感想 えのきづ 『桜乃さん迷走中! 1』

桜乃さん迷走中!(1) (まんがタイムコミックス)

桜乃さん迷走中!(1) (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「桜乃さん、頑張る! でも方向性! 方向性!」。この漫画は、やったぜ東京で社会人! となるはずだった桜乃さんがどういう宿命か、会社が倒産して突如プーになってしまって、そして社宅もおん出され、気がついたら寝袋で公園デビューと相成ってしまう。という感じで始まります。その導入の絶望度が凄いんですが、桜乃さんが意外と堪えてないと言うか、もしや理解してないのでは? と思わせつつなんとなく進んでいくという中々凄い導入だったりします。というか、桜乃さん、公園生活から脱する為に不動産屋に行ってなのはいいけど、仕事も保証人も無いのに突入って無謀通り越して無謀キャプテンじゃないですかねー! そんな無茶苦茶危うい感じの桜乃さんの動向を気にする漫画。それが『桜乃さん迷走中!』なのです!
 とはいえ、ずっと公園生活という状況で進むわけではございません。どう考えても年頃の女の人が公園生活を続けるって18禁な展開しか思い浮かばないし、そうなるとどうしようもないので、わりと序盤に偶然出会った女の人の家に上がりこみます。そして居候。そこに葛藤が一切無い、と思っていただこうッ! なのが桜乃さんの凄いバイタリティです。普通、いきなり出会った相手の家に上がるのはまあ、一回くらいはありかもしれませんが、そのまま何のてらいもなく住み続けるというのは、並みの精神では可能な行動ではありません。その辺をバイタリティと言えば聞こえの良い言葉ですが、これは通常ならクズという言葉で表せられる現象でありましょう。でも、そういうには桜乃さんに迷いが無さ過ぎて、あれ? 僕の感覚なんかおかしいんだっけ? って混乱させられる事請け合い。これがある意味桜乃さんを助けているわけで、人と言うのは単一の価値観だけでは語りきれないものだなあ、という良く分からない知見を得てしまったり。いやでも、桜乃さん駄目過ぎますよね?
 さておき。
 そういう生活面の基本から駄目な桜乃さん。その後の生活も当然駄目な感じ。一応料理などの家事スキルがあったので、なんとなく住まわせてもらえるようになり、仕事もバイトながら見つける、のはいいけど上京してきた親は騙そうとしたり、アウトドア全くなのにアウトドアの先輩みたいな振る舞いをしてみたり、アウトドアを実際しても釣らないといけないのに全くしなかったり、と、どうしても駄目な感じ。この子の今後がマジ心配になります。大江さん(桜乃さんが泊まってる家の主)が何時ぶっちぎれて放逐しても別におかしくないんですよね。でも、ここまでなあなあで人が居つくという現象にほとんど関心を持ってない感じな大江さんも、もしかすると大概駄目人間なのかもしれません。というか、普通速攻追い出すだろうに…。食事が美味いとか、確かに居てもいいとする要素はあるけど、でも、なあ…。
 さておき。
 えのきづせんせと言うと『琴浦さん』のゆるい中に突如黒いのぶっこんでくるスタイルが世間知だと思いますが、この漫画では桜乃さんの駄目さ加減がひたすら出てきて、ゆるいんだけど根底が駄目、というある意味新たな道、ある意味いつもの、というものとなっています。ゆえに桜乃さんの今後が黒いモノになりそうだけど、なんとなくクリアもしそう、という妙な安心感があったりも。そんな不思議な感じがある漫画。それが『桜乃さん迷走中!』なのかもしれません。