感想 阿部広樹 箭本進一 多根清史 『超クソゲー 1+2』

超クソゲー1+2

超クソゲー1+2

 惹句をつけると『クソゲー本ブームの開祖、ここに帰還!』。
 今時クソゲーというと2chクソゲーオブザイヤーが有名にして頂点の趣がありますが今から十数年前にはまだそれ、クソゲーオブザイヤーは存在しておりませんでした。インターネットは既に存在感を持ち、色んなサイトがクソゲーについて書いていたりするものの、大きなくくりでクソゲーを語る存在、というものはありませんでした、たぶん。記憶だけで書いてるのでちょっとニュアンス違うかもしれませんが、その辺は気にするな!←いい加減
 さておき、そんな中でクソゲーと言うものを激烈にフューチャーした本が登場しました。それが『超クソゲー』です。クソゲーをただのクソとして扱う、金の無駄に対する怒りでこき下ろすというのではなく、そういう物をそういうモノとして処理する、楽しむ。そういうゲームに対する新しい楽しみ方の提示がそこでなされました。そして、それは大当たり。以後雨後の筍状態!でクソゲー奇ゲーを語る本がわらわらと湧いて出る、その楽しみ方がある程度の尺を持つ事になります。そこから『超クソゲー2』が生まれてブームは頂点を極め、その流れで『CONTINUE』が生まれて一部に強い訴求力を持ち、日本の文化シーンの一部の少量のニッチな層が形成され、今も地味ながらもあちこちでその残り香が香ったりしてますがそれはまた別の話。
 そんなクソゲー語りのテンプレート生成に一助をした本の、リバイバルというか一応のまとめというのが本作『1+2』であります。まとめなら内容同じだろ? という既に読んだ事のある方なら思う疑問に対しては、まったくもってその通りです! というのが口に出そうになりますが、そこはぐっと飲みこんでこういいましょう。「ちょっと違う、かもよ?」。
 中身といたしましては、インタビュー記事が他の媒体でやった奴と、完全新作があったり、大須めぐり話やバーチャルボーイの話とかときメモ話などはなくなっていたりと結構違います。完全新作インタビューは『いっきおんらいん』のもので、話の中で明らかになるサン電子の凄い所とか結構記憶しておいて良いレベル。もう一つのインタビューは『燃えプロ』を作った人。これはおおらかなゲーム黎明期の風を感じれるものでした。
 最大の中身であるクソゲー紹介は一部改訂があったり、そのままだったりとほぼ間違いを探せ!状態。でも、ほぼ見た事がある人には見た事がある内容だと思っていただいて結構です。自分としましては、未だに『1』も『2』も保有したまま、『CONTINUE』もゲーム中心の頃のを保有したまま、というヘビのヘビーユーザー程度のヘビーユーザーですので、違いも大体分かりましたが、それでも懐かしく楽しめるのは元が良いからだな、とか勝手に礼賛してみたい出来。
 ですが正直、そうでなければ買うのはやや躊躇が必要だと思います。それでも買う、くらいの覚悟はいるでしょう。しかし、いままで見たことが無い御仁で、クソゲーという現象が好きな方には、これがクソゲー語り初期の味わいなんですよ? と朗らかな笑みでオススメしてみたい、という気はします。そして、十分に惹きこんで今月中に出る『3』を手に取らせる事が出来るだろう。それぐらいに良いトコ取りの紹介の集まりです。まあ、一部熱量と言うか語りがいまいち、って思うのもありますが、それもまた自分の成長によるものだ、と思って不問にしておきたいと思います。新作の『3』ではその辺がどうにかなっているといいなあ。