感想 氷川へきる 『ぱにぽに 17』

 大体の内容「ベッキーよ、さらば」。基本最終回ばかりだこれー! という最終回詰め合わせという意味不明の展開で終わりを告げてくれます、『ぱにぽに』です。最終回詰め合わせってなんだよ、という向きには、本当に最終回が詰め合わせてあるんだよ! あれも最終回、これも最終回、そして俺達への最終回。とにかくこれで最終回で問題ないよな、というのが連打連撃されており、終わっても終わっても続いてるという事態に直面して、あれ、このまま最終回のままずっと続けられるんじゃね? という錯覚すら起こさせられる、そんな最終巻となりました。この最終回乱打を見れば見るほど、『ぱにぽに』って連載を重ねる毎に柔軟な足腰を得ていっていたのだなあ、という感慨に耽れます。どこで終わっても問題ない、というのはつまりそれだけその回で『ぱにぽに』エッセンスが駄々漏れしていたという事であり、そしてそれがこんなにも駄々漏れなのに何度も出来るというのは、本当に足腰しっかりしてたんだなあ、とかなんとか勝手に思ってしまいますのことよ。
 さておき。
 そんな最終回せつなさみだれうちの中で良かった回を挙げよ、称揚せよ、という電波様にお答えすると、仮装チャリティーイベント回がわりとマスト。いつものイベント回らしい立ち上がりから、なんかあるような感じになりつつ、しかし最後は“ルーレット☆ルーレット”というなんとも締まった構成。『ぱにぽに』のイベント回の集大成と言える見事なグッジョブでありました。後、都の進路がどんどん気になるけどさらりだったり、一条さんのディオニス王の高慢さがあまりにMっ気を刺激される物だったり、生徒会頭おかしいと思わされたりと、細かい局面も見事なグッジョブでした。マジ今までのイベント回の中でも最高峰の出来栄えですよ。うん、何度も言うけど集大成。
 後、個人的にリアル最終回(何だこの言葉)と思っている海回は爽やかな雰囲気とこれぞ最終回! という演出とが相まって大変満足度が高い回でした。ページ数はそれほどでもないけど、このなんかいい雰囲気で終わらせませたよ感が最ッ高だぜ!チームサティスファクシ(略 って思いを駆り立ててくれます。でも、その後にまだページがある、という事実に正直驚愕したりもしますが。え、終わったじゃん、っていうのが凄い凄い。そしてその後の内容が間違いなく『ぱにぽに』だけど、この終わり方はあんまりじゃん! というのも合わさって、海回をリアル最終回だと思う事にしています。そういう事が出来る懐の深さも、この最終巻の醍醐味であります。その終わり方、ムチャだけどイエスだね!
 さておき。
 最後に、『ぱにぽに』とはなんだったのかという命題に突入したい所ですが、考えれば考えるほどこの最終巻だけで『ぱにぽに』とは闇鍋、混沌だったんだよ! という結論にすぐさま到達してしまいます。ある意味今までの『ぱにぽに』の総まとめとして、この最終巻はあって、ゆえに『ぱにぽに』って大体何でも出来たんだな、というのを深く理解出来ます。何でも出来る、というのは簡単そうに聞こえる響きですが、それは常に野放図と弛緩という問題点に直面します。出来るがゆえにまとまりと緊張感が無くなる、と言えばいいでしょうか。その点で見れば、『ぱにぽに』はそのまとまりと緊張感を基本的にスルーするという立ち振る舞いをしていて、しかし締める所、まとめる所ではきっちりと回収すると言う豪腕を振るっていた漫画、例えば16巻まるまるのテンペスト編とかがその最たるものだったりします、であると言えるでしょう。その豪腕こそ氷川へきる味としてこの漫画を駆動していた基礎機関であり、つまりヘッキーすげー。となるわけです。このヘッキーすげー、が次回作でも生かされるのか、あるいはまた違うヘッキーすげーを生み出すのか。どちらにせよ、まあこの人の漫画にはまだまだ付いていきますよ俺は、という事で締めの言葉とさせていただきます。