感想 木々津克久 『名探偵マーニー』3巻

 大体の内容。「今回もマーニーにおまかせを」。今回もマーニーが、難でも怪でもない、でもその人には重要な事件を解決していきます。ゆえに現代的な“名探偵”。それが『名探偵マーニー』なのです!
 とはいえ、結構怪事件というか、何その事件。というのが多かったのがこの巻。それが三つ程上げるとfile21「ラッキーバード」、file25「事故物件」、そしてfile27「黒い自転車乗り」。順を追っていきましょうか。
 「ラッキーバード」は謎の白い物体についての調査が一転、生徒会長がその物体に情が湧くという展開に。白い物体の正体も凄い話で、そんな馬鹿な! 流石に捏造だろそれ! と思わされてしまったんですが、それがちゃんと事実としてあるらしいんですよね。(wikipedeia) それをネタにしてくるだけで十分成立しそうなのに、そこで生徒会長の人情話が入るという構成。お高く止まってる生徒会長が、情が移ってしまって、というのに驚かされました。あれだけ冷静な生徒会長がなあ。ムシズが走る、とか言ってたのに、いつの間にか……。それはもう意外な一面でした。そういうのも、回数重ねてるから出来る内容ではあるなあ。
 「事故物件」は、自殺のあった部屋に幽霊が! という話でしたが、最終的にはマーニーの言う通り、やっぱり人間こえー。で終わる形に。実際に途中までは怪奇現象!? って呈で、この漫画はどうなるの!? と思ったら当然ですよねーの着地点に降り立ちました。確かにその状況だと、怪奇現象もなんとかなるな。しかし、本当に人間こえー。この漫画の持ち味、というか木々津漫画の持ち味の人間の精神的グロさっぷりが全開でした。どうしてそんなになるまで放って置いたんだ! という状況でありましたよ。まあ、だからマーニーに調査依頼がいったんですけれども。というか、もしそれに気付いてなかったら、マーニーもああいう目に遭っていたのか、と思うと脳内の薄い本が厚くなるな……。
 「黒い自転車乗り」はこれまた木々津漫画らしい、でも押し殺した精神的グロさが横溢しておりました。謎の自転車乗りをとっ捕まえよう、という話がその自転車乗りの正体に辿り着いたらなかなかヤバイ展開に。そこは間一髪でしたのでよかったんですが、その自転車乗りが一体どういうつもりで他の自転車乗りを煽っていたのか、というのは憶測しか語られないものの、大きい夢を失った者が持つ狂気めいたものがしっかり出ていて、ぞっとするものがありました。その自転車乗りは結局一言も発さないままだったのも、コワイ! これで自分の口から言ってくれたら、大分違っただろうというのが分かるがゆえに、やっぱりコワイ!
 さておき。
 この巻の特徴としては、事件で知り合った人達からの依頼というのが増えた事があげられましょう。前記、生徒会長の依頼とか、ゆりかちゃんの彼氏からとか、普通ではありえなかった話も、絡めるようになったなあ、と感じました。特に生徒会長は、信頼のおける探偵は自前で用意した方が簡単だとか言ってて、マーニーもなんとなく自分がそういう枠で育てられてるんじゃないかと思ってたりしてた辺りは、回数が進んだから出来る事だなあ、とか。前記のラッキーバードの件とか、弱みな部分として使われそうなのも、マーニーが絡んでるからある意味安心になっているんだなあ、とか。こういう風に出来る事が広がる、ってのはいいなあ。そんな事を思ったり。