感想 はりかも 『夜森の国のソラニ』3巻

夜森の国のソラニ (3) (まんがタイムKRコミックス)

夜森の国のソラニ (3) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「ちょっと淋しいけど、大団円」。まんがタイムきららミラクでその創刊からずっと、月刊化してもきっちりと続いていたこの漫画も、この巻にてとうとう最終巻となりました。夜森に集う人達の心の話や、昼森と夜森の仲たがいなど、諸々の事に決着がついたものの、部分部分ではこちらの妄想を掻き立てられるような間隙もあり、それもまたこの漫画の味わいであるなあ、という感覚が持てる、それが『夜森の国のソラニ』の最終巻なのです。
 この漫画、『夜森の国のソラニ』は痛んだ心を持つ人達が集い、そして夢の世界である夜森と、その管理人の夜森に優しく包まれてある、という漫画でしたが、この巻ではメイン格であった赤衣さんと王子が夢から覚める、夜森から去るという場面がとうとうやってきます。2巻でのゴーストライターの人が夢から覚めた話はあったものの、実際に起きる人の話というのはある意味この漫画が終了を迎えつつあるというのを想起せずにはいられないものでしたが、どう現実の、程度の差はあれ、夢へと逃げ込むほどの事に向き合うか、というのがきっちりと提示されたのは大きかったです。そのカイホウが赤衣さんと王子とでは当然全く違いながらも、お互いの言葉で、というのは納得の仕上がりでありまして、この回がきっちり入ったが故にこの漫画はきっちり締まったな、という印象があります。Gガンダムで言うと最後の対東方不敗戦に相当する、作品の肝がきっちりと決まった、着地した回とでも言うべき回でありました。もう大テーマ提言的な部分はこの回が最高潮と言えましょうか。
 とはいえ、最終回に向かっての加速も十全であります。その前段階として夜市が仕込んだ鏡の姦計がきっちりと仕事を果たし、その影響で昼森が崩壊の危機に! そこで覚悟を決めた夜森が助けに向かう! 夜森大勝利! 希望の未来へレディーゴー! という若干ヒロイックな部分もありつつの展開ながら、この漫画らしい優しさが十分に出ておりまして、成程納得の最終回じゃねーの。という方向へと向かっていき、昼森は夜森に助けられる形に。そして迎える大団円! 良かった良かった、だけどソラニが、というので中々寂しさと喜ばしさが混ざったエンディングへとなだれ込みます。夜森でも昼森でもなくなった、夢の森はこれからも。そして夜森はソラニの事を忘れずにいるんだろうなあ、と思うと、なんだか胸が熱くなる物が。いい話として、きっちり閉じたその事実は、大変有難い事だと感じ入りました。
 さておき。
 この漫画での大きな謎であった、ソラニと昼森の相似については、案外あっさりとした解法が出されました。それはそれで納得出来るには出来ますが、この辺はもうちょっと色々あったのかな、とも、でもソラニの本当の名前での話もきっちりとソラニの今までのと対比させれば納得も出来る、とも考えられて、この漫画の、側面から見た時の謎として今も心の中に残ってしまっています。あるいはもうちょっと違うエンドもあったのか、それともこれがこの漫画の到達するべき道だったのか。そういう、死んだ子の歳を数えるような行為をしてしまうのも、この漫画が好きだったからなんだろうなあ、とか思うのでした。もうちょっと見ていたかったけど、こうやってきっちり閉じてくれただけでも、儲けもんなんだろうなあ。
 とかなんとか。

既刊感想

1巻」「2巻