感想 くずしろ 『犬神さんと猫山さん』3巻

犬神さんと猫山さん (3)巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)

犬神さんと猫山さん (3)巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)

 大体の内容「ガチ百合カップルがキマシ塔を建立したー!」。今回初登場の虎龍コンビががっつり百合の人達、と言う事でこの漫画の百合濃度が一気に増した、ように見えるんだけどなあ、というのが『犬神さんと猫山さん』3巻なのです。
 実際問題、虎生さんと龍崎さんは間接的にも直接的にも百合の描写が含まれております。二人の会話の端々とか、自然と二人でいる感じとか、猫山さんが遭遇した実際の場面とか。そういう意味では百合度という謎の尺度は高まりを見せているんですが、この二人もこの漫画てつのおきてであるバカっぽい側面がときおり漏れ出し、特にどっちも虎キチと龍キチ、つまり野球の阪神ファン中日ファンであるのでそのネタが盛り込まれて、その部分でかなりのキチ度を見せるのでかなりバカっぽいのです。野球ファンってこういうとこあるよね感がパないというか。それゆえにガチガチに百合というにはずれが生じております。まあ、それでも野球観戦後のお楽しみでしたね、とか、女の子から好意を寄せられて、でもこっちには、というのとかの含有の百合度が高いんで、百合視聴スキルがあれば速攻でゆりんゆりんすけどね。
 一方というかこっちが主戦場だよの犬猫ペアについては、今回も犬神さんの天然力が炸裂しております。家庭科でカップケーキ作ったんですよ! の回のちょっとしたすれ違い後のキス未遂というかまあれはキスにカウントしてもいいと思うよ、な場面の衝撃も強くて、そりゃこの二人が突然チュッチュしだすとか無いとは思ってたけど、でもこの不意打ちは不意過ぎんよぉー! そして犬神さんの表情可愛い過ぎんよぉー! もうこいつら可愛いなあー! と猛り狂うには十分でしたが、この巻の真髄は最後の回の勉強する犬神さんが集中するために聞いているモノの正体の方でしょう。はっきり言えば相当バカというか、どんだけ犬気質のドMなんだよ! なんですが、でもその後の犬神さんの言動が、「好きな人の声を聞いていたい」というあまりに天然なもので、そりゃ猫山さん照れ困るわ、としか言いようがありません。でもよくよく考えるとなんでそんなもので、というものでもある為、ここでニヨニヨしていいのかゲラゲラしていいのか分からなくなる、という高度な迷彩技術による混乱が生じて正直まだ混乱しています。いい話のようでいい話じゃないような、そんな絶妙の位置取りを食らわされた格好です。もー! なんだよこの漫画!
 後、今回の巻はこの漫画のツッコミストである秋さんフューチャー回が結構あるのが特筆点。百合雰囲気には一人絡まないような立ち位置にいた秋さんですが、犬神さんと親交を深めていき過ぎての今があるというのが分かる中学時代の話とか、一対一がなかった杜松さんとのやりとりとか、猫山さんを保健室に連れて行っての天然行動とか、この人、実は高いポテンシャルが高い!? という混乱した台詞が口をつく有様でした。特に杜松さんとのやりとり回は杜松さんのキャラ立ちも更に音高くなったり、その後で二人きりでも特に問題なくなったのが分かる回とかあって趣深いです。でも、別に誰かと百合っぽくはならないんだよなあ。『姫のためなら死ねる』の弁官と同じポジというか同じ立ち回りな部分もあるのが原因なのか。でも、それゆえに百合に傾きそうな時の安全弁になってるんだろうかしら。
 とかなんとか考えてみたりしますが、やっぱり仲が良くなると百合度高まる漫画ではあるのかしらとも思える3巻なのでした。