感想  道満晴明 『ニッケルオデオン(赤)』

ニッケルオデオン 赤 (IKKI COMIX)

ニッケルオデオン 赤 (IKKI COMIX)

 大体の内容。「悲喜交々のショートストーリー集」。不肖私め、道満晴明せんせは『ぱら☆いぞ』がファーストコンタクトだったので、今までがどういう作風か全く知らないにも程があって脱毛するくらいなんですが、しかしこの短編集+『ヴォイニッチ・ホテル』を読んで、「ああ、なんでも出来るタイプなんだな」という理解を得ました。『ぱら☆いぞ』もよくよく考えると下ネッタ伯爵なトコ以外ではなんでもしていたのだなあ、と気付いたりも。
 そんな何でも出来る系スキルを活用しているのがこの短編集なんですが、その一発目『Heart Food』からして短編集には説明はいらねぇ! ぱっと見せてぱっと終わるのが華なんだよ! とでも言うかのように虎が話しているんだから、なんというか、やる気、なんでもやる気を感じずに入られません。その後もヒーロー物から恋愛物、SFに怪奇話にメルヒェンと文字通りの節操の無さで、これが何でも出来るという事の強みであり、弱みでもあるか。と変な納得すら浮かび上がらせます、しかし、どれもこれも短編漫画としては水準以上、と言える出来栄え。いいじゃないですか。それと、8Pで終わらせないといけない事からくる収束力も見所です。正直申しまして8P以上の満足感に毎度包まれるというのはかなりのワザマエ! であると思いますが郷らはどうか。Wasshoi!
 さておき。
 好きな回の話をするとまず『竹取パラダイム』。黒髪ロンゲ+白衣+ドSという夢にまで見た*1パーフェクトな存在のナヨタケさんが大変いいキャラで、正直この一回だけでは勿体無いレベル*2でありまして、この贅沢な消費感もこの短編集の味わいではあるんですが、でもやっぱり勿体無い。もっとこの話だけで見たいですよ! 一応、その前の回の『カクリヨジョウント』で少しこの回との連携が見られたので、もしかすると再登場ありかもしれぬ。という夢も持ち合わせてはおきたいところです。夢破れて山河ありになりそうですが。後、他に好きな話はシャム双生児話『ヒールとスニーカー』。8Pで綺麗に語られる恋話としては上等にも程があり、展開とオチも絡まって見事すぎる一作と成っていると思います。姉の気持ちと妹の気持ちが共に、というのは普通ならまだしもシャム双生児ではねえ…、というのもまた悲恋要素として十分。ついでにそのお相手の目的が、というのが更なる悲恋要素。この短編集内で繋がりが地味にある回の一つであるがゆえに、どうしようもなく悲恋感がありまして、ああ…。という気持ちにさせられるのでした。うん、食らい応えのある漫画だったなあ。

*1:見てない

*2:他の話の端役になるキャラもいますが、ナヨタケさんは…