感想 川井マコト 『幸腹グラフィティ』1巻

幸腹グラフィティ (1) (まんがタイムKRコミックス)

幸腹グラフィティ (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「女の子、飯作る。そして食う!」女の子がご飯を作る系漫画(なにそれ)には色んな物がありますよね。4コマでも『聖ジョルジュ女学園暗黒料理研究会 タベルナ』から『ホイップノート』辺りがぱっと浮かんでくるでしょうか。しかし、それらの作品が作るに傾倒――『タベルナ』はほとんど作ってない気もしますが。――するのに対し、この『幸腹グラフィティ』は食べます。むしろ、食べる事が主題といえます。大切な人と一緒に食べる事。それが一番大事なんだ。そんな気持ちにさせてくれる漫画。それが『幸腹グラフィティ』なのです!
 もうちょっとどういう漫画家と言う話をすると、ある所に美術高に進学しようとする町子リョウさんがいました。リョウさんは最近おばあさんを亡くし、それを期にご飯がまずくなってしまいました。そんなある日、親類の子、森野きりんが予備校に通う為に週一で上京してくる事に。その子の為の宿として、リョウさんの家が選ばれたのです。きりんの為にご飯を作る事になったリョウさん。ご飯おいしくないけどどうしよう、と思いつつご飯を作ってあげると、きりんは大喜び&大満足。何故? それは、美味しくないのが、リョウさんが一人でご飯を食べていたから。そんなんじゃ美味しいわけないよ! というきりんの言葉が強くリョウさんの胸を打つのでした。そしてきりんとの交流の中でリョウさんが色々な事を思い、学んでいく。そういう漫画と言えましょう。
 といいつつ、基本いい話だけな漫画では全く無く、むしろコメディとしての色が強い漫画です。イイハナシダナ-は基本的に多い漫画なんですが、それ以上にリョウさんの天然的な部分、きりんのパワフルな部分、もう一人のレギュラー椎名さんのミステリアスな部分が面白さ、コメディさとして使われて、気がついたら面白可愛いなあこの娘達! という気分にしてくれます。特にきりんは本当に力強いキャラクターで、小柄な体に見合わぬパワー&食欲で作品を引っ張っていきます。この娘だけでもこの漫画は成功と言えるくらいですよ。
 さておき。
 先に書いたように、この漫画の主体は食べるです。食べます。がっつり食べます。リョウさんは妙に色っぽく、きりんはパワフルに、椎名さんは清楚に、しかしどの娘もがっつりと食べます。食べ物!食べずにはいられないッ!! とばかりにがっつくその様だけで、この漫画がまんがタイムきららミラク誌にいる、次代の萌え4コマへの橋頭堡である事を理解出来るかと思いますが、それ以上に、いやそれだからこそ、食べる物がやたら美味そうに描かれている事に言及しない訳にはいきません。表紙の栗ご飯からして美味そうな雰囲気が無駄に出ています。特にカラー絵では美味そうさがやたら出ているので、アキバblogのこちらhttp://blog.livedoor.jp/geek/archives/51380081.html>辺りを参照していただくと、それがどのようなものか分かっていただけるかと思います。そんな美味そうなものを、ただ作るわけではありません。先に書きましたように、食います。食います。食らい尽くします。特に第5話目になるオムライス回は2ページ4本の内容がほぼオムライスで、オチコマできりんがひたすら食い続けるという、恐らくこの漫画でももっともテンション高く食らっている場面であります。その後もリョウさん、きりん、椎名さんが各々のスタイルでオムライスを食し、カオスの三文字が並ぶ凄まじい絵面が登場します。そこの良く分からんが兎に角美味しいんだなあ、という理解しか出来ない空間、というのは中々お目にかかれないものだと思うので、結構必見です。
 最後に。きららミラク誌という新たな潮流としての萌え4コマ誌に載っている、という物にしては、設定面はすっ飛んでないのが特徴的であると言えます。でも、それでも萌え4コマの新たな一ページとして立ち上がっているのは、多分にコメディ調を美味く/上手く使っているから、と思います。あくまでコメディだけど、いい話もある。でもコメディ。その匙加減がしっかりしているがゆえに、きららミラクでも埋没せずにいられるのでは。などと思っていたり。そんな中で、これからどういう風にリョウさん達が成長していくのかを、黙って見守りたいと思ったりもします。と書いて、kの項を終えたいと思います。