感想 津留崎優 『箱入りドロップス 1』

箱入りドロップス (1) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「10年代きらら標準―― なんと聞こえの良い言葉かー!!」そんなわけで*1、純粋培養箱入り娘によって天然満載新鮮満載でお送りされる、それが『箱入りドロップス』なのです! というと自分で書いてても良く分からないのでもう少し詳しく話しますと。高校生の年代になるまで全く外界との繋がりナッシングで生活してきた雫ちゃんが、それではあかんやろ! という姉上様の下知の元、初の外界生活に打って出て、陽一君と出会う、というお話です。と書いていますが、その辺、下知の辺りはほぼ一コマで整理されてるし、雫ちゃんが恋愛なんてなんですそれ?状態なので、重くもラブくもなったりはしておりません。ラブ要素無いわけではないんですが、そちらに特に傾倒する事無く、まだ普通に接している段階とでも言いましょうか、とにかく雫ちゃんそれどころじゃない、それより楽しい事が今一杯ある! という初々しい感じがこの漫画の持ち味の一つとなっております。初々しすぎて眩しいすぎる感もありますが、それはまあ、個々人の問題でしょう。
 さておき。
 先に10年代きらら標準と書いてみたのは、もしやすると誇大広告の気もありますが、しかしワタクシと致しましては、これは偽らざる本音と言えましょう。何を持って標準と言うのか、というとその楽しませ方の手練手管っぷり。可愛い、というきららのベタ基礎をきっちり保持しながら、時には『Aチャンネル』みたいにしゅばっとネタを展開してくすりとさせ、時には『ゆゆ式』みたいにゆるゆるとした流れをほんわり堪能させ、時には多弁に言葉のテンポをみせ、時には無声で感じるんだ感じろさせる。まだ作品としての立ち振る舞いの定位置が確定してない、ドウシタライインダー!という迷走もそうなっている理由にはあるんでしょうが、しかしそれゆえに今のきららの標準というものがどこにあるのかのリトマス試験紙的働きをしている、そんな漫画なのではないかと感じてしまいます。
 さておき。
 キャラ的な話をすると女性陣が箱入りゆえに天然の雫さん、やや暴虐の気がある萌さん、クールとも言える(婉曲表現)純さん、という取り合わせで、基本的に天然である雫さんメインで、他の人達がいじっている、というか仲良さげに振舞っているのは見ていて心洗われるなーという雰囲気でありまして、皆良い子やのう良い子やのうという気持ちにさせてくれます。特に純さんはやや不思議と言えない事は無い(婉曲表現)感じながら友達思いでもあり、しかしやっぱりいじるにはいじるといういいポゼッションについておられます。この巻では雫さんとの最初の遭遇でのバレーボールについて嘘教えて楽しんでたりする辺りは活き活きしてるなあ、と思わされました。後、決め顔したら食料やるという話にきっちりのって超決め顔をするところの決め顔の美少女力がハンパ無いのもポイント高いです。基本的にデフォルメ的可愛くが多いキャラだったのに、そこだけマジ力入ってる感じが最高でした。
 男性陣は基本陽一君が顔怖いけど良い人、という立ち位置をキープしつつ雫さんと絡むわけですが、しかし序盤での顔怖いがあまり機能していない、というよりは、見ている方が特に怖い感じじゃないよな…。と思わされるのがやや難点と言えましょうか。その内そういえばあったなそういうのって処理される事なのでそれほど気に掛けなくても大丈夫ではありますし、この巻の最後の方でカッとした時はなかなか怖い感じだったので、ああ、やっぱりスキル足りてなかったのね…。という感慨も持ったりも出来ます。そんな陽一君ですが、最初はなし崩し的に関わらされていたけれど、順調に雫さんに気があるのでは、と思わせてくれる行動などもあり、しかしまだまだそういうの先が長そうだな、とも思えてくるので、その辺が濃くなる事はあるのかなあ、と思いつつ、この項を終えたいと思います。

*1:どんなわけだ