感想 道満晴明 『ヴォイニッチホテル』1、2巻

ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

ヴォイニッチホテル 2 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

ヴォイニッチホテル 2 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

 大体の内容「ある島のホテルの群雄奇劇」。この漫画はメインストリームが特に無い、色んな人達の色んな行動をして、それが積み重なったり崩壊したりする物となっております。その手触りは南国のゆるい感じと言う非常に掴み易いのですが、奥底、源泉の方は非常に混迷、混沌を持っています。殺し屋が跳梁跋扈していると思ったら魔女が跳梁跋扈しているし、殺人鬼がいるかと思えば悪魔もいる。ヤクの密売人がラリッってるかと思ったら少年探偵団が躍動している。そして、それらの生活領域が微妙に、本当に微妙に重なり合い、少しずつ話が紡がれる。当然、その話は真っ当な物ではなく、歪で、変で、残酷で、そして愛おしい。まさに群雄奇劇と言える内容となっております。
 でも、基本は南国のゆるい感じ盛り盛り。一巻目は特にゆったりとした助走期間という感じで、どことなく退廃的な感じすらするゆったり感で日々が過ぎていきます。しかし血生臭い事は頻繁に起きる辺りがこの漫画。あっちで殺しが勃発、こっちでゾンビが徘徊と、非常に強い死の匂いが、しかし仄かな香りとして作を彩っています。この辺の、死と生がやたら微妙に近しい感じは、1巻終盤から2巻に掛けて幽霊が普通に生きているように登場する辺りで更に強化されます。あまりに当然のように登場して、あまりに当然のように消えていく。その様を見ていると、生も邪も愛も聖も憎も死も、全てが混在一体となってそこにある、という風情すら感じます。それこそ、この世の中というものなのであろうか。そんな戯言すらふと湧いてきます。キャラの出入りで言うと出るのが多くなってきて、新規も少ない格好になってきたので、どういう終わり方をするのか、というのも気になりますね。さて、こうやってきて、どう終わるのやら。
 キャラ的なものの見方で言うと、ちょっとしたキャラでも出入りが激しい漫画ですので、こいついいな、と思ったらいなくなるというのがあり、生半には萌え萌え出来ない所があります。それでも、この話の重点にあるヴォイニッチホテルのハウスメイド二人は色んな側面が出て面白いですね。あまりに色んな面が出過ぎてキャラとしては大変面白いけど、萌え萌えとはまた違う感覚に囚われますが。このすっきりと萌えさせない生臭さも、それゆえに嵌ると癖になるなあ、とか思います。でも、クズキの気持ちを引こうとしたり、その想いに気付いてキャッキャウフフするエレナさんは大変可愛い事案でありましたけれども、話の重要人物であるので、どうなってしまうやら、と行く末が心配です。綺麗に終わるのは、逆にこの漫画ではありえないだろうしなあ。
 綺麗に終わらない、というとハカセと魔女(ゾンビ化してる)の仲も絶対綺麗に終わらないだろうけど、それでもどんな終わり方魅せてくれるかな、というのでは注目点ですよね。このペアは凄い終わり方しそうだなよなあ。もう、妄想するだけで怖い終わり方になりそうだ。
 とかなんとかとりとめもなく。