感想 久正人 『エリア51』5巻

エリア51 5 (BUNCH COMICS)

エリア51 5 (BUNCH COMICS)

 大体の内容「ある兄弟の話。他二本でお送りいたします」今回のメイン回とも言えるゼウスとハデスの兄弟、そして金角銀角の兄弟の話となります。前者が大人として、統治者としての付き合いの難易度の高さ、後者が性的な意味での付き合いの難易度の高さを描いておりますが、後者は必要でしたか? と思わされるかなり高度な難度の高さを誇っております。本当にここまでのド変態にする必要性がどこにあったのかと、それが無かったらマッコイほぼ即死だったのを分かっていても、折に触れて思わずにはいられない辺りは凄いです。どちらも兄弟を屈折してる。そうまとめれば綺麗にまとまりますが、それもかなり無理をしている位だったので、いかに変態だったか理解していただきたい。それ以外の部分、力を持つ神器をどういう風にしたら便利か、というのをやってる所は大変鱗ぼろんぼろんでした。道具をそのまま使うんじゃない、改変するのも厭わないという思考の展開が凄いなあと思います。色んな異形、人外、神、諸々が詰め込まれたこの漫画らしい、とも言えましょう。
 さておき。
 他二編は前回から雇う事になった王子の苦労の顛末と、ある恋人達の話。どちらもこの漫画が『エリア51』だという事を最大限に活用した回達です。前者はコメディ調、後者はビター調、とバランスもきっちり取れているのも高評価したいですね。
 王子の苦労の方は、マッコイがテロ事件のお手伝いというか恩売りをしてる間に、軽く食べる物をと王子におにぎりを所望する事から始まりますが、この辺りの勘違いは王子が長い間外の世界に出てなかったのと、日本食に対するコンセンサスが無かったのが原因。更にその原因のせいで、終わり方がおかしい形になっているのも見逃せませんね。そりゃ、知らないもんなあ。見た目だけしか知らなきゃ、そうなってもおかしくはない。後、この話の間違いの遠因として、前の助手であるキシローが日本生まれだった、というのもあります。その辺の癖が、マッコイから抜けてないがゆえに出てしまった勘違いの話、と思うと、ちょっと切ないものもあります。
 ある恋人達の話はテクいけどぱっと見は馬鹿話っぽい展開、が、最後にその依頼達が絡み合い、そして決着します。恋人達が起こしたちょっとした事が、ゆえにあれを作ったのかと思うと、なんだか切ない話になっているのです。それは良かったのか、悪かったのか。全ては話がもう終わってしまって分からないけど、でも、ほんの少しでも思いを起こせたなら、それはちょっとした幸せだったのかなあ。そんな事を思ったり。
 そんな三篇収録でありました。ストーリー面で強く進む事がなかったから、まだしばらく連載続くのかしらねえ。そうだと嬉しいけど、なんか次回予告で王子…、なんだけども。