感想 青稀シン 『ねこぐるい美奈子さん』3巻

ねこぐるい美奈子さん 3 (ヤングジャンプコミックス)

ねこぐるい美奈子さん 3 (ヤングジャンプコミックス)

 大体の内容「ツッコミポジとは、地獄と見つけたり」。1巻、2巻と狂気の風をその身に受けるがいい! という美奈子さん以下ぐるいな人達の濃い目の狂気が前面に出ていて、猫ギャグ! という言葉が存分に詐欺まっていた『ねこぐるい美奈子さん』ですが、この巻ではとうとうツッコミポジのキャラが登場します。それも人間と猫に一人ずつ。それが飼堂さんとしゃむりんです。どちらも、この漫画世界においては平常の部類に入る二柱。これで、安心して見れるようになる。そんな事を一瞬でも考えた俺がバカでした。神は我々に安住の地を与えてはくれません。ツッコミポジがいるという事で、より美奈子さん達の危険度が倍増して行きます。特にしゃむりんに相対する美奈子さん達のアトモスフィアがおかしいにも程があり、そりゃこいつら人間じゃねえ!((c)せがた三四郎)ってなるわ、と呆れて物も言えないのを通り越して部屋の隅でがたがた震えて命乞いしたいレベルです。しゃむりんに襲い掛かる美奈子さん達は本当に外宇宙の生き物のそれでした。コワイ! しゃむりんが最初に猫の猫かぶりっぷりでこれは怖いかも、と思ったのが嘘のように不憫な目に遭うから困る。モエちゃんに畏敬を覚えるくらいだから、相当なヤバイ目ですよ。
 それでもツッコミポジがいるから、ギリギリセウトでギャグ漫画として機能する、本当に機能してる、のですが、それゆえにツッコミポジの面子の不遇、悲運っぷりは異常で、こいつらSAN値下がりすぎて精神崩壊するんじゃないのか? という体たらく。そうでなくても美奈子さんを恋人と思われてしまった飼堂さんはなんとなく社会的に死にそうだし、しゃむりんは可愛がられ過ぎて死んだりしそうだし、なんでツッコミポジってだけでこんな地獄ロードを与えられなければならなかったのかと、作品の狂気と言うものの恐ろしさというのを再確認させられました。
 さておき。
 先にも書きましたが、一応、本当に一応、猫萌えギャグ漫画として、ギリギリ成り立っているのが、この巻のもう一つの特徴でしょう。慣れてきた、というか冷静に見てこの状態は汚染されたというべきなんですが、のとツッコミポジの存在ゆえに、ギャグとして成り立つようにみえます。そういう意味では、なんとか帯の文言、「腹筋崩壊w 猫萌えギャグ」が詐欺ではなくなっているなあ、と呆然としてしまいますが、よくよく帯の文言読むと萌えの所に「(ホラー)」って書いてあって、アイエエエエエ! ってなりました。ホラー! なんと収まりの良い言葉かー! そうだ、この漫画の方向性はホラーなんだ! と気付かされます。そりゃ、SAN値削れる漫画が萌えじゃねえよな……、SAN値の原点もホラーだよな……。とも気付いたり。そういう視点を与えられると、途端に楽しみ方としてSAN値が削られるのもありという見方が出てきて、これはこれで得難い漫画読み体験なんだなあ、と思って心の平均を保つのでした。いや、やっぱりその程度の大悟でどうにかなる相手じゃねえよ、この漫画……。