感想 サンカクヘッド 『干物妹!うまるちゃん』1巻

 大体の内容「これがウチの干物妹です!」。土間さん家のうまるちゃんは文武両道才色兼備、完全無欠のスーパー美少女です。しかし、彼女には秘密がありました。そう、彼女は家では食う寝る遊ぶしかしない完全な干物女、すなわち干物妹(ひもうと)だったのです! という事で干物妹うまるちゃんの生態とそれに振り回されるお兄さんの生活を見る漫画。それが『干物妹!うまるちゃん』なのです。
 開幕からぶっぱしますが、これでもサンカクヘッドせんせの漫画は単行本が手に入る範囲とはいえ追って来た程度の読者であるワタクシからしますと、この漫画のおとなしさ、というのは正直、驚愕! と言うレベルです。そもそもサンカクヘッドせんせというとハイテンションの本来的な意味合い、張り詰めたテンションとしか言いようの無い、ぶっちゃけ言ってしまえば躁的なギャグ漫画を描く漫画家という勝手な印象が常々あったのですが、この漫画ではそこの部分は大変大人しく、そして『厨二君を誰か止めて!』辺りから顕著に出るようになってきた女の子絵の仄かな(重要!)エロス感がしっかりある美妹ターンと、干物妹ターンのいつものノリの絵だけど、そっちも可愛い成分多めという配分にも精密なJOB&JOYを感じて、サンカクヘッドせんせが、生まれ変わったー!! とこの世の終わりのような衝撃を受けてしまいました。どうしたんですか、サンカクヘッドせんせ! こんな仕事が出来るなら何で今まで躁めいた漫画振る舞いをしてたんですか! どうしてなんですか! どうして……。と途方に暮れつつ読み進めている所に、読み切り版がするっと入ってきました。
 読み切り版は当然パイロット版でありますが、その設定部分は完全に整われております。しかし調子は違う。アナルとか、うまるのグルグル目時の言動とか、端々にサンカクヘッドせんせの旧癖が匂い立ち、やっぱりこの方向のノリは出すと出るんだ、という理解になりました。これが本編に出てないのは、ひとえに誰か手綱を握っているという未知なる担い手の存在があるからだ、と邪推せざるを得ません。その統制力は、この巻の連載分の中でサンカクヘッドせんせがハイテンションを爆裂してない段で、凄まじい高さ、パワーであると言わざるを得ません。あのサンカクヘッドせんせが、ここまで大人しく、しかし面白い漫画を描いているというこの奇跡的な状況が、誰の手に寄る物なのか、サンカクヘッドせんせの御技なのか未知なる手の者によるのか分かりませんが、それでも面白い且つ今までのサンカクヘッドせんせの漫画では最大にキャッチーな物なので、逸れに対してブヒヒヒ……。と喜んで読むしかないのであります。どういう経緯か分からないけど、これだけ良い物なら、経緯なんてクソ食らえですわ。
 さておき。
 開幕の語りが長くなりましたが、出来具合は先にも書いてますが非常にキャッチー。うまるちゃんは外で美少女な妹だけど家では干物女な妹、というか等身すら違うくらいに別人という設定だけでお茶碗三杯いただけますわー! ですが、どっちもとても可愛いんですよね。外は正統派完全無欠美少女で、絵柄も最近のサンカクヘッド絵の絶妙な仄かエロスのある絵なのに、家では異端派完全全欠の干物妹で、絵柄も小動物とそれ程変わらないけど、それゆえに可愛いという、見事な使い分け。それだけで十分に見所があるのに、干物妹状態のうまるちゃんは素晴らしく駄目で、言動行動が完全に子供でJKどころかJCすら怪しいレベルだけど、それと外面との合併によって起こるギャップも可愛い。普段どう隠してるのかもたまに見れてこれも楽しいし可愛いという、ザ・あざとさであります。これにサンカクヘッドせんせのコメディ力(躁抜き)が噛み合って本当に見事としかいえない出来栄えだったりします。特にキャッチーなのはただおかしを暴食する、その3「うまるのグルメ」と、うまるちゃんの外面と内面が、今爆発する! なその13「うまると外食」がマストであります。前者は2013年9月20日現在ではニコニコ静画で見えるので、興味がおありの方はレッツ、見るのよッ! と言っておきましょう。うまるちゃんの駄目な方の魅力がだだ詰まってるのでマジオススメですし、大体どういう漫画かも分かるので、試し読みには大変良いと思います。後者も、外面を出さないといけない場面でついつい内面の方が出そうになる、というのがあんまり葛藤がなくな辺りが良いです。なんのかんのでお兄ちゃん子である面も見れて、更に倍率ドンですよ。いいわあ……。
 という訳で、これは、もしかすると金鉱脈、アニメ化すらあるかも知れへんで……。という面構えになる漫画であります。このまま、手綱が放されなければ、ですけれども。