感想 木々津克久 『名探偵マーニー』8巻

 大体の内容「今回もマーニーにおまかせを」。現代的な名探偵、というのをしっかり提示し続けつつも、たまに木々津せんせ謹製の精神的グロさや精神的ホラーめいた部分もしっかりと載り続ける。それ『名探偵マーニー』の基礎基本なのです。
 今回の巻は本当に色々と方向性があって楽しかったように思います。環境テロリストの話から狼男の話、そして学内カジノの話と幅広過ぎてよくこれ一本の漫画に通して入れてあるなあ、と感心するレベル。マーニーの事件遭遇率の高さというか、学校関係の問題俎上率が半端じゃないんだけど大丈夫なのかあの学校。日本にしては階層度合いが凄いし、たまにアメリカの学校じゃねえのかって感じる部分もあるけど、でも問題の陰湿度からすると日本の学校だなあ、というのもあるので大変混乱させられます。何気にこの学校が一番この漫画でファンタジーな部分ですヨネ。そこを現代的にマーニーが解決していく、というのがこの漫画のだいご味なのかもしれません。
 さておき。
 今巻の良かった回はfile64「殺戮劇」、file69「献花」、file70「二人の名探偵」の三つ。
 「殺戮劇」はぱっと見はとても分かりやすい展開、連続殺人だけど、なんですがこの漫画で殺人事件はまれ、というので大体どういう事か理解出来る、んですが、それを行わせている名士の心情が全く分からなくて、でもこんなことをさせていて、という部分とその過去が合わさって、『名探偵マーニー』の数あるエピソードでも最大に精神的なグロさが出ている回となっています。その心情を全く解説しないし、描写しないし、語りもしないというのが寒気すら生まれる出来栄えで、なんだよ今回簡単過ぎるじゃねえか、という最初の考えをふっとばすには十分な仕上がりでした。この味わいこそ木々津漫画の持ち味です。
 「献花」は最後のオチのホラーさがとても高い回。あちこちにある献花の謎と、行動の理由は明かされるんですが、それがどうしてそのオチに向かうのか、というのがホラーとしか言いようがない仕上がり。それに対して具体的な理屈がなされない、これは偶然だ! 偶然のはず……。って終わり方するのもまたホラー度に拍車をかけています。本当に、どうしてああいう事になったのか。偶然にしてはあまりにその整合性が高過ぎる。でも、どうしてそれを分かるのかが分からない。あれは、上空から見ないとたぶん分からないのに。ナスカの地上絵のような縮尺の力とかでもなく、ほぼランダムにしてるだけなはずなのに。考えれば考えるほど怖くなる回でありました。
 「二人の名探偵」は現代的な名探偵マーニーと、古式ゆかしい名探偵比嘉との推理対決! かと思った? という具合に、事件の骨子は比嘉君が、その現実的な内幕の部分はマーニーが、ともどもに解決していくという中々凝った回でありました。比嘉君が探偵としての推理力は高いけど、ちょっとバカというのも良かったです。マーニーが冷静な分、そういう方向性があんまりなので、いい対比となっていたかと。今後も出番ありそうな比嘉君であります。
 この巻で木々津漫画としては最長不倒にもう一歩、になったのは個人的には喜ばしいと思います。木々津せんせはもうちょっと名を馳せてもいい気がするんですよ。俺が好き過ぎるだけでそう思ってますけど。でも、この味わいが知られないのはもったいないよなーと。毎回一話完結でこれだけバラエティーに富んだ物を作れる人、って大事だと思うんですよ。ってもまあ、個人としては感想書くくらいしかできないので、どうしたもんか、ですが。というどうでもいい話をして〆。