感想 はりかも 『夜森の国のソラニ 1』

夜森の国のソラニ (1) (まんがタイムKRコミックス)

夜森の国のソラニ (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「夢の国の人々のお話」。夢の中の夜の世界、それが夜森。そこに夢から覚めない人達が集い、夢の中の生活をしている。そんな中に記憶を失った少女が現れるが、それはある人物に似ていて…。と言う感じで始まる『夜森の国のソラニ』。そこから絵柄のふんわりした食感を持ちつつ、微妙に重いネタも混ぜてくるという手管で、色々な女の子が可愛いを主題とする(注:個人的な妄想)きららミラク誌においてガチ目のファンタジー枠として存在感を持っている。そんな漫画です。その特徴はやっぱりカラーページを貰った時の気合の入れようでしょう。細かい所を埋めていかないと気が済まない性質を伝奇病と言うそうですが(注:超また聞き)、その言葉が綺麗にはまるカラーページの不思議な味わい、単に綺麗でも、単に猥雑でもない、その微妙なあわいにある、というか妙な薄暗闇の中にあるカラーページは必見、と言っておきましょう。そのカラーページを余す所なくどころかむしろ設定画なども入れて増量しての単行本化は、編集部、イエスだね!と謎の目線が出るくらい素晴らしい仕様であり、表紙の感じに惹かれるモノがある人は余さず買えばいいんじゃないかなー! と言ってみたり。へそだし赤衣さんの設定画を見られるのは、この巻だけのはず!
 さておき。
 きらら4コマとは畢竟キャラ漫画だと言う話がありますが(注:個人的な妄想)、その視点で行くとこの漫画ではやはりソラニ(最初に言った記憶喪失の少女)と夜森が中心であり、見所であるかと思います。特に夜森は謎めいた所が多く、且つ無表情っ娘なので更に謎度がドン! ですが、たまに表情に揺れが生まれて大変可愛く見える、というのがポイント高いです。でも、基本は無表情。その上ほとんど揺れない。ツンデレともまた違う感じが味わい深いのです。対するソラニは表情がコロコロ変わるタイプ。しかも、その顔は夜森に深い関係のある人物と、という謎も加味されて、でもその当人とは全く性格が違うのもあって、実は一番謎めいている人物。でも、基本いい娘なのが特によろしいのではないかと。似ている当人の性格が悪いのも、その対比に一役買っているようにも感じます。そんなソラニが、夜森と一緒に生活していくにつれて、夜森の表情が変化するタイミングが現れる、という部分ばかり見ていても、実はいいのかもしれない。そんな二人だったりします。
 さておき。
 この巻ではソラニが似ている人物も出てきますが、その人物も何故ソラニが自分に似ているか知らないようで、それがますますソラニの謎を深めていきます。そういう謎と、夜森の何か知っている節とが、この漫画の深い謎の部分でありまして、でもそこまでそこに注力しないで、ゆったりのようで悲しい所もある夜森の生活を続けていきます。そこはやはり優しい逃げ場なのか、それとも立ち止まってみる時間をくれる場所なのか。その辺はやや個々人の事情に問題があり、ゆえにあんまり関わっても仕方ない、という空気があったりしますが、そこにソラニが絡むと、本当にそれでいいのか? という問いみたいなものが沸いてきたりする場合もあったり。特に、絡んでも仕方ない部類の夜森にソラニが深く関わるがゆえに、その無表情にも変化がある、というのを見ると、この辺の距離感って難しいよなあ。とか嘆息しつつ思ったりもします。ソラニがいい子であるがゆえに、詰めれた距離ではありますが、それを他の人も出来るのか? というと夢の中に落ち込んだ人達全員それが、というのはねえ…。そこはあんまり主題じゃないのかもしれませんが、なんとなくそんな事を思ったりもしました。
 とかなんとか。