感想 川井マコト 『幸腹グラフィティ』3巻

 大体の内容「今日も元気にいただきます!」。『くーねるまるた』、『甘々と稲妻』とご飯作り&食べる系漫画の色々と手段が増えている昨今だとは皆々様もお気づきかと思いますが、その一端であるこの漫画も巻数を重ねてまいりました。今回も内容自体はいつもの、と言える物ながら、その安定度と暖か度の高さは天井知らずに到達し始めておりという謎の矛盾が登場するようになってきておる。それが『幸腹グラフィティ』3巻なのです。
 今回も皆と一緒に食べるのはおいしいね。思い合うのって暖かいね、と言うのは基礎としてしっかりですが、そこに色々とアクセントが加えられているのが良い所。今回の皆で食べるとというのは、夜マラソンカップ麺の回、きりんときりんお母さんの回、そしてクリスマス回の三つはマストでしょうか。
 夜マラソン回は椎名さんが町子さんときりんの関係は敵わないなあ、と思ってたら町子さんもきりんと椎名さんとの仲は敵わないなあ、と思っていた、というお互い微妙に知らなかった事を知って、更に椎名さんとももっと仲良くなりたい、という話に。お互い勝手に思ってたけど、実際話すとそれ以上のものがお互いにあったんだね、というのがいいです。他の回でも、椎名さんが近寄りがたい感じだ、というのを崩していく回とかもありますが、ここでは特にお互いしか話せない事があるんだよ、の椎名さんの顔が全くいい表情いただきました! 事案であります。特に大きな表情変化、きりんみたいなのではないんですが、それがゆえにレア顔なんですよ! クールな椎名さんが、あんな柔らかい表情を……。それが本当にいいのです。
 きりんときりんのお母さん回は、町子さんがあんまりいないというこの漫画ではかなり珍しい回でありますが、それ以上に町子さんが料理作らない回というのでも珍しい回であります。誰が作るの? きりんのお母さんでしょ! という形になりますが、町子さんの料理のレシピ通り作る、けど所々出る粗雑さ、というのが逆にエッセンスとして安心できるよ、っていうきりんの顔がいいです。いつもがつがつタイプのきりんが、ふっと見せるその顔が本当にいいのです。お母さんの味、って本当に安心の味だから、分かるわ―。
 そんないい回が連発される中でクリスマス回は、この漫画のリアクション芸が最大の爆裂を魅せる回となっております。以前にあったオムライス連続4本リアクション回の、更にもう一段上。町子さんの家の伝統のシチュー3種+1からのきりんの家の定番チキン+内木先生のケーキでの計6連続のリアクション芸。三人娘のリアクションも濃いですが、それよりもオチが全部内木先生という面白コメント発生装置のかっ飛びリアクションなので、本当にオムライス回を一気に塗り替える勢いと意味不明さが混在して本当にカオスでした。その中でもチキンのとこのチキン山脈に埋まっている内木先生の姿は、言っては悪いんですが江戸時代の良くある無残な状態にしか見えなくて、もうこの人ある意味で最強だな、と思わせるに十分でした。最初見た時の大丈夫なのかこれ感ぱないでしたよ……。
 さておき。
 そんないい話重点(一部違う)の中にあって、お話の方での重要な部分として、町子さんのお母さん登場した、というのがあります。偶に触れられていたお母さんですが、町子さんとのその微妙な距離感がそこここで見られたり。町子さんも気おくれているし、お母さんでも気おくれている。と言う中でじりっと近づいていく二人の姿はやきもきさせられます。お互い嫌いな訳とかじゃないけど、ちょっと離れている時間が長過ぎてるのがなあ。それがちょっと近づいたけど、今後どうなるのかな。そういうやきもき部分も新たに生まれたこの漫画の今後に注目です。