感想 鈴城芹 『家族ゲーム 9』

 大体の内容。「恋愛に覚醒した真言のポテンシャルを見よ! 他」。今巻は恋愛感情に覚醒した真言が、とうとう西浦にプロポーズするのが最大のハイライト、と思っているのか?(CV島田敏) と言う事で、もう一人のメインパーソナリティである葵の方も大きく進展があったりしました。更に、新たなるゲーム家族である占野家もクローズアップされ、単に遊佐家だけをフューチャーしていた頃から一転し始めたのも特筆点。それでも、ラブという面に対してはいつも通りのイイハナシダナー力を発揮する。それが『家族ゲーム』9巻なのです!
 さておき。
 まず、この巻で特筆すべき点の最大値、真言のプロポーズされたい宣言と、攻めは激強守りは激弱な部分が出て辺りをつらつらと。
 真言の告白部分は大変凄いというか、現実感がリアルタイムで読んでた時も無かったんですが、今この巻としてまとめられたのを見ても、一瞬現実感が喪失しました。そりゃ、西浦もふわふわした状態で結婚します言いに行くわ。訳わかんねえもん。いままでの積み重ねは真言が愛情に気付いての段階でいきなり建築されましたが、それでも結婚まで一気呵成に跳ぶと混乱するというか。実際、プロポーズ話の後の回はその辺のふわふわ感の穴埋めを必死こいてやってたというか、西浦が自分の話だって納得するまでの為の時間として使われていたわけで、それがいかに無茶だったかを如実に表しています。その間も、真言は「西浦さんの匂いと体温。どっちに興奮して眠れないのがうれしいですか?」とか言いつつ直ぐにすよすよ寝るという挑発行為をかけてきて、ますます西浦と読者を混乱させるから困る。何なのこの子、覚醒したからって無茶が過ぎるだろ! とか思わずにはいられませんでした。
 が、それも第71話の海話で、一気にカワイイヤッター! に転換されます。そこでは、西浦が真言にムード作ってキスする、んですが、それに真言が異常反応。今までの達観というか鳥瞰だった態度が一気に崩されて、あわあわするという様が見られます。これが大変可愛いという、今まで我々が思っていた真言の難しさが一気に払われた様は、まさしく恋する女の子。これが…、真言…? とおののいてしまうレベルですらありました。それだけ、今までの真言がそ知らぬロール過ぎたわけでもあるわけですが、しかし、ようやっと西浦に報われる瞬間が到達したのだな、という思考も出来たり。良かったなあ、西浦…。
 さておき。
 メインストリームはそういう辺りですが、それでいて他のカップルにも色々あったりします。悟と葵はとうとう口チューする事になったりしました。なんか激しくぶつかって、後は流れで状態のなし崩し的な口チューでしたが、この二人ならこういうなし崩しもありうるな、と納得出来る流れでもあり。また、宇藤君と紫杏宇藤君が告白してみたりしたのも特筆点。でも、紫杏の恋愛巧者っぷりが如実に出て、また宇藤君は彼方へダッシュしてましたが。この二人も、現在の連載段階でも色々あるので、まだまだゆっくり見ていきたい所です。
 まだまだサブな話をすると、今回で占野家が大々的にもう一つのゲーム家族として新たに立ち上がってきました。年齢層的に小学生がいなくなってしまったゆえのてこ入れという感もありますが、これによって新たな人間関係も構築されて、『家族ゲーム』に新風を巻き起こしているのは、いい面も多いと思います。モブサブと朱音や由寿が恋愛しそうに無かったしなあ…。こういうのが無いと、ちょっと立ち行かなかったのかもなあ、とも邪推したりしますが。
 さておき。
 今回のゆきえさんは征爾さんが真言の事で猛ったりするのを抑える役目が多かったように思います。それでも、そんな中でも、ナチュラルに後頭部に当ててんのよしていたりする仲良し夫婦、というか熟年バカップルぶりを純然と見せ付けているのが素晴らしいですね?
 という事で、西浦本当に良かったなあ、そしてゆきえさんマジ麗しいなあ、と思える巻でありました。