び声を上げるのも致し方ない様を見せ付けてくれます。
 特に、ゲーム買ってもらってありがとう、をあしらわれてしまって上手く伝えられない時の真言の心境などは察して余りある物があり、というか、あまりに切なく、それが今までのツケだとはいえ、ああ、この子にはいい目を見てもらいたいなあ、と思ってしまいます。が、それ以上に、西浦にいい目に見てももらいたいなあ、のが強かったりします。だって足掛け6年近くも片想いですよ、西浦。今まではそれが叶う時が来るのか? という疑念が強かったのが、ここに来て成就の芽が出て来たんですよ? それなら応援してやるしかないでしょう。西浦、後ちょっとだ。ガンガレ、超ガンガレ。
 さておき。
 『家族ゲーム』の妙はらぶい所だけではありません。いやらぶい所も多い、特に今巻は葵と悟がらぶを地味に積み上げて手の平キスまで行ったり、尚武がぴよちゃんをとうとう嫁に貰ったりなどターニングポイントが結構あるんですが、それでもそれだけではなく、らぶ一歩手前とか、もう完全にらぶとか、らぶいとはまた違った、いうなれば進行度の違うらぶが混在してるのが見所であったりするわけです。ぴよちゃんが温水家に完全に馴染んだり、ぴよちゃん家と温水家が顔合わせたら由寿がぴよ父にぐらっときたり、紫杏と宇藤君の微妙な関係を維持したり、永妙寺さんがいい加減犯罪臭すらするショタらぶだったり、由寿のコスでハァハァする子がいたり、こずえさんが鎌田姓を既に名乗ったり、というのが渾然一体となっているのが、良いわけですよ。色んな家族の形、とでも言いましょうか。まだ家族になってないけど、いずれなるだろう、というのも含めての、家族の形。由寿ハァハァは流石に家族にならないですが!
 さておき。
 ゆきえさん好きーなワタクシとしては、今回のゆきえさんは第57話の昔のきりりおかんな所が可愛いのと、征爾さんをらぶの力で長生きさせちゃる! という描き下ろしがエロいのでマスト。きりりおかんはマジ出来る女の薫りであり、そこに痺れる憧れる。誰かの嫁になってもらいたい。ああ、征爾さんの嫁か。その状態、イエスだね!
 らぶの力で長生きさせちゃる発言は熟年バカップルの面目躍如というか、もうなんかめっちゃエロス!((c)佐天さん)なんですけどマジで! どうするの、どうしちゃうの、どうなっちゃうの!←落ち着け
 でも、最近の出番が確実に娘達に奪われているゆきえさんですが、だからこそ出てくる場面では印象を残してくれます。というか印象に残してます。子供が万引きしたら、の部分はやや引くレベルの苛烈さですが、それもまた魅力ではあります。きっちりしている、とでもいいますか。そういう所もいいですよ、やっぱり。
 そんなわけで、らぶいのもらぶ未満もらぶ全開も十分に含有された、いい巻だったと思います。次の巻は真言が爆裂するので、目ン玉かっぽじって待て! …出るよね?