感想 鈴城芹 『JC探偵でぃてくてぃ部 1』

 大体の内容。「JCで探偵。つまり最高!」。とは言っても、世にある学生探偵の派手な活躍とは趣を異にしているのは、そのリアルリアリティ、というか現実的に女子中学生探偵が成り立つか、という点をきっちりとしている事にあると言えましょう。基本的にまずありえないだろう路線をどう合法的に且つ現実的にこなせるか、という思考実験みたいな所を読んでいて感じました。とはいえフィクションですので、こなせる為にはちょっと飛躍した設定、詩さんの超強い設定とか細さんの電子方面の超明るい設定とか、をきっちり盛り込むのはまあ漫画理の当然。でなきゃ無理か、とも思いますし。でも、それがきっちりとキャラ立ちへと昇華されており、基本的に三人で回すなんちゃって探偵漫画としては正しい立ち振る舞いとなっていたりもするので、所謂痛し痒しでしょうか。
 さておき。
 基本的に探偵物のそぶりですが、殺人事件などは特に無いのでより基本的には日常系推理物の類と言える漫画です、が、それとはやっぱりどことなく雰囲気が違います。それもそのはずで、この探偵部、正解には行き着きますがその過程が大変泥縄。推理したら穴があり、犯人さがしやってみたらちょっと違い、尾行したら気付かれたりと、とにかくパーフェクトに決まりません。しかしそれが不可逆的にリアルリアリティというものを感じさせてくれます。そりゃ、よくある日常系推理物みたいにがっちり上手くは行かないよね、と申しましょうか。その辺が確かにJCであるなあ、と思わせてくれます。
 後、事件が学校絡みな為に起きても悪戯レベルが多く、派手な事件、殺人とか誘拐とかが起き得ないのも、リアルリアリティを感じると同時に狭さを感じる要因となっています。ガチ犯罪回というのもあるにはありますが、勿論それ程大きな話ではなく、ついでにそれは大体学校外で起きる為、イレギュラーと言えるでしょう。第9話とかは学校内でしたけど。で、そんな中でどうするか、となって導入されたのが外の仕事を出来るチームである所長サイド、ガチ探偵サイドとの交流です。これに寄って外の仕事も時にはある、という形が出来上がったので、2巻以降では結構派手目の仕事が出来たりする、のかなあ。
 さておき。
 キャラ話に移行しますと、メインキャラ三人――探偵っ子照葉、ハイテクっ子細、格闘っ子詩――のバランスが大変絶妙であります。基本猛然と突っ込む照葉を細、詩が絶妙にフォローしたりしきれなかったりしつつが上手い具合に絡まって、事件がたまに偶発的だけど大体はちゃんとはまって解決されるゆえに、このキャラ性がきっちりと立っているというのをつとつと感じさせてくれます。この三人がだるーとしてる探偵を見る回である第8話「教えてせんせいさん」を経た後などは、初期では嫌々ながら渋々ながらだった細と詩が、俺たちもなれる! と積極的に探偵に向かうようになり、よりその個性を羽ばたかせるようになり、その時に初めてこの漫画のポテンシャルに正確に気付く事が出来ました。この三人で回すだけでも全然面白いじゃん! というか。それでも茗ちゃんと所長の関係とか、更にそこに先生が、とかも楽しいので、思っていた以上にキャラ漫画としては完成されているなあ、とかなんとか。ちょっと続けるには事件の種類が厳しそうだけど、そこを越えたら、あるいは見えてくる地平があるのかしらねえ。