感想 みずしな孝之 『たばたちゃん派』1巻

 大体の内容「とくになんでもないたばたちゃんの毎日」。たばたちゃんは色んなものに興味津津な幼い女の子。今日も色々と興味を持ちつつ生活していくよ! という力を入れる必要もほぼないくらいにただたばたちゃんが毎日を過ごす漫画。それが『たばたちゃん派』なのです。
 この漫画、本当にこれ! という内容がある漫画ではない、ある意味ではイマドキの漫画と言えますが、このなんでもない事なんだけどそれが楽しいというのがたばたちゃんの感性が大変まぶしい漫画とも言えますし、そのなんでもない楽しさを、この漫画を読んで共有していくのがこの漫画の基本的な見方でしょうか。
 本当に、たばたちゃんは毎日楽しそうです。テレビを楽しみ、サッカーボールを楽しみ、猫を楽しみ、雨を楽しみ、家庭用プールを楽しみ、花火を楽しみ、地球儀を楽しみ、団子を楽しみ、石きりを楽しみ、クリスマスを楽しみ、雪を楽しむ。どれも言ってしまえば取るに足らない事ですが、それがゆえにそこにある楽しみというのがたばたちゃんのちょっとずれた行動によって、くすりと笑えるようになっております。ずれ方とずらし方が大変上手いので、毎度毎度くすくすと出来るのが素晴らしい。行動の幅、ネタの幅がいい意味で幼児の範囲ですが、それ故にこういう事しちゃうかあ、という見かたが出来るんですよ。それが可愛らしく、且つ面白い。何か考えるような内容はあんまりないけど、だからどうしたというのか、という面構えで面白い漫画として立ち上がっているのです。そういう意味では、とてもイマドキな漫画、イマドキな4コマ漫画なのかもしれません。
 さておき。
 個人的にはたばたちゃんの行動に対しての柔らかいつっこみとしてのお母さんの存在感は大変素晴らしいと思います。つっこみというと力強い物が主流ですが、お母さんのつっこみは本当に優しく、柔らかいんですよ。たばたちゃんの間違いを強く訂正する訳ではなく、でもスルーする訳でもなくという諫めとしての力が大変強いんですが、違う! じゃなく違うのよ? なんですね。これがこの漫画の雰囲気に大変高い効果を表しているかと思います。貴重なつっこみ役だけではない、お母さんの目線というのも現れているように感じました。それにたまにお母さんがいない時でのたばたちゃんの行動のつっこみレスさを見ると、お母さんの存在は大変大きいなあ、という理解が出来ます。常ににこにこ顔な辺りとかも、優しさを表わしていていいですね。ある意味、この漫画の助演女優賞がお母さんなんだと思います。でも、怒ったら怖いんだろうなあ。こういうタイプは特に。
 とかなんとか。