感想 楯山ヒロコ 『椿さん』1〜4

椿さん(1) (まんがタイムコミックス)

椿さん(1) (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「椿さん、縦横無尽」

椿さん 2 (まんがタイムコミックス)

椿さん 2 (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「椿さん、疾風怒濤」

椿さん (3) (まんがタイムコミックス)

椿さん (3) (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「椿さん、意気衝天」

椿さん (4) (まんがタイムコミックス)

椿さん (4) (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「椿さん、鎧袖一触」
 そんなわけで、草野家の家政婦さん、椿さんが縦横無尽で疾風怒濤で意気衝天で鎧袖一触な漫画、それが『椿さん』なのです!
 家政婦さんだろ? 鎧袖一触はなんか違うんじゃねえかって思ったか?
 甘ぇ!
 と言うくらいに、椿さんはパーフェクト家政婦さんです。というよりは、パーフェクトとは椿さんの為にある言葉でしょう。炊事洗濯掃除家計簿から、稔君の勉強や町内会の手伝いから泥棒退治、はてはPC自作する所まで行くのだからどこまでもパーフェクト。パーフェクトじゃ生ぬるい、パーフェクター、いや、パーフェクテスト! そんな出来る女、それが椿さんなのです!
 しかし、そんなに出来る女ならさぞかしお高くとまっているじゃないかって?
 甘ぇ!
 全体的に何でも出来る女な椿さんですが、それを鼻に掛ける事など微塵も無く、基本的に控えめに草野家を影で支える仕事に従事しておられます。その様は慈母と言って差し支えない位です。
 なら、貞淑でガチガチにお堅い人なんじゃないかって?
 甘ぇ!
 椿さんはお堅そうに見えて、意外と茶目っ気もあるのです。テレビドラマが異常に好きだったり、エコだからと鰹節で割り箸作ってみたり、着飾れないので帯留めは一点豪華にしてみたり、その他しっかり仕事をしている合間に可愛い所も見せてくれます。そういう時は自己主張が凄く、先に基本的に控えめと書いたのはその為であります。こういう茶目っ気が存分にある様を見るのが、この漫画の基本用法であります。
 そういうわけで、この漫画の素晴らしさは詰まる所椿さんの素晴らしさであり、このキャラを考え付いた楯山ヒロコせんせには足を向けて寝れない程の感謝、圧倒的感謝…っ! の心しか湧いてきません。楯山せんせの漫画は先に『100万ボルトの彼女』(感想)から入った新参なワタクシですが、その漫画でもあったキャラ立ての見事さはこの漫画にも通奏低音として存在します。基本的に『椿さん』は椿さん一点突破であり、椿さんがお仕えする草野家の面々との信頼があるがゆえに出来る諸々の行動が、この漫画の肝であります。ちょっとお金持ちな草野家の日常をじりじりと、粛々と、嬉々と過ごしつつ、その中で大活躍する椿さんを見る漫画なのです。
 その展開は本当にファミリー4コマの世界というものをしっかり感じられる、所謂萌え4コマとはまた微妙に違ったロジックのあるものとなっております。日々をじっくりと見せていく中で、起伏としてのボケがしっかりあって、なんというか、新聞4コマのノリというのを感じずに入られません。基本萌え4コマ重点な自分なので、よりそう感じたりも。とはいえ、時間軸がずっと足踏みではなく、徐々に成長していく稔君が、特に重要な役割を果たしていたりもします。最初はそれはもう危なっかしい感じだったのが、いつの間にか椿さんに頼らないように、と行動するようになっていった辺りは椿さんならずともこの子ったら、って思わせてくれるものがありました。でも、基本は駄目だからそれも含めてもこの子ったら、って思わせてくれたりも。そこを椿さんが快刀乱麻していくのだから、ここで稔君が何でも出来るようになってはいけないといえばいけないんですが、それでも椿さんの立ち位置が徐々に変わっていくのだなあ、と思わせてくれる辺りがなかなか無い漫画であると思います。最近、そういう関係性が変わっていかない漫画ばかり読んでる感があるので、余計にそうなっていくのが新鮮で、それでも椿さんはぶれないのも新鮮だったり。こういうのを上手い漫画って言うんでしょうかね。
 で、椿さん。椿さんですよ。他のキャラもおいしい奴は、例えば椿さんの弟のシスコン雅さんとか、椿さんラブになって色々残念な桐原さんなどいますが、でも、椿さんですよ。『椿さん』自体はそういう名前の漫画がある程度、こちらの記事でそういうのがあるのを知っていた程度だったわけですが、それが『100万ボルトの彼女』でこの漫画家さんいいな、と思ってちょっとお金に余裕が出来たのを理由にまとめ買いして、そして一気に読みきった後になると、何故俺はこの漫画を速攻で買ってなかったのだろう、と自責の念にすら駆られる位、椿さんがドストレートに自分の萌えハートにびんびんきました。自分内最萌えランキングに新しいキャラがエントリーだ! というレベルできゅんきゅん来ましたよ。自分内最萌え一位である遊佐ゆきえさん(鈴城芹家族ゲーム』)の牙城に手が伸びるキャラがいるなんて…! ってくらいだから相当と思っていただきたい。出来る女と慈母と茶目っ気。三つの属性がこうまで上手く交錯して、渾然一体となって、そしてそれぞれの持ち味を殺さないで共存しているというこの素晴らしさよ…! 出来る女と慈母なんて、普通では相反するとすら言える属性でありますが、しかし椿さんはそれを両方ともあり、両方とも生かしているわけでありまして、その間を茶目っ気が取り持っているんだなあ、という理解をしてみたりもします。この匙加減は生半には出来ませんよ…! 何でも出来るけど、ちょっと抜けてるところもあり、でも基本的に優しい。素晴らしいじゃありませんか!
 一応、どの巻のどの場面の椿さんがいいか、というのも書き出そうかと考えたんですが、結局オール、全てがいいという結論が出てしまったので、そういうのは書けません。もう、本当にオールタイムオールウェイズ、椿さんは素晴らしい。麗しい。エクセレント。ブリリアント! そんな椿さんの奮闘記、それが『椿さん』なのです!