感想 佐渡川準 『あまねあたためる』2巻

 大体の内容「温周さんはいい。だがその周りが問題だ!」。周さんになんだか知らぬ内にほっこりする漫画、それが『あまねあたためる』なんです、と思っているのか?(島田敏ボイスで) というブロリーっ面が突如発動する漫画、それが真の『あまねあたためる』なのです! この面になるには相応の理由があり、それは漫画の方向性が徐々に、しかし確実に、何かが、何かがおかしくなってきているのです。端的に言うとキャラ漫画として、そしてギャグ漫画としての存在感が浮かび上がってきたのです。キャラ&ギャグ、それが佐渡川準せんせとなると『無敵看板娘』の事を当然のように思い起こさずにはいられない訳ですが、『あまねあたためる』におけるそれは幾多の連載と連載終了を潜り抜けて身に付いたスキルと、初期の『無敵看板娘』にあったとても大振りながら無闇に強力な一撃の伝説的ミキシング! ブッダ! 寝ておられるのですか! という位に中々のキャラ立ちぶっぱを見せ付けてくれます。
 1巻の段階でもちょっとキャラの立ち方がおかしかった銀つららさんも回数をこなすほどにキャラがおかしい事が判明していき、最終的に蛇を助ける為とはいえ亀甲縛りしだすという悪夢的な展開をしてしまう事になりますし、この巻からの登場の陶芸の土居先輩は温周さんとの邂逅によって才能が開花したけどそのせいで女体型の陶芸を得意とするようになるという亜空の展開を見せますし、友達も一人がブルース・リーもどきに感化されて勝手に才能を開花して妙な強さを会得したりしますし、あげく先生も脳内仲間とやる一人カラオケの達人から一人行動の達人に進化し、そして最終的にマッパになって男を魅せるという絶牙の流れを見せてくれたりしますし、もうどうしたらええねん! 佐渡川せんせが元より持っていた才能が何故か、そういう漫画じゃねえからこれ! ほっこり系ですから! というので乱れ咲きを見せるという、ある種桃源的展開! 漫画家としてのテクを手に入れたがゆえに、『無敵看板娘』初期の頃では振り回されていたその才が、効果的に見せれるようになった、という理解が平凡ながら正しいと思いますが、にしたってそれをこの『あまねあたためる』で絢爛させなくても! おかげでこの漫画何処に向かうのか元から分からなかったけど、余計に訳が分からないよ! という状況にたたっこまれてしまいました。さあ、面白くなってきやがったぞ!
 さておき。
 そんな訳で、ムチャクチャになりかけているこの漫画ですが、第17話「あまね取っ組みあう」みたいな、ある程度安心して見れる回もあるにはあります。周さんの弟、保君がボロボロだ! どうしたのかな? という流れから、学校の同級生の女子に無理やり鍛えられている!? でも、それには理由があって、てな具合に転がりますが、筑苗花さんが小学生っぽいがゆえに可愛い理由であったのが良かったです。それだけでボコボコにする辺りがマジでSっ気の強さ特上で、今後がたの……心配です。とはいえ、この漫画が佐渡川準漫画なので、巻後半に出た時には新たなフィニッシュホールドを会得してしまって、やっぱりこうなっちまうのかよ……。と、スパロボα外伝のブレーカーのやられ台詞が自然と出てきます。本当に、どこへ向かっていくのか。単なるほっこり漫画でも、単なるキャラ漫画でもなく、なにか得体の知れない奇妙な物になりつつある、この漫画の行く末が楽しみです。