感想 せがわまさき 『山風短 第四幕』

山風短(4)忍者枯葉塔九郎 (KCデラックス)

山風短(4)忍者枯葉塔九郎 (KCデラックス)

 大体の内容。「ある同行二人旅の顛末」。二重の意味で。にしても、実際の所なんで枯葉塔九郎はお圭にぞっこんになったんだろう、というのが良く分からなかったり。というか、むしろその辺を一目惚れという言葉でうっちゃってるけど本当にそうだったのかは藪の中にほっぽりこんだ印象が、途中まではありました。でも最後のくだりを見ると、塔九郎にもお圭さんにもこの方が良かったんだな、という思いに囚われる事に。最早愛していない相手より、愛してくれる人の元に、って事なのかなあ、とか。『山風短』は基本的に愛についての話が多いのかな、とか今更ながらに気づいてみたりも。そうであれば、いきなり忍者どころか時代物設定でない物になった三巻目『青春探偵団(砂の城)』の存在も、でもこの一連の流れの中にある事なのだなあ、と理解してみたりしました。
 さておき。
 山風物であるという事はとりあえず忍法である、という理屈が成り立つのかどうか知りませんが、とりあえず自分にはそういう理解でこのシリーズを見てるんですが*1、そういう中にあっても今回の忍法は分かりやすく且つグロいものでした。きったはったの世界ならかなりの無敵度を誇る忍法ではあるんですが、でも斬られたら痛いだろう、と言う辺りがどうなってるのかは全く話されない辺りにグロさというか、そこは想像にお任せしますという扱いを受けて、ではやっぱり…、と思ってしまうんですよね。ううー、痛い痛い痛い痛い。
 そして、その忍法の応用として狂気としか言えない絵になる牢獄脱出がこの巻のハイライト。好いている相手が目の前でばらばらになっていくのを見て、バラバラの部分を引き釣りだし、最後にあれをくっつけていく、というのはマジ山風先生ってどういう事考えてたんだ、と思わずにはいられない荘厳にも狂悪にも見える静かな名シーンです。見てないで牢番仕事しろ、という気もしますがリアルでその光景見たら口があんぐり以外の行動取れるとは思えないのもまた事実。こういう一般の目もきっちり入れてるのは原作からなのかオリジナルなのかは判断し辛い、というか原作読めですが、でもより異様な光景として立ち上がってきているのは上手いと思いました。
 にしても枯葉塔九郎、何故捕まる段であれを斬り取るって行動に出たのか。筧がお圭をてごめるという予想があったからなのでしょうか。確かに、既に埋まってれば後から入れられないけど、けどさあ! まあ、最後の合体シーンに持っていく為の布石として見た方が通りはいいんだろうなあ、とかなんとか。いやでも、さあ、あれをさあ、斬るってさあ…。

*1:ゆえに三巻目は全く関係なくて度肝抜かれたわけですが。とはいえ、あれはあれで楽しいしキャラ立ての教科書みたいな物でしたので、嫌いという事は全く無いです。すっかり感想書いてないのでいずれ書きたい所です。