感想 もずや紫 『ラノベ部 2』

ラノベ部 2巻 (ガムコミックスプラス)

ラノベ部 2巻 (ガムコミックスプラス)

 大体の内容。「今日もラノベ部は平和です」。原作が元より掌編の連続だったのが、この連載に良い働きを与えてるのは論を待ちませんが、それにしたってこの小気味よさ。元より締まった尺に対して無駄の無いコミカライズっぷりを見せ付けてくれます。そのタイトっぷり、イエスだね! 漫画として絵で見せるという事がどういう事か、というのを理解したタイトさとでも言いましょうか。間延びせずかっつりとしてるんだよなあ。
 さておき。
 今回も原作のノリを維持しつつ、もずや紫絵のエロい尻ラインや表情などで目を引きつつ、しかしやっぱり軽いノリをメインに据えての妙な青春の一ページが紡がれております。青春にしたって何も無いがあり過ぎだろうって? そんななんでもないような事が幸せだと思うものなんですよ! というか、青春だなっていうタイムというのは実際はそう長いものではなく、こういうだらだらとした時間だってあったはずなのです。そういうのがあったなあ。そんな思い出をなんとなく喚起するのもまた、ある種青春物と言えるのではないでしょうか。ごめん、言えるのではないでしょうかって言いたかっただけだ!
 さておき。
 この巻では原作一巻最後の“暫定的エピローグ”が中程に来るというちょっと勿体無い作りになっている点を除けば、どれも見事なただただ普通の事の話だと感心出来る仕上がりとなっております。普通な事って、大変素晴らしいんだな、というかなんというか。ノー波乱ばかりが人生ではないけど、でも大体はノー波乱だよなあ、という感慨にも似たものをもたらしてくれましたよ。日常系という言葉のよしあしは俺はどっちでもいいけど、でもそういうものが簡単に否定される風潮には反対したい。そういうのの素晴らしさとは、自分達の日常にすらそういう楽しさが眠っているという事を喚起してくれるんですよスピス(鼻息荒)! と言いたくなる位にはただの日常なのが、『ラノベ部』の一側面です。
 さておき。
 この巻の白眉は当然リレー小説の話“鳳凰寺紅蓮最後の戦い”であります。小説の書き手に寄って絵柄や演出面を変えるのは前も同じでしたが、今回は更に細かいネタ、例えば暦が話を締める段で所謂ソードマスターヤマトの最後のコマの構図を丸々と使ってるとか、の仕込みもばっちりでよくもまあ、前回のリレー小説もそうですが、こんな難物をよくもまあ漫画として楽しめる仕上がりにしてるなあと感心することばかりです。
 他の話では綾の危険性をきっちり漫画にして楽しませてくれる“勉強会”と以後の話で龍君を理解する上で重要になってくる“電撃的な彼女”が良かったと思います。“勉強会”では、無茶な妄想を爆裂させて周りをナチュラルに引かせていた綾の扇の文字が、衝撃的だったあの「クエン酸の構造式のエロさは異常」から短いながら強力なセンテンス「数学は鬼畜攻」になって、文字が小さくなりすぎないようにという配慮を感じたり。“電撃的な彼女”では美咲の普段の野暮ったさっぷりに感動すら覚えたりしましたよ。眼鏡&髪上げだけであれだけ野暮ったいとは…。そして家に堂々と入ってくる女の子と言うものをリアルに獲得している龍君に爆発しろという呪いの言葉を投げかけたくなりました。映像になるともっと爆発しろ感が増すんですな…。しかし、龍君はこれから更に爆発しなければならない事例を抱え込む事になるので、まだだ、まだ死ぬな。←元より死にません
 漫画一巻目も良かったですが、二巻目も違わず面白い仕上がりになっていたと思います。なのでライトノベル良く分からん、という方にでも問題なくオススメ出来る漫画なのではないか。そう思いました。珍しく自分が好き過ぎるけど薦められる漫画だよなあ、『ラノベ部』。