感想 よしむらかな 『あわちゅーぶ 1』

あわーちゅーぶ (1) (まんがタイムKRコミックス)

あわーちゅーぶ (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「イツキ、飛ぶ!」。飛ぶより跳ぶだろ常識的に考えて…。と思われる向きも多いでしょうが、イツキが色々常識を超過する様は飛ぶの方がしっくりくるのです。そんなガチ百合っ子がその類稀過ぎて異能者レベルの身体能力をあまり活かさず友達ラブ達とWasshoi!する漫画。それが『あわちゅーぶ』なのです!
 そう言っても意味が分からないでしょうからどういう漫画かもう少し詳しく説明すると、主人公格である無茶百合っ子イツキが女の子達とあれやこれやと遊んだり遊んだり身体測定したり遊んだりするだけの漫画です。つまり基本フォーマットはきらら系の基礎“女の子カワイイヤッター!”に掲載誌きららMAXの暗黙了解“百合”をぶっこんだ、という見た目完全に狙ってる漫画だこれー! なわけですが、それでも埋没はしないだけのポテンシャルとして、百合がガチ過ぎる、という側面とそれよりなんかアクション的な動きをしてる場合が多い、という側面があります。
 ガチ百合度はかなり高く、基本的に男子全くノー登場の女の人ハーレム漫画なのと主人公格のイツキの女の子好き度がかなりのものなのが合わさって、もうほとんどレズ物って言った方が良いんじゃないのか。という位の位相にいたりします。いや、どうあれば百合で、どうあればレズか、の線引きいまいち理解してないで言ってますが。でも百合にある精神性よりもレズにある身体性の方が強い漫画ではあるよな、とか思うんですよ。「遠きにありて思うもの」ではなく「遠きにあれば近寄るまで!」という、雄度の高い物があると言いますか。なんか肉食獣的なんですよね、イツキ。ハーレム作りたい欲求がある、とまではいかないでも、親しき仲ならもっと親しくなっても良いじゃない! という欲のあり方があるように見えるわけですよ。女の子大好き、がやや行き過ぎと言うのかしらねえ、これは。
 アクション面は結構ハードというか、むしろもう人外の域。基本的にイツキがもっとも動くポゼッションで、ゲスト一回目の時点でポールと学校の外壁を使った三角飛びで屋上までマッハという無茶苦茶な身体能力を見せていたりしますが、その後もその超身体能力は自重せず、折に触れてその力を見せ付けてきたりします。この辺の動きを定点カメラ的に変なアングルで描いてくれるので、大変印象的な絵があったりするのも、この漫画の良い部分ではあります。ややトリッキー過ぎるカメラが多いのが難ですが、でもそれだから印象には残るわけで。というか、普通のカメラではイツキは追えない、という視点でのカメラなら、それはそれでありなのかもしれません。
 さておき。
 ここまでがっつり書いておきながら、実はこの漫画は自分は大変好きだけど他人にはお勧め出来ない、と思っていたりします。実際問題、ライト百合というよりレズっぽい所とか、印象的だけど荒いカメラ遣いとか、好みの問題ではあるので好む人は好むでしょうが、それ以外の基礎となるそれで何をする、という段があまりぱっとしない印象なのです。これだけ無茶な事が出来る子を投入していて、実際無茶してるんだけど、でもあまりに無茶が出来すぎるがゆえに逆にこれ位は出来るよな、て予断が出来てしまうんですよ。だから無茶があんまり無茶に見えず凡庸にあるように見える。その凡庸に写る事が、無茶さとバランス取れてないような。そんな風に思えます。後、イツキが目立ちすぎる為に他のキャラが映えないというか。セツカさんとかまだまだいけるポテンシャルありそうなのに、今はそれ程でもない感じ。その辺が強化されて、イツキに比類するキャラになれば、また印象が変わってきそうなんですが…。でも、動きのある絵、映える絵というのはこういうものだ、という感じの絵柄と描き方、魅せ方は上手いなあとは思います。小ネタの仕込みも地味ながら白を埋めたいという欲求を感じずにはいられないものがあり、その辺も評価はしたいと思います。面白さに対する貢献度は低いですが…。
 あ、深海生物萌え化漫画である『アビスライフ』は久しぶりに見るとこれはこれで完成度高いなあ、とか思いました。一話以上続けられるネタではないという気もしますが、それゆえに一回で燃焼しつくした感じが好きですよ。
 とかなんとか。