感想 原悠衣 『わかば*ガール』

 大体の内容「可愛いだけじゃない! これが原悠衣だ!」。という言葉を高らかに歌い上げたくなるくらい、原せんせのちょっと頭おかしい側面がフルスロットルしている漫画、それがこの『わかば*ガール』なのです。
 とはいえ、基本的に女の子が可愛いのは『きんいろモザイク』でも魅せている原悠衣せんせの基礎地。それはこの漫画でも忽せにはされてはおりません。されてはおりませんが、この漫画、どこかおかしい。きんモザもどこかおかしい気がするという漫画ですが、そのおかしい気がする、から気がするが取られておかしい! とはっきり分かるのがこの『わかば*ガール』でもあるのです。その主原因はお嬢様キャラ若葉さんがギャルに憧れていて変な行動するのと、眼鏡っ子の柴さんが回を重ねるごとに、加速度的におかしくなっている事でしょう。
 この漫画、最初に連載された部分と、後からこの単行本の為に追記した部分とで構成されているようなのですが*1、その連載されていた部分は序盤は大人しいめだったりするんですが、後になる程、そして追記部分になればなる程、柴さんがおかしくなっていきます。最初はツッコミ役というスタンスに見えた彼女に、一体何があったのか、というくらいで、正直若葉さんより柴さんの方が気になって仕方なくなるという現象すら起きてしまっております。
 いや、若葉さんもちょっとずれが激しくて、おかしいんですよ。世間ズレしてないから、余計にJK生活の色んな事が新鮮である、と言う面も強くて、微笑ましいもあるんですけど、後半はぶっ倒れる場合が妙に多かった印象ですし、やりたい事をやろうとしておかしい、というズレがないがゆえのやり口もあるんです。そこをメインに見ていくと、やはりおかしいけど可愛いのか、という感想になるんですよ。
 でも、柴さんのおかしくなり方はちょっと尋常じゃない。特にミスコンに出る事にした辺りは最高潮で、ひとしきり暴れた*2後、最終的に水垢離を制服でしちゃうという訳の分からなさ。彼女に一体何が。と驚愕せざるを得ません。その後の描き下ろしではそのせいで風邪ひいてしまって、でもミスコンに出るぞ、マスクで顔も隠れるしな!(意訳)とか言い出してもうだめだこの人! という印象を我々に提示してくれます。
 この柴さんの崩壊が、しかしこの漫画の崩壊に繋がっていないのがこの漫画の強さと言えましょうか。ギリギリ破綻してない、とかではなく、確実に内包しているんですよね。水垢離がきちんと後で風邪をひくという形で影響したりする辺りはきちんとしているなあ、とも。一回のギャグノリでやったけど、というのがちゃんとあるから、この漫画は成立しているんだな、と思わされます。いや、まあ、普通の成立の仕方ではないと言われたらそうかもしれないんですけど。
 さておき、最後にだらだらキャラ話すると、モエさんとまおさんはこういう漫画だとずれるパターンが多いタイプなのに、最後まで案外そのままだったのも印象的です。若葉さんが基本的に崩れるし、後、柴さんが崩れ過ぎたから、この二人が最後の砦だったんだろうなあ、とも思ってしまいますが。特にまおさんはギャル系だけど案外普通な人という落ち着き方になったかと。一番良く展開に寄与したのも、まおさんのような。そういう面が求められるはずのモエさんは、より普通で存在感薄めでしたけども。ここぞでピリッと効く、って訳でも無かったよなあ。でも、いないと困るといえばそうでもあったか。この辺のキャラ回しはやはりお見事です。
 さておき、キャラ話になると柴さんをやっぱりピックアップしないといけないんです。眼鏡っこ、隠れ巨乳、僕っこ、と来て更に腐女子であるという詰め込み具合。そして後半若干(?)おかしい行動も、って入れ込みすぎでしょお! だけど、それゆえに柴さんが可愛いなあ、という気持ちにはきっちりさせられる辺り、原悠衣せんせの力は大変な物があります。アニメ化した作品描いてるだけはあるなー。
 とかなんとか。

*1:掲載誌を見たトキ無いので憶測。

*2:としか言い様がない。