感想 木々津克久 『フランケン・ふらん 8』

フランケン・ふらん 8 (チャンピオンREDコミックス)

フランケン・ふらん 8 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容。「メディカル・ホラー、完!」で、結局メディカル・ホラーってなんですかね、ああん? という面をしてしまいたくなる帯が巻かれたこの巻にて、『フランケン・ふらん』は最終巻となります。そも、この漫画の成り立ちとして、チャンピオンRED誌に萌え系の風として入った、というよくよく考えなくてもお前は一体何を言っているんだとしか良いようが無い事実がありますが、それなのに最終的にホラー扱いというのは、しかしこの漫画という物がそういうものだったと記憶しておくには十分示唆的であろうと思います。そういう意味では流石の秋田書店赤い核実験場、と言えるかもしれません。
 そんな微妙な立ち振る舞いを求められたような気がする、と曖昧にしか言い様がないゴーイングマイウェイをかました『フランケン・ふらん』ですが、この巻にもなると送信者側が限界を超えろ! 俺を越えろ!((c)コミックマスターJ)とでも言わんとするかのようにネタの味付けとか端緒とかが無茶を通す形に。
 特に顕著なのは以前登場した遊園地の再登場回。今更そのネタを再登場させるのか、という驚いていたら、某鼠キャラを髣髴とさせるだけで十分危険なのに、その辺に対する毒も仕込んでたり、その上で殺伐とした中に愛を感じさせたかと思ったらぶっちゃけるオチとかバランスがちょっとおかしい感じで、しかしここまで付き合った仲ではそれすら味に感じちゃったり。無理を通せば道理が引っ込むとはこのことか、というくらいに強引さも感じましたけれども。
 他にはセンチネル話も最終回に向けてちゃんと一区切りつけるという手腕もなかなかの業前。センチネル達が量産型センチネル軍団を前にして結託して仲間となるシーンは今までの確執というか敵対関係を考えるとそれだけでは確かに胸熱なんですが、その前段階としてセンチネルV?の正義の味方を山車に使った金稼ぎ話をしてたので、ある意味自業自得なんだよな、この状況…。というが相まって燃えていいのか悩んでしまったり。というか、センチネル軍団数多すぎだろ! 志願者どれだけ居るんだよ! という辺りの突っ込み所もまたいとおかし。力強い無茶苦茶さです。
 さておき。
 今時このオチかよ! でもちょっとらしい! という最終エピソードの後に単行本加筆のエピソードがあるんですが、それを見ると木々津先生はヴェロニカが好きだったのかな、という感想を持ちました。色々一方的にdisっておいて、でも最後はなでりなでり、って何ですかそのムチとアメ。好きゆえのいじりですか。最後のコマが異様にあったかい感じなのも相まって、ああこの漫画の正ヒロインの座につくには色々酷い目に遭わないといけなかったんだなあ、という理解が自然と腑に落ちました。そう考えると、確かにヴェロニカはヒロインだったのかもなあ、とも。
 ならふらんはどうなの? と言われるとヒロインというより便利な博士役だよなあ、とか。それも倫理感が変な、マッドサイエンティスト役。実際、ふらんの倫理感はこの漫画の最大の謎と言うか、琴線どこにあるんだよ、と思わされる事ばしばしばでしたが、これがふらんが色々あって右脳側と左脳側の二人になるエピソードを経ると、天然ではなく意外と計算の上で成り立っていたのだろうか、という印象を持ってみたり。野放図にラブ&ピースな右脳側と異常に論理的な左脳側が合わさってのふらんとは、とても思えないのが難点ですが、左脳側が意外としっかりしていたので、たぶん野放図な部分を冷静に見ている部分がふらんにはあるのかなあ、とか。野放図が強い局面が、特に倫理感面で出る、と言った方が良いのかも。でも、やっぱりいまいち二つが合わさってふらん、というのに納得出来ないなあ。それだけ自分がふらんをブラックボックス化してただけなのかもしれませんが。
 そういうもにょもにょとした気分になる部分はあるけど、それ差っ引いてもやっぱり良いキャラだったなあ、とふらんのキャラ立ちを見て思ってみたりしつつ、この文を終えたいと思います。