感想 パイン 『きしとおひめさま』1巻

きしとおひめさま (1) (まんがタイムKRコミックス)

きしとおひめさま (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「きしとおひめさまのおはなし、はじまりはじまり」。この巻、本当にはじまりはじまりな所で終わっており、これがどういう伏線なのか、どういう展開するのかがまるっと分からないかなりの大物感を醸し出しているのであります。それがきららミラク誌におけるこの漫画の最たる所、異端な所でしょうか。
 正直に申しまして、きららミラク誌がここまで堅調に推移する、最低限コミックスが出るまで続くというのは最初の段階ではかなり未明の事でありまして、好き好んで買ってた自分も頓挫するかもなあ、という思いを抱きながら買っていたものです。他の連載も、頓死しても大丈夫なように続きが出来るなら出来る、出来ないなら出来ないというアトモスフィアでやっている物が多かったのも、そういう思考に辿り着く一助となったりしていました*1。そういう考えの中にあって、明確に長期政権を狙った犯行な『きしとおひめさま』は、だから大変目立ちました。ある意味では、その長期政権の為に単発的な、短期的なカタルシスをマジでかなぐり捨てンぞ? していたので、人気とかどうなんだろうという老婆心すら湧きに湧く事態であり、それでも番号振り時代を乗り越え、月刊化しても生き残ったのは大変嬉しい事態でありました。そんなハラハラ感は、まとめて見た方には伝わらないだろうなあ、というので、ここに書き残しておきたいと思います。
 さて、前置きが無駄に長くなりましたが、この漫画どういう漫画かというと、実際の所まだ良く分かっていません。大空洞とは? 騎士とは? つくよと速人との関係は? そして突如起きた光の原因は? 1巻の段階ではそれらは謎が謎を呼ぶ展開で、ぱっと見の科学っぺれえ文字に惑わされてSFかと思った? 甘ェ! という不思議な持ち味をしております。この巻の展開からするとファンタジーが浮き上がってきた、というべきでしょうし、実際に現実に浮上しているんですが、それに科学でアプローチするわけでもないので、SFという意匠はこの漫画には丈が合ってないと思われます。でも、すんなりファンタジーとも言い切れない部分もあるわけで、なので無理にジャンル分けするのもおこがましいか、と思うようになりました。なのでどういう漫画か、と言われたら「確かみてみろ!」としか言い返しようがなくなって困ります。どうでもいいですね?
 さておき。
 ミラク誌というのに特筆点があるとすると、それは今までにお目にかかれなかった状況下、あえて言うと『けいおん!』以後のきらら4コマのつま弾いた部分の具現という雰囲気があるように思います。それはストーリー面であったり、設定面であったり、ビジュアル面であったり、ギャグ面であったり。とにかく枠に収まらない漫画という物を意識して作っていこうとしている。そういう誌面であると勝手に邪推しているのですが、その中でも女の子、女の人は可愛い! というきららプリミティブな部分を忘れないようにもしている雑誌であります。だからいいますと、つくよさんマジエロい。普段のぼんやりした雰囲気を、親友舞さんの手できちっとした姿に変えられた時は脳内で歓声が上がりすぎて危うく昇天しかけました。普段ぼさっとしてる人がきちっとすると、そのギャップでポイントアップするものですが、それがここまで来るとはソレガシ思いもよりませんでした。自分の新たな一ページが開けたとすら感じましたよ、ええ。こういう可愛いにも手を抜かないのが、きららミラク誌でこの先生きのこる為に必須の事なのかもしれません。
 ただ、作中のノリというのがこの漫画を更に特徴付けていて、それはシリアスな部分で妙なギャグ調を混ぜる所。それが上手く行けばいいんですが、大体失敗しているのが困り者。ドシリアスな場面でぶっこむ、というのは流石に無いですが、緊迫した場面でその笑い必要ですか? みたいなのがあって、そこはちょっとどうなのだろうと。個人的にはちょっと駄目かなあ、とか思ったりも。効果が出て変な弛緩する時もあって、そして徐々に成功率も上がっていくので、もっと進めば卓越したレベルに到達するのだろうか、と楽観視はしていますが。この辺、『ハーメルンのバイオリン弾き』レベルまで上がっていくのか、達しないのかも注目点ですね。
 とかなんとか。

*1:数回読み切り感覚じゃなかったのは、たぶん他では『リリィ』くらいだったんじゃなかろうか。