感想 久正人 『ノブナガン 1』

ノブナガン(1) (アース・スターコミックス)

ノブナガン(1) (アース・スターコミックス)

 大体の内容。「ノブナガン! 侵略者を討て!」。帯に「初の直球正統派!」って書かれてる通り、現代的に直球正統派のアクション漫画となっております。いままでずっと久正人漫画はジャンル的に正統派の部類だと思っていた自分としては何を今更という感もあったりしますが、正統派のアクション漫画となっております。当然、現代的なのでヒーロー役はありつつの、でも主人公はJK、であります。正統派!
 さておき。
 本当の所、正統派なのは正統派に侵略者を迎え撃つ! という部分なのは、賢明なる読者様におかれましてはとうに理解されていると思います。今までの久正人漫画を思い返すと、リアル道士とか恐竜が実は生きていたとか、設定面で異端感満載だったなあ、と思ってしまいます。それが今回は結構シンプルに侵略者を討つ話。主人公側の設定が僕が考えた偉人能力、という直球ぷりは確かに正統派の味わい。しかし、今の所はシンプルのしゃ面しておりますが、侵略者たる進化侵略体の設定、生命の進化を模して陸地を目指してくる、が地味に今後の異端感を炸裂させる起爆剤になりかねなかったりするような。魚類から両生類まで来て、じゃあ最終的にどこまで進化するか、で話の無茶さが久正人漫画としての立ち居住まいを見せるのではないか、と今から密かに期待しております。進化侵略体とはどこから来て、そしてどこへ、と言う辺りは大変面白そうに見えますし。これで久正人味、陰影の強調された絵や、奇をてらっていてもシンプルに味わえる話の妙味を知って、久正人漫画の海に航海し始める人が増えたらいいなあ。それ以前に『ノブナガン』が進化侵略体の最後まで行けたらいいなあ、が先ですかそうですか。
 さておき。
 個人的に好きな話は胎動として優れた1話目と、魅せ場として優れた2話目。そしてそういう激しい話では全く無い上に、題名がこの巻では唯一一般人の名前を冠される第四話でしょうか。
 第一話目はまさしくプロローグ。主人公嬢の性格をきっちり見せつつ、そこから激しく戦闘に突入して軍を普通に圧倒する敵に対し、この話の肝たる組織が割って入ってあっさりと終わったか、に見えた所でところがどっこい。そして主人公嬢の力が覚醒して次回! 見事な魅せ方でありました。
 その次回たる二話目は更に組織の人間の特殊能力を見せつつ、主人公嬢の戦闘センスが垣間見える回、ですが、やはり決め手は最後のノブナガン三段撃ちまでの流れ。これがびしりと決まって快感すら感じる魅せ方となっておりました。
 そんな激しさの中で凪のような回である第四話は、しかし主人公嬢が戦う事を選ぶ最大の決め手が出る回で、それゆえに怖かった物がもう怖くない、戦える! という事の為に一話きっちり使って見せてくれております。他人を助けたい、というのはもしかすると歪んでいるのかもしれない、というテーゼを最近『戦姫絶唱シンフォギア』で見てからこれを見たので、色々とそれでいいのだろうか、と思うところもありますが、その辺の心理に対しては既に三話目で異星人がこすっからい説得をかましているのと、四話目で浅尾さんが支えとなる発言をした事で、とても納得いく流れになっていたと思います。ついでに、一話目でやけのやっぱち気味に浅尾さんを助けようとしたのも含め、『シンフォギア』良い事言うなあ、とも思ったりも。この辺が折られる形になるような展開になったりするのかどうか、は今後の進展次第ですが、また掲載紙が死んでしまうという不遇を囲わなければ、大変楽しい漫画が読めるのではないか、そう思いました。