感想 耳目口司 『丘ルトロジック 3 女郎花萩のオラトリオ』

 内容を要約すると「萩先輩とサドマゾのキョウソウ曲」。お話の方は今回も大山鳴動しての類でありますが、しかし事情が事情なのでそりゃ鳴動するわな、という感想を持ってみたり。今までの色々しながら派生で、ではなく一つの事に集中してのパターンは初めてだったので、どう転ぶかとウハウハしていたら意外と上手く回っておられた、という感想も持ちましたよ。意外、というと失礼かもしれませんが、何せ初パターンですからね、何が起きるかと思うじゃないですか。にしてもホント色々無茶だよな、この話の世界。それって可能な話なの? っていうのがなんのてらいもなく存在するから困る。今回の登場人物さんの特殊能力とか、え、マジでありなの? って感じだったし。まあ、篠原さんがいる段階でもう何が起きてもおかしくないし、そこが無茶なのがいいのだけれど、たまに無茶すぎると引いた視線を持ってしまう。まあ、そこが無茶なのがいいのだけれど。
 さておき、今回は最終的には意味ありげなのに意味の無い闘争となったわけですが、それでも最後にはこの話が持つ無茶な所が十分に発揮しておられたので、継続してみていくに値するなあ、という上からの目線を持つ事は出来ました。やっぱり青春は爆発しないとね! と謎の感想が口をついたり。二巻がなんとなく尻すぼみなスケールだったのとは対照的とも言える、なかなか派手な展開でありました。ていうか、これで人死出てないとかの方が無茶だよな…。
 キャラ話すると今回のメインヒロイン格の新キャラさんよりも、壊れ部分が明確になった萩先輩よりも、江西陀=サンの話がしたくなるのはこの小説の基本的な選択ですが、にしても今回の江西陀=サンはほとんど出番無いのに最後の最後でおいしいところ全部持っていき過ぎです。ぶっちゃけ新キャラとか萩先輩おかどうでもいいですよ、この江西陀=サンの行動に比べたら! というかホントに江西陀=サンのヒロイン力高まり過ぎており、それが発揮されるラスト部分だけでこの一冊にほぼ丸々出てなかった事を不問にするどころか、それをエッセンスとして最後に際立たせた手腕を褒めちぎり投げてしまいたいくらいです。つか咲丘の為に弁当作っただけだってのにカワイイ過ぎるだろ江西陀=サン! 作りすぎた、とか嘘ついちゃってまあ。でもそうしないと食ってくれないだろうなあ、という咲丘への理解があるんだろなあ。いきなり食ってくれ、じゃ食わないだろうし、江西陀=サン的にもいきなりその領域はちょっとだなー、とか考えたんだろうなあ。しかし、料理の手ほどきを清宮に頼む辺りが咲丘攻略をちゃんと考えている証左。清宮の料理をうまうま食うなら、その味に到達すれば良いじゃない! という勝利の鍵をちゃんと狙う江西陀=サンマジクレーバー。なのに食ってくれとは言わない、奥床しいのか何か負けた気分になるからなのかよく分からない辺りがたまりません。うん、いいシーンだ。にしても、今までイラスト部分は味がある、という微妙評価だったのにこの巻の最後の江西陀=サンだけで評価が鰻上りし過ぎて評価が“優”とかを越えて“龍”になってしまった感すらある。この江西陀=サン実際カワイイ! いいなあ、この江西陀=サン! 咲丘爆発しろ! いやあ、良いもの見たなあ。