感想 天野こずえ 『ままんちゅ!』

ままんちゅ! (BLADE COMICS)

ままんちゅ! (BLADE COMICS)

 大体の内容。「実録!天野こずえ家のご出産と育児!」。初っ端から猫より愛せるんですかね、って危険な台詞があって大丈夫なのかこのエッセイ漫画。企画倒れしたら社会的に大変な事だぞ!?と思いましたが、ちゃんとした形に落ち着いて安心でした。そんな出産&育児エッセイ漫画、それが『ままんちゅ!』なのです!
 さておき。
 こういうエッセイ漫画は普通に知らない事、あるいはその人独自ゆえにその人にしかなかった事などを見れる、覗き見気分を刺激してくれる物だと勝手に解釈しておりますが、この漫画はそういう方向ではどちらの属性も強い雰囲気。漫画家さんの育児、というのはそれこそ色々な事があるだろう、というのも見れたし、知らない事、特に腹の移動で貧血になる辺り、が知れたりと、大変知的好奇心を刺激させられます。しかし、天野こずえさんと言うと叙情の人、というか気持ちの人でありまして、そういう育児での子供の変化に対しての気持ちの描き方がなかなか面白い。出産、子育てとは単純に素晴らしいわけでもなければ、単純に大変な訳でもない。そんな当たり前の事を気付かせてくれた漫画です。この辺の描き方の巧みさは流石の天野こずえさんでありましょう。
 それはいい、それはいいんですよ。その辺はやってくれる人だと信じてましたし。問題は、この漫画の奇妙なコマ割り。基本、4コマ漫画のようなコマの切り方なんですが、しかし、事はそう単純じゃない。
 そこにあるのは4コマのリズムではなく、一番左をぶち抜きにしての13コマのリズム、あるいは一番下のコマを潰して他の事を描きつつの12コマのリズム、など。普段4コマ漫画に慣れ親しんでいるクラスタゆえに逆に逆手に取られたようなテクを見せ付けてくれます。この辺、天野こずえさんも4コマに慣れてないから流石に上手くないな、と断じるのが通常の手管なのですが、しかしなんとなくこの微妙なデファクトスタンダード崩しが逆に効果的なんじゃねえのかこれ? 俺は今まで、4コマというのに偏見を持っていたんじゃねえか? そんな心持ちにすらさせられます。そういう意味ではかなり挑戦的な漫画なのかもなあ、と勝手に思っていますが卿らはどうか。