感想 群青ピズ 『くじらジュブナイル』1巻

くじらジュブナイル (1) (まんがタイムKRコミックス)

くじらジュブナイル (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「好きなのは、僕? それとも僕?」と書くと自意識過剰に見えますが、それには当然、残念だったな、トリックだよ、という物があります。具体的に言うと、パラレルワールド物だから、そういう事が出来るのです。正確にはパラレルではないですが、同一存在がいると言う事であえてざっくり言ってみます。とりあえず、世界が二つあり、同一存在、ドッペルゲンガーめいたものがいるというのが設定の主軸であります。ドッペルゲンガー、と言いました通り、同じ存在が会うと、消滅する、という事がこのパターンとしての基本として存在します。が、何故か主人公達は会っても消えない、というのがこの漫画の謎として、そして核としてあり、そこからどうなっていくんだろう、という風味の漫画となっております。
 とはいえ、ガチSFであるかと言うと、それはちょっと違う。主人公枝里菜さんともう一人の主人公である歩くんとの、基本的に二人の間の事なのに同一存在の絡みで異常に複雑になった関係が基本です。つまり、ラブコメだ! ですが、そこに上記通り同一存在が絡んできます。歩くんは枝里菜の知っている歩くんではなく、歩くんの好きだった女の子も枝里菜だけど枝里菜じゃない。という尋常じゃない立ち位置からスタートする漫画となっております。そこから、僕は、私は、どっちが好きなんだろう。という迷い、混乱が渦巻きます。目の前の子がなのか、それとも。そんな渦巻きの中に途中で更に架という新たな、しかし大きなボンバーがどーん! と投入されて、二人の恋の行方は全く分からない形に。果たして、ラブの行方は? それ以上に誰かの存在が消えたりとかするのか? いい感じに惑わせてきてくれる漫画となっております。
 さておき。
 ラブコメですので、当然キャラに見ていて可愛いという物が無いといけないですが、そこは枝里菜さんがちょっと大人ぶってるけど実はメルヘンチックな女の子、という可愛らしい感じに仕上げております。それを周りは大人だー、するけど、歩くんはその実態を知っていて、という風に書くとオーソドックスなんですが、歩くんが何故それを知っているか、が同一存在の関連で、ゆえに枝里菜さんが最初に思ったような、覚えててくれたんだ、ではない辺りがトリッキー。そっちの枝里菜と付き合いがあって知っていたけど、こっちの枝里菜の事として知っていたわけじゃない、とか、やたらこんがらがります。それをさくっと綺麗にまとめて読ませてくれるテクは素晴らしいものであるかと。そういう風に読ませてくれるので、今後どういう風にこんがらがりつつ進めるのかが気になったり。うーん、隔月刊時の漫画続けず、これにしたのは本当に英断だったなあ。とか。
 最後に、別役玲奈さんが男性陣に対してはたまにゲスいけど枝里菜に対しては基本的にはいい子で、そして黒ロンなのが素晴らしいですね。親友ポジとしては過不足の無い見事な立ち振る舞い。そして黒ロン!(二度目) キャラが多くない漫画なので、一人一人は本当に大事にしているなあ、とか思いました。それに黒ロンだし!(三度目)